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「『数字が苦手』は能力の問題じゃない―会社に『青い点』を灯す財務の見える化」
2025.10.01
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
かつて「地図が苦手」な人が多かったが、スマホ地図アプリの登場で誰もが簡単に目的地にたどり着けるようになった。
これは、GPSによる「現在地の可視化」「ルート案内」「全体像と詳細の切り替え」「心理的安全性」の4つの機能が理由だ。
経営の財務管理も同じで、決算書や試算表という「紙の地図」ではなく、
スマホのように「今の財務状況」をリアルタイムで可視化し、目標までのルートを示す必要がある。
具体的には、日次の資金残高確認、4週間の出入金予定表作成、危険ラインの設定から始めることで、資金繰りの不安を解消できる。
重要なのは、専門的な分析力ではなく、財務を「誰もが理解できる形」にデザインすることだ。
本文
なぜ、あれほどいた「地図が苦手な人」は消えたのか?
かつて、多くの人が「地図を読むのが苦手で」と口にしていました。
しかし今、スマートフォンの地図アプリを使いこなせない人はほとんど見かけません。一体なぜでしょうか?
人々の空間認識能力が向上したわけではありません。答えはシンプルです。
ツールが「地図を読み解く」という複雑なスキルを不要にし、
誰もが「ナビに従う」だけで目的地にたどり着ける体験に変えたからです。
実はこれ、経営における「財務」にも全く同じことが言えます。
多くの経営者が、決算書や試算表といった専門的な「紙の地図」を前に、
「数字が苦手だ」「どこをどう見ればいいか分からない」と感じています。
しかし、もし会社の財務状況を「スマホの地図」のように、誰もが直感的に理解できる形に変えられたとしたら?
この記事では、スマホ地図の圧倒的なわかりやすさをヒントに、
複雑な財務を「見える化」し、「迷わない経営」を実現する方法をご紹介します。
1.最大の違いは「現在地」がわかること
スマホ地図が画期的な最大の理由は、GPSで常に「現在地」と「進むべき方向」を示してくれることです。
「自分は今どこにいる?」という、最も重要で、最も不安になる問いに一瞬で答えてくれます。
これを経営に置き換えてみましょう
【紙の地図】: 決算書や試算表
先月や先々月の「過去」の地点情報です。数字の羅列から「で、今、うちの会社の状況は良いの?悪いの?」を読み解くには時間がかかります
【スマホ地図】:リアルタイムの財務指標
今の現金残高、売上、利益がひと目でわかります。会社の「今」が青い点として明確に示されるため、意思決定のスピードが格段に上がるのです
2. 目的地(目標)までの「ルート案内」機能を持つ
スマホ地図は、現在地から目的地までの最適なルートを自動で示してくれます
道を間違えても、すぐに新しいルートを再検索してくれます
これを経営に応用します
【紙の地図】 年度の事業計画書、Excelの売上目標
目標(目的地)は書いてあるが、そこまでの日々の道のり(ルート)は個人の頭の中にしかない
計画と実績がズレても、軌道修正に時間がかかる
【スマホ地図】 予算実績管理(予実管理)ツール
目標(予算)と現状(実績)の差が常に表示される
「あと50mで右折です」という音声案内のように、「目標達成まであと〇〇円」「このままでは〇〇円ショートします」といった具体的な指標が示される
これにより、迅速な軌道修正が可能になります
「計画を立てて終わり」ではなく、目標達成までの道のりをナビゲートしてくれる仕組みが不可欠です。
3. 「全体像」と「詳細」を自由に行き来する
スマホ地図は、2本の指で広域表示と詳細表示を切り替えられます。
これにより、森(全体像)と木(詳細)の両方を簡単に見ることができます。
【紙の地図】 決算書全体と、各勘定科目の元帳
両者を見比べるのは手間がかかり、つながりを理解しにくい
【スマホ地図】 現代の会計ツール
システムを使い売上を確認 → 気になる部分をクリック → どの取引先からの売上が大きいかを表示
→ さらにクリックして個別の請求書データまで確認、といったように、知りたい情報をストレスなく深掘りできる。
この「全体と詳細を自由に行き来できる」環境が、数字に対する心理的なハードルを下げ、問題の早期発見につながります。
4. 「分からない」という心理的な不安を取り除く
「道に迷ったらどうしよう」という不安は、人を臆病にします。
スマホの地図は「いつでも現在地がわかる」「道を間違えても大丈夫」という心理的な安全性を提供してくれるため、
私たちは安心して知らない場所へも踏み出せます。
経営も同じです。
「資金繰りは本当に大丈夫か?」
「この投資は正しい判断だったか?」
「社員に会社の状況を聞かれたら、どう説明しよう?」
こうした不安の根源は、「状況が正確にわかっていない」ことにあります。
財務を「見える化」することは、経営判断の拠り所となり、社長自身、そして社員に対しても
「うちは大丈夫だ」「今はこういう状況だから、次はこの一手を打つ」
と自信を持って説明するための基盤となるのです。
最初の⼀歩:「資⾦の現在地」を⾒える化する
では、何から手をつければいいのでしょうか。多くの会社がPL(損益計算書)を重視しますが、
まず整えるべきは会社の血液である「資金(キャッシュ)」の現在地です。
利益が出ていても資金が尽きれば会社は立ち行かなくなります。
以下の3つを始めるだけで、あなたの会社の地図に「現在地」を示す青い点が灯ります。
日次残高の記録:メイン口座の実残高を毎朝チェックし、どこにいても確認できるようにする
4週間の出入金表の作成:向こう4週間の確定している支払・入金の予定を日付順に並べる
危険ラインの設定:会社の規模に応じて「残高〇〇万円を下回ったら黄色信号」といった危険ラインを具体的に決めておく
目的は完璧な予測ではありません。「ズレを早く見つけて修正する」ことです。
これだけで、「資金繰りは大丈夫か?」という漠然とした不安が、
「2週間後に資金が厳しくなるから、A社への支払いを相談しよう」や
「3か月後に資金が厳しくなりそうだから、早めに銀行に相談しよう」
という具体的なアクションに変わります。
【まとめ】現在地がわかれば、会社は迷わない
「数字が苦手」なのではありません。あなたの会社が使っている財務という「地図」が、
読み解くのに特殊なスキルを要する「紙の地図」のままなだけかもしれません。
これからの経営者に必要なのは、財務諸表を読み解く専門的な能力以上に、
会社の状況を「スマホ地図」のように誰もがわかる形にデザインし、チーム全員で目的地へ向かう力です。
まずは、あなたの会社の「現在地」を示す、キャッシュという名の青い点を灯すことから始めてみてはいかがでしょうか。
それだけで、経営の景色は大きく変わるはずです。
もし、記事を読まれて「うちの財務も、青い点(現在地)が見えるようにしたい」
そんな方には、1枚の紙で、会社のお金を見える化でき、
売上や利益に関することを、社内全体で共通言語として使える「お金のブロックパズル」
の導入サポートもあります。まずはお気軽にお問い合わせください。
漠然と感じているお金の不安がクリアになりますよ。
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「いくら稼げばいいか」に即答できる社長になる ビジョンと資金を両立させる経営術
2025.09.25
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
多くの社長が資金に苦しむ根因は、売上偏重でもコスト偏重でもなく、
「会社に必要なお金が手元に残る設計=数字の地図」がないこと。
固定費・返済・戦略費・税や内部留保を賄う必要粗利を明確にし、
粗利率から必要売上を算出、現状とのギャップを客数・単価・リピートなどに分解して打ち手を決める。
戦略費は効くものを守り、効かないものは止める。
入出金の時間差や在庫・回収の管理などキャッシュの視点も欠かせない。
月次で「事実→振り返り→次の一手」を1枚で確認し、全社員と共有することで、ビジョンと資金が両立する経営へ。
数字は答えではなく座標。社長にしかできない視点転換が、組織を自律的に動かす。
本文
「社長であれば、経営の数字をしっかり見ているのが当たり前」
世間の常識はそう言いますが、キャッシュフローコーチとして、経営者の伴走役を担っている中で、
「数字が見えていない社長」が意外に多いというのが実感です。
それはなぜでしょうか?
理由は明快で、お金の流れを全体像で学ぶ機会がなかったからです。
「とにかく売上」と、現場を駆け抜けてきたせいで
売上・人件費・返済などが頭の中でバラバラに存在し、
「売上が上がれば、給料も支払いも返済も何とかなるはず」と「思い込んでいる」ケースが少なくありません。
しかし、現実は単純ではありません。
お金の流れが見えていないため、売上を上げても手元にお金が残らず、
「返済をするために、また借金をする」といった本末転倒な事態が起こります。
精神論だけで頑張り続ける経営は、やがて心身共に限界を迎えてしまうでしょう。
資金繰りが苦しくなったとき、多くの社長は主に二つの解決策を模索します。
本稿では、それらが本当に有効な道なのか、詳しく見ていきます。
1. コスト削減は万能薬ではない
資金繰りが苦しいとき、まず目が行くのは「人件費」ではないでしょうか。
たしかに固定費の大きな割合を占めますが、安易な人員削減には慎重な判断が必要です。
たとえば、勤務態度に不満があった社員を解雇したとします。
一時的に人件費は減るかもしれませんが、その社員が年間2,000万円の粗利を生み出していたとしたら、
人件費500万円のコストが減る以上に2,000万円の粗利が失われる可能性があります。
さらに、社内のモチベーション低下や、残された社員への業務負担増といったデメリットも無視できません。
水道光熱費や事務用品などの地道な節約も大切ですが、収益へのインパクトは限定的です。
となると、最終的に削られやすいのは、将来の売上を生み出すための
「広告宣伝費」や「研究開発費」「教育研修費」といった「戦略費」となります。
しかし、これらを安易に削減すれば、数ヶ月後に売上ダウンを招き、さらなる苦境に陥るリスクがあります。
効かない戦略費は止める、効いている戦略費は守るという線引きが重要なのです。
結局のところ、コスト削減だけでは根本的な解決には至らず、限界があることに気づきます。
2. 「売上アップすれば解決」という幻想
コスト削減だけでは不十分だと気づくと、次に多くの社長が考えるのが「売上アップ」です。
「売上が増えれば、資金繰りの悩みは解決する」と信じている社長は少なくありません。
ならば、資金繰りに苦しむ会社が後を絶たないのはなぜでしょうか?
真の問題は「売上アップの方法がわからない」ことではありません。
実は、社長そして社員一人ひとりが「いくらの売上をつくれば、会社が必要とするお金が手元に残るのか」
を理解していないことが問題なのです。
必要なのは「数字で描く地図」
売上目標を何度も叫んでも、行動は具体化しません。
重要なのは、固定費・返済・戦略費をすべてまかなうために必要な売上(必要粗利)を明確にすることです。
数字が明確になれば、「あといくら必要か」「なぜそれが必要か」が見えるようになります。
社員にも行動の優先順位が伝わるし、自分自身の意思決定もブレにくくなります。
一度、ご自身や社員さんに、こう尋ねてみて下さい。
「当社は売上や利益が、いくら必要ですか?」と。
「多ければ多いほどいい」という曖昧な答えしか返ってこない会社は、行動にはつながりません。
現在地もゴールまでの距離も分からなければ、走り続けるモチベーションは維持できないのと同じです。
つまり多くの会社では、以下の二点が漠然としています。
1.いくらの売上アップが必要か?
2.それはなぜ必要なのか?
行動を起こすには、このような、根拠のある目標が必要不可欠なのです。
根拠とは、人件費やその他の固定費、返済、そして将来への投資などを全て賄うために
「どれだけの売上(粗利)が必要なのか」という数字です。
この目標と現状のギャップを数字で可視化し、全社員が共有することで、組織は自律的に動きだします。
3. 社長にしかできない「視点の転換」と「数字の地図」づくり
「これまでも長年の経験と勘でやってきたから、計画は不要」という経営者もいます。
でもそれは、すでに地図や地形を熟知した熟練の登山者だからできることです。
社員がいる会社では、計画や目標なしに動けというのは「目隠しして走れ」と言っているようなものです。
私は、凡人の社長だからこそ、計画や目標は必要だと考えます。
目標を立てて毎月軌道修正する会社と、場当たり的に経営する会社では、1年後の結果が異なるのは当然です。
重要なのは「変更はいつでもあり得る」という前提で目標を置くことです。
私自身の例ですが、大学で経済や経営を学んだわけではない私が、
会社の存在意義を明文化し、計画や目標を立て、その上に財務の考え方を積み上げた結果、
内部留保を5年間で5倍以上に増やすことができました。
「悪いところは良くなるだけ」「わからないことは、伸びしろである」と、視点を持ちましょう。
寺田寅彦の言葉を借りれば、「不安」は「希望」の裏返しであり、「苦手」「わからない」は「伸びしろ」の別名です。
数字を見る視点を変え、財務や決算書を「経営判断の力強い味方」に変える。
その第一歩として、今日から「数字の地図」づくりを始めませんか。
今日からできる「数字の地図」づくり(5つのステップ)
固定費の棚卸し: 人件費、地代家賃、減価償却費、借入金返済額など、毎月必ず発生する費用を明確にします。
必要粗利の算定: 上記固定費と、守るべき戦略費の合計額が、最低限必要な粗利額です。自社の粗利率をかけ合わせれば「必要売上」が算出できます。
ギャップの分解: 必要売上と現在の売上の不足額を、「客数×客単価×リピート率」のように数式に分解し、どこに手を打つべきかを見極めます。
「やめる」リストの作成: 効果の薄い施策、赤字案件、安易な値引きなど、先に止めるべきものを明確にします。一方で、効果が出ている戦略費は死守します。
月次の振り返り: 毎月30分でも良いので、「事実→学び→次の一手」のサイクルを回し、見込みと実績、資金状況を一枚で確認する習慣をつけましょう。
数字は、あなたの経営の答えではなく「座標」です。
今どこにいて、どこに向かうのかを教えてくれるナビゲーターです。
「どれだけ頑張ればいいのか」 「なぜ頑張る必要があるのか」
この問いに数字で答えられるようになったとき、売上至上主義でもコスト至上主義でもない、
ビジョンと資金が両立する経営が始まります。
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悔しさを燃料に変える言葉のかけ方 ~世界陸上選手の涙から学ぶ、3つのコーチングフェーズ
2025.09.22
昨日、世界陸上東京大会の幕が下りた。
毎日、熱戦が繰り広げられ、熱心に見ていた人も多いと思います。
私もその一人なのですが、その中でも一番印象に残り
ずっと「私ならどう声をかけるか」と考えさせられる場面がありました。
あの、村武ラシッド選手の決勝の後のインタビューで発せられた
「何が足りなかったのだろう」です。
私は普段、中小企業の経営者向けに、会社の数字を分かりやすく可視化するツールを使い、
経営の『伴走者』となる仕事をしています。
その中で痛感するのが、『優れた仕組み(システム)だけでは人は動かず、最後の決め手は人の感情だ』
ということです。
経営者の「変わろう」とする強い気持ちや、「何かを変えなければ」という強い決意が
なければ、どんなに優れて簡単なツールでも、どんなに優れた技術論でも「宝の持ち腐れ」となります。
そこで本稿では、自戒の念をたくさん含めた上で
社長や上司はもちろん、学校やスポーツの教育者や指導者、子育て中の親御さんにも
役に立てるような「言葉がけ」について書いていきます。
本稿を読んでいただき、少しでもお役に立てればと思います。
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約文」
世界陸上でメダルをわずか0.06秒差で逃した村竹ラシッド選手の「何が足りなかったんだろう」という言葉。
この瞬間、コーチや指導者は何を伝えるべきか。
人はシステムだけでは動かない。最後は感情で動く。だからこそ、言葉がけには3つのフェーズが必要だ。
フェーズ1:直後は感情を受け止める
「よくやった。悔しいな。今はそれでいい」
フェーズ2:努力を承認し、視点を変える
「この悔しさを、どう伸びしろに変えるか。一緒に考えよう」
フェーズ3:冷静に振り返り、未来へ
「この経験が、次の成功に必要な財産だ」
社長、上司、教育者、親。誰かの「そばにいる立場」のあなたの一言は、人生を左右する力を持っている。
悔しさを成長の燃料に変えられるのは、信頼関係のある「あなたの言葉」だけなのだ。
本文
はじめに
男子110mハードル・世界陸上決勝。
わずか0.06秒差でメダルを逃した村武ラシッド選手が、号泣しながら語った言葉に、心を打たれた人は多かったと思います。
「何が足りなかったんだろう」
この一言に込められた悔しさ、孤独、そして責任感。
この瞬間、彼のそばにいて、一緒にここまで歩んできた人々が何を伝えるか。
それは、競技結果以上に大切な「人生の節目」であり、コーチングの真価が問われる場面でもあります。
今回は、コーチの立場からの声かけを、3つのフェーズに分けて考えてみます。
これはアスリートに限らず、企業のリーダーや教育者にも響く、「言葉と問いの使い方」のヒントになるはずです。
🔹フェーズ1:レース直後 ― 感情を受け止める
この瞬間に必要なのは、「分析」や「反省」ではありません。
「ただそこにいて、感情に寄り添い、一人じゃないと伝えること」
これが必要になると思います。
かける言葉の例
「よくやった。悔しいな。今は、それでいい」
「俺も悔しい。でも、最高の走りだった。胸を張ろう」
「今は何も考えなくていい。まずは、しっかりクールダウンしよう」
ポイントは、「前を向け」ではなく「今のままでいいよ」と伝えること。
涙を流せるほどの本気に、評価も分析もいらない。ただ、「隣にいること」がすべて
だと思います。相手の感情をそのまま素直に全て受け止めましょう。
ここで焦って指導やアドバイスに入ると、心は閉じます。
🔹フェーズ2:感情が落ち着いたタイミング ― 努力を承認し、視点を変える
一晩明け、少し冷静さが戻ってきた頃、
このタイミングでは、これまでの努力やプロセスをしっかりと認めた上で、
「一緒に振り返ろう」と未来への入り口を開きます。
かける言葉の例
「この一年、お前がどれだけやってきたか、私が一番よく見てる。世界5位だぞ。誇りに思う」
「『何が足りなかったんだろう』その答え、これから一緒に見つけていこう」
「あの0.06秒をどうやって削るか。面白い挑戦がまた始まったな」
悔しさを「課題」ではなく「伸びしろ」に変換し、
「敗北」を「進化の起点」にする、すなわち、「ここからまたスタート」しようと
顔を上げ、前を向かせるような言葉がけが大切になります。
🔹フェーズ3:数日後の自己分析 ― 冷静に振り返り、未来へ
心身が整った後、ようやく技術的な振り返りと未来の設計に入ります。
このフェーズでは、一方的な分析やデータを伝えるのではなく、
対話を通じ、冷静な自己分析から始めることが大切です。
その上で、自己分析から出てきた課題に対してデータを提示し
「一緒に考えていく」姿勢が必要です。
「アドバイス」ではなく「自分の言葉」で話してもらうことが重要です。
かける言葉の例
「さて、レースを振り返ろう。あなた自身はどう感じてた?何でも聞かせて」
「データを見ると、ここは完璧。でも、この部分が足りていないようだ。どう修正していくか、考えよう。」
「よし!この悔しさが、最後のピースだったかもしれん。つぎこそ成功するために必要な財産を、今日手に入れたんだ。」
技術的な話も、本人の感じたことを起点にする。
そして最後には、「この経験が財産になる」という意味づけを行い、再び目を前に向けさせます。
主観→客観→対策の順で組み立て、「誰が・いつ・何を・どう測るか」まで落とし込む。
ここまで来て初めて、必要と思われる行動や技術、そして数値やデータが活きます。
■ おわりに
村武選手が流した悔し涙。しかし、信頼する周りの人々の言葉によって、
その涙はきっと次の舞台へ向かうための『最高の燃料』に変わるはずです。
私たちもまた、誰かの『伴走者』です。
社長や上司、先生や親の言葉は、単なる「慰め」や「励まし」ではありません。
それは、感情に寄り添い、努力を承認し、未来への光をともす「伴走者としての言葉」です。
あなたが誰かの「そばにいる立場」だとしたら
その一言は、時に人生を左右する力を持っています。
悔しさを燃料に変えさせ、点火させることができるのは、
信頼関係ができている、「あなた」であり「あなたの言葉」なのです。
今日、あなたが向き合う大切な人に、どんな言葉をかけますか?
私も、まだまだ「言葉の力」磨いていきます。
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「聴く力」で組織が変わる:『受け止める』と『受け入れる』の使い分け術
2025.09.19
みなさんも、「世界陸上」ご覧になってますか?
私は毎晩、興奮気味に見ています。
競技自体はもちろんですが、競技終了後のインタビューは
「質問のプロ」の教材として見ています。
たとえば、110mハードルの村武ラシッド選手の、あの言葉
「何が足りなかったんだろう」
後に続ける言葉を考えることは、経営者や部下を持つ方々、
子育て中の方にとって、とても役に立つと思います。
さて、本日は「聴く姿勢」について書いていきます。
本文は経営者・幹部をメインターゲットとして書いていますが、
この考え方は部下や同僚、さらには家庭など、あらゆる人間関係に応用できます。
まずは、触れていただき、周りの方々との、良好な信頼関係を築くためにお使い下さい。
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約文」
部下の本音が出てこない、顧客の不満が溜まってしまう。
こうした悩みは、リーダーが「受け止める」と「受け入れる」を混同していることが原因かもしれません。
「受け止める」とは、相手の意見や感情を否定せず、なぜそう思うのかを理解しようとする「傾聴」の姿勢です。
一方、「受け入れる」とは、その意見を承認し、実行を決める「判断」の行動です。
大切なのは、まず相手の声を最後まで「受け止める」こと。
これにより相手は安心感を抱き、信頼関係が生まれます。
その上で、リーダーとして会社の理念や状況を鑑み、冷静に「受け入れるか」を判断するのです。
この「受け止めてから判断する」プロセスが、組織の心理的安全性を高め、
売上アップや社員の自発的な成長を促す好循環を生み出します。
本文
社員や顧客の声、あなたは本当に「聴けていますか?」
「部下の意見を聞いているはずが、どうも本音が出てこない」
「お客様の要望を聴いているつもりなのに、いつの間にか不満が募っている」
経営者やチームを率いる幹部の方々から、こんな悩みを耳にすることがあります。
その原因の一つに、「受け止める」と「受け入れる」の混同があるかもしれません。
一見似ているようで、この二つの言葉には明確な違いがあります。
この違いを理解し、適切に使い分けることができれば、組織の心理的安全性は高まり、
より良い意思決定へと繋がり、結果として企業の成長を加速させる強力な武器となります。
本日は、コンサルティング現場の具体例を交えながら、
この「受け止める」と「受け入れる」の違いとその実践方法について深く掘り下げていきます。
1. コンサル現場に見る「受け止める」と「受け入れる」の決定的な違い
まずは、私たちが日々のコンサルティングでクライアントの経営者と接する中で意識している、
この二つの姿勢の違いから見ていきましょう。
🔹 受け止める姿勢:相手の「なぜ?」を深く理解する傾聴
「受け止める」とは、相手の言葉や感情、意見をそのまますべて一度、自分の中に招き入れ、理解しようとする態度を指します。
重要なのは、その場で賛成か反対かを判断しないこと。
「この人はなぜそう考えるのだろう?」「その背景には何があるのだろう?」といった探求心を持って耳を傾けます。
この姿勢によって、相手は「自分の話をちゃんと聴いてもらえた」「理解しようとしてくれている」と感じ、
深い信頼を寄せてくれるようになります。
【具体例】
社長:「うちは値上げなんてしたら、今いるお客さんがみんな離れてしまうよ!」
コンサル:「なるほど、そう感じておられるのですね。
具体的に、どんなタイプのお客さんが、どのような理由で離れていくことをイメージされていますか?」
この例でコンサルタントは、社長の「値上げへの懸念」を否定も肯定もしていません。
ただ、その感情や意見の背景にある具体的なイメージや懸念を掘り下げようとしています。
これが「受け止める」という行為です。
🔹 受け入れる姿勢:自分の意思で「採用・承認」する判断
一方、「受け入れる」とは、相手の意見や方針を自分自身も「良い」と判断し、実際に採用・承認する態度を意味します。
つまり、その意見を「自分ごと」として取り込み、実行に移すことを決める段階です。
「受け止める」ことと「受け入れる」ことは必ずしもセットではありません。
相手の意見をしっかりと受け止めて理解した上で、最終的に受け入れるかどうかは別の話です。
【具体例】
社長:「会社のキャッシュが厳しいから、従業員の賞与をゼロにするしかないと考えている。」
コンサル:「なるほど、財務状況を考えると、それほど厳しいご決断を迫られているのですね。
会社の存続を最優先される社長のお気持ち、お察しいたします。
その覚悟を受け止めた上で、まずはその方針で進めることが今は必要かもしれません。
その上で、来季に従業員のモチベーションをどう回復していくか、
具体的な改善策も合わせて検討しましょう」
このケースでは、コンサルタントは社長の「賞与ゼロ」という厳しい意見を「受け入れて」います。
その上で「来季に向けて」と提案することで、前向きな姿勢に持っていこうとしています。
2. 経営者・幹部が実践すべき「使い分け」の極意
この二つの姿勢は、経営者やチームを率いる幹部の方々にとって、日々のマネジメントにおいて非常に重要な意味を持ちます。
(1) 社員や部下の声は、まず「受け止める」ことから始める
組織において、心理的安全性の高さは生産性やエンゲージメントに直結します。
社員や部下が安心して意見を言える環境を作るためには、
彼らの発言や不満やアイデアを「まずは否定せずに聴き切る」という姿勢が不可欠です。
たとえそれが、経営方針と異なる意見であっても、感情的な不満であっても、
まずは「そう感じているんだな」「そういう考え方もあるのか」と、
彼らの内面を理解しようと努めることが、彼らが「ちゃんと聴いてもらえた」と感じる第一歩です。
(2) 最終的な判断で「受け入れる」かどうかを決める
しかし、「受け止める」ことのすべてが「受け入れる」ことではありません。
組織のトップである経営者や幹部には、最終的な意思決定を下す責任があります。
すべての意見を受け入れてしまっては、経営判断がブレたり、
組織全体の方向性を見失ったりするリスクがあります。
社員や部下の意見を十分に受け止めた上で、
会社の理念・ビジョン、数字的な持続可能性、他の選択肢との比較など、多角的な視点から総合的に判断し、
最終的に「受け入れるかどうか」を決定することが重要です。
このプロセスこそが、リーダーシップの発揮される瞬間です。
3. 今日から実践!「受け止める」ための質問と「受け入れる」判断の視点
では、具体的にどのように実践していけば良いのでしょうか。
🔹 「受け止める」ための質問例
相手の言葉の奥にある意図や感情を引き出すために、以下のような質問が有効です。
「なるほど、そう考えるようになった理由は、具体的に何ですか?」
「そのとき、あなたはどんな気持ちでしたか?」「どんな思いでしたか?」
「今の状況で、一番心配していることは何ですか?」
🔹 「受け入れる」判断の視点
社員や部下の意見を受け止めた上で、最終的に「受け入れるか否か」を判断する際には、以下の視点を参考にしてみてください。
会社の理念・ビジョンに合致するか? 長期的な会社の方向性と一致しているか。
数字的に持続可能か? コスト、収益、リソースなど、具体的な数字に基づいて実行可能か。
他の選択肢と比べて最善か? 最も効果的で合理的な選択肢であるか。
4. まとめ:「受け止める」から始まる、信頼と成長のサイクル
「受け止める」とは、相手への理解と傾聴の姿勢です。「受け入れる」とは、その理解を基にした承認と決定の行動です。
経営者や幹部として組織を導く上で最も大切なのは、
社員や顧客の声に対して「いきなり受け入れるかどうか」を決めないことです。
まずは相手の意見や感情を「受け止め」、その背景と意図を深く理解しようと努める。
そして、その上で経営者としての責任と判断基準に基づき、「受け入れるか否か」を冷静に決定する。
この「受け止めてから受け入れる」というプロセスこそが、
組織内の信頼関係を強固にし、従業員のエンゲージメントを高め、
結果として売上アップや社員の自立性向上、定着率の増加を可能にする鍵となります。
「ちゃんと聴いてもらえた」という安心感が、次の建設的な意見を生み、それがまた組織の成長を促す。
このポジティブなサイクルを回し続けるために、今日からあなたの「聴く姿勢」に意識を向けてみませんか。
「心」も「体」も「聴く姿勢」が大切です!「こら! その体勢!」
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数字に強い人が持つ『3つの視点』~ビジネスで本当に必要な「数字力」の正体~
2025.09.16
「数字に強い人」と聞くと、計算が速い、統計に詳しいといったイメージがありませんか?
しかし、ビジネスの現場で本当に求められる「数字力」は、それだけではありません。
数字を使って未来の姿を描き、データに基づいて冷静に判断できる力こそが、
これからの時代を生き抜くビジネスパーソンにとって不可欠なスキルです。
この記事では、経営者と社員、それぞれの視点から「本当に数字に強い」とはどういうことなのか、
その本質を解き明かしていきます。
この記事でわかること
数字で語る人が、なぜ立場を問わず信頼されるのか
数字を使って未来を予測し、ビジネスの精度を上げる方法
厳しい状況でも、数字を味方につけて冷静に行動するコツ
忙しいあなたへ【1分で読めるAI要約】
ビジネスで本当に役立つ「数字力」の本質
ビジネスで「数字に強い」とは、計算が速いことではありません。
数字を使って「信頼を築き」「未来を予測し」「冷静に判断する」力があることを指します。
これは経営者から新入社員まで、すべてのビジネスパーソンに必須のスキルと言えます。
その理由は、以下の3つの効果に集約されます。
1. 数字で語ると「信頼」される
「頑張ります」といった曖昧な言葉ではなく、「売上目標10億円」「先月比15%増」
のように具体的な数字で話すと、発言に客観的な説得力が生まれます。
これにより、経営者は組織を動かしやすくなり、社員は上司や顧客からの信頼を得やすくなります。
2. 数字で「未来を予測」できる
数字は過去の記録だけでなく、未来を予測する道具です。
「価格を5%上げたら利益はどうなるか」といったシミュレーションで最適な経営判断を下したり、
「このままでは目標未達になる」と予測して先手を打ったりと、
ビジネスの精度を格段に向上させることができます。
3. 数字を味方にすると「冷静」でいられる
赤字や目標未達といった厳しい状況でも、感情的になる必要はありません。
数字は「改善すべき点」を教えてくれる冷静なパートナーです。
数字を深掘りして「なぜそうなったのか」を分析すれば、次に打つべき具体的な一手が見えてきます。
まとめ
「数字力」とは、感覚ではなく根拠をもって語る力です。
日々の会話や報告に一つ数字を交える習慣をつけるだけで、誰でもこの強力な武器を身につけることができます。
本文
1. なぜ「数字で語る」だけで信頼されるのか?
ビジネスにおける信頼は、客観的な事実から生まれます。その最も強力なツールが「数字」です。
たとえば経営者が、ただ「売上を伸ばすぞ」と檄を飛ばしても、社員は何をすべきか分からず、組織は動きません。
【経営者の場合】
「3年で売上10億円、市場シェア15%を目指す。そのために、まず半年で新規顧客を100社開拓する」
このように具体的な数字で目標を示すことで、初めて組織全体が同じゴールを見て、
具体的なアクションプランを共有できるのです。
これは社員やビジネスパーソンにとっても同じです。
上司への報告で「頑張っています、成果は出ています」と伝えるだけでは、あなたの評価は上がりません。
【社員の場合】
「担当案件の進捗ですが、施策Aによって追加の発注が先月比で15%増えました」
このように数字で語れる人は、上司や顧客に対して
「客観的な事実に基づいて仕事を進められる人材だ」という信頼を簡単に得ることができます。
コラム
私たち「コンサルタント」と名乗る人間にも実は同じことが言えます。
よく、決算書や試算表を元に「〇〇比率」や、格好のいいカタカナや英語の「数値」を
「見栄えのいい資料」として提示している人がいるようですが
経営者の知りたいことは、その数値ではありませんし
数値を良くすることが経営目標ではありませんよね。
経営者が立てた目標、その達成のために、「数字」を「役に立つ数字に」変換し
専門的なことなど知らなくても、「やるべき事の判断材料を提示」できるような
コンサルタントやコーチを「伴走者」として選択しましょう。
また、会社全員の間に「売上」「コスト」「利益」などに関する「共通言語」が
存在している会社と、そうではない会社では、その成長速度や社内の雰囲気も
全く変わってきます。その結果は、目標達成率や社員満足度にも大きく影響を及ぼします。
実際に「お金のブロックパズル」を社内に導入することは
「お金の見える化」だけにとどまらず、社員の利益やコストに対する意識を高め
全社一丸で目標に向かって進んでいくことの一助となります。
※「お金のブロックパズル」とは
会社の利益構造をシンプルに図式化し、
「どこに手を打てば利益が出るか」
「その利益額は、どのくらいの金額か」
「新規投資時の判断基準の明確化」
「未来の収益計画の立案」などを
決算書が読めなくても誰でも、視覚的に理解可能にする会計ツールです
2. 数字で未来を予測し、最適な一手を選ぶ
数字は過去の結果を記録するだけのものではありません。
未来を予測し、進むべき道を照らす「羅針盤」の役割を果たします。
経営者にとって、意思決定の場面で数字は強力な根拠となります。
感覚や経験則だけに頼った判断は、大きなリスクを伴います。
【経営者の場合】
「価格を5%上げた場合、既存顧客が1割離れても、粗利益は年間で500万円のプラスに転じる」
「お金のブロックパズル」などを用いて、このようなシミュレーションができれば、
自信を持って価格改定の意思決定ができます。
社員が周囲から一目置かれる存在になるためにも、未来の予測は欠かせません。
【社員の場合】
「現在の進捗率だと、3か月後の四半期目標達成率は80%に留まる可能性が高いです。
今のうちから施策Bを追加で実施することを提案します」
このように、数字を使って少し先の未来を描き、先手を打つ提案ができれば、
単なる「作業者」から「戦略を考えるパートナー」へとステップアップできるでしょう。
3. 数字を「冷静なパートナー」とし、感情に流されない
赤字、売上減少、目標未達。こうした厳しい数字を突きつけられると、
多くの人は焦りや不安を感じてしまいます。しかし、本当に数字に強い人は、そんな時こそ冷静です。
彼らは、ネガティブな数字を「終わり」のサインではなく、
「改善すべき点を教えてくれるヒント」として捉えます。
【経営者の場合】
赤字決算という結果に対し、「どの部門のコストが最大の要因か」「テコ入れすべき事業はどこか」
「広告宣伝の有効性は」「新商品開発の必要性は」「人件費の最適化には」
と数字をさらに深掘りし、次の一手を冷静に導き出します。
これは社員にとっても、成長の大きなチャンスです。
【社員の場合】
重要業績評価指標(KPI)が未達、結果、売上目標も未達だったとしても、
「なぜ届かなかったのか」「どの活動量が足りなかったのか」
を数字で客観的に振り返り、次のアクションを具体的に改善できます。
数字はあなたを責める敵ではありません。常に客観的な事実を伝え、
次に進むべき道を教えてくれる、最も信頼できるパートナーなのです。
まとめ:数字は、立場を超えて最強の武器になる
本記事で解説した「数字力」は、役職や立場を超えて、すべてのビジネスパーソンにとって強力な武器となります。
経営者にとっては → 社員を導く「説得力」と、未来を切り拓く「冷静な意思決定」の源泉となる。
若手ビジネスパーソンにとっては → 上司や顧客から信頼を勝ち取り、キャリアを飛躍させるための「武器」となる。
数字に強い人とは、未来を「感覚」ではなく「根拠」をもって語れる人です。
日々の業務報告や会議での発言に、一つでも数字を交える習慣をつけることから、
誰でも「数字に強いビジネスパーソン」へと成長できます。
数字を恐れるのではなく、ぜひあなたのキャリアの味方にしてみませんか。
さあ、今日の会議でまずは一度、「数字」を使って発言してみましょう!
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部下は「指示」では動かない。「問いかけ」で主体性を引き出す令和時代の新リーダーシップ
2025.09.10
さて、昨日は現代の若者が求めている「相談型」の人材育成について
その基礎となる考え方を書きました。
本稿は実践編ですが、前回の記事では『信頼関係の構築が全ての土台である』という考え方について解説しました。
本稿だけでもご理解いただけますが、合わせてお読みいただくとより効果的です。
https://sato-insurance.jp/blog/1003/
忙しいあなたへ。1分で読める要約文
現代の若手社員(20〜30代)は「納得感」を重視し、
一方的な指示ではなく目的を理解した上で自ら考えて動くことにやりがいを感じます。
彼らの主体性を引き出すには、マネジメントスタイルを「指示」から「対話」へとアップデートする必要があります。
その鍵となるのが「問いかけ」です。効果的な問いかけは、まず「感情」に触れることから始めます。
「この仕事は楽しい?」「不安はない?」といった感情への問いかけから入り、
次に「あなたならどうする?」という思考を促す質問へと進みます。この順序が重要です。
問いかけを職場文化として根付かせるための3ステップは:
1.部下の話を急かさず、まず3分間真剣に「聴く」
2.仕事の目的と基本ルールだけを伝え、手段は「任せる」
3.質問後、すぐに答えやアドバイスせず、相手の言葉を「待つ」
この「問いかけ」アプローチにより、若手社員の思考力が育ち、自発的な行動が増え、チーム内の信頼関係が深まります。
最初の一歩として、明日から「仕事は楽しい?」「どこから始められそう?」「改善点は?」といった問いかけを試してみましょう。
部下の表情の変化こそが、あなたのチームの未来を映す鏡です。
本文
【若手が動かない】「指示待ち部下」が自ら動き出す【問いかけ】の技術
「最近の若手は受け身で困る…」「もっと主体的に動いてほしいのに、言われたことしかやらない…」
多くの経営者や管理職が、このような悩みを抱えています。
しかし、それは本当に若手社員だけの問題なのでしょうか。
もしかすると、彼らに主体性がないのではなく、
あなたの職場に「主体性を発揮できる場」がないだけなのかもしれません。
なぜ、あなたの部下は「指示待ち」になってしまうのか?
かつては「背中を見て学べ」「言われたことを正確にやるのが仕事だ」という価値観が当たり前でした。
しかし、今の20〜30代は「納得感」を何よりも重視します。
一方的に命令されるのではなく、目的を理解し、
自分で考えて動くことにやりがいを感じる世代なのです。
つまり、これからのリーダーに求められるのは、
コミュニケーションのあり方を「指示」から「対話」へとアップデートすること。
その鍵こそが「問いかけ」なのです。
主体性を引き出す魔法のスイッチ、「問いかけ」とは?
会議などの場で、経験の少ない若手社員は
「こんなこと言ったら、なんて思われるだろう」「笑われるんじゃないだろうか」
という感情を抱いてしまいがちです。
ですから、決して否定せず、まずは全てを受け止める姿勢や空気を作りましょう。
「何を言っても、笑われないんだ」「経験の差抜きに、意見を聞いてもらえるんだ」
という安心感や信頼感の醸成はとても大切です。
その上で、部下に「やれ」と命令する代わりに、「考えるきっかけ」を渡します。
これだけで、若手社員や社内の空気は驚くほど変わります。
<問いかけの具体例>
「どうだい?この仕事(プロジェクト)、楽しい?」
「この仕事(プロジェクト)を進めるうえで、不安や悩みはない?」
「あなたなら、どんなやり方を試してみたい?」
「その方法がベストだと考えた理由は?」
こうした問いを投げかけることで、
部下は「自分の頭で考えていいんだ」「意見を持っていいんだ」と安心し、思考が回り始めます。
ここで、間違ってはいけないポイントは「話す順番」です
実は上の4つのセリフですが、適当に並べているわけではありません。
「楽しい」「不安」といったような「感情」を問うことから始めています。
ここがポイントの1つです。
昭和世代の私たちに対するマネジメントは「行動」に対するものでした。
私のサラリーマン時代でいうと
理由や意味も伝えられず「1日最低50件の飛び込みをしろ」と。
もちろん、大量行動は、成功へ近づくための手段の1つですから
それ自体は、決して間違っているわけではありません。
しかし、現代の人たちはそのような「体育会系」の教育を受けていません。
昭和世代と比べると「頭脳派」なのです。
とはいえ人間は理論や理屈だけでは、動きません。
「あの人、好み!」⇒「どうやったら話しかけれるだろう?」⇒「こうやってみよう!」
恋愛に限らず、ほぼ全ての行動は、このような流れで行われているはずです。
ですから、まずは「感情をマネジメントする」
実は、行動を起こしてほしければ、感情を動かすことが近道なのです。
「問いかけ」がもたらす3つの効果
1.思考力が育つ
2.自発的な行動が増える
3.チームの信頼が深まる
データも証明「採用」と同じくらい重要な「育成」という課題
中小企業基盤整備機構の調査(2025年3月発表)では、
人手不足の要因として「人材確保・採用(63.3%)」に次いで、
「人材育成(49.1%)」が挙げられています。
採用と同じかそれ以上に、「採用した人材をいかに育てるか」が、企業の未来を左右するのです。
【実践編】「問いの文化」を職場に根づかせる3つのステップ
では、具体的にどうすれば「問いの文化」は根付くのでしょうか。
明日から意識できる3つのステップをご紹介します。
ステップ1:『聴く』を選ぶ
部下が話し始めたら、結論を急がさずに、まず3分間、真剣に耳を傾けてみましょう。
ステップ2:『任せる』を決める
仕事の「目的」と「決まり」だけを明確に伝え、具体的な「手段」は本人に任せてみましょう。
ステップ3:『待つ』を習慣にする
問いを投げかけたら、すぐに答えやアドバイスをせず、
相手が自分の言葉で話し始めるのをじっと待ってみましょう。
「自分でやったほうが早い」という気持ちを一度、脇に置いてみてください。
待つ時間は、未来へのリターンが大きい「人への投資」と考えましょう。
お金もかからない、最高の投資ですよね。
経営者の覚悟が、若手の挑戦に火をつける
リーダーが「話す」ことよりも「聴く」ことを選び、
「教える」ことよりも「引き出す」ことを大切にする。
これは簡単なようで、実は大きな意識改革であり、決断です。
ましてや、はじめは双方とも違和感すら覚えますし、企業文化として根付くには
時間が必要となります。
しかし、この一歩を踏み出したリーダーのもとから、若い力が躍動し、未来が創られていきます。
最後に 〜あなたのチームを変えるための第一歩〜
この記事を読んで、何から始めればいいか迷うかもしれません。
まずは、以下の「3つの問い」の中から一つだけ選び、明日の朝礼や1on1で使ってみませんか?
「最近仕事は、楽しい?困っていることはないかい?」
「その問題、最初の一歩として、何から始められそう?」
「一度やってみてどうだった?どこか改善できそうなところないかな?」
そして、最後にあなた自身に問いかけてみてください。
あなたの「問いかけ」を聞くとき、部下はどんな表情をしていますか?
その表情こそが、あなたのチームの未来を映す鏡なのかもしれません。
この記事で紹介した問いかけは、あくまでチームを変える第一歩です。
あなたの組織に合わせた、より具体的な育成プランにご興味があれば、
トップページ右上より、お気軽にご相談ください。
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命令は止まり、問いは動かす――新時代のリーダーシップ 合言葉は「どう思う?」
2025.09.09
忙しい「あなた」へ 1分で読める要約文
経営者・リーダーの関心は「どう伝えるか」「同じ方向を向いてもらうか」。
本稿は質問と言葉を使うコーチングで若手育成や採用に活かす方法を述べる。
地方紙の話題:高校生は「給与より居心地」「指示より相談型」を重視。
相談型とは「こうしろ」ではなく「どう思う?」「あなたなら?」と問い、本人に考えさせること。
だが実践は難しく、相手が詰まると教える(ティーチング)に戻りがちで、相談者は「理解されていない」と感じやすい。
失敗例:失恋相手へ「大丈夫、もっといい人がいる」は励ましのつもりが否定に聞こえ逆効果になることがある。
まず相手の感情に寄り添う姿勢が重要。
コーチングの基本:信頼・感情・論理のバランス
信頼(土台)
専門性/誠実さ(言行一致・約束遵守)/好意・共通点で「この人なら」と思ってもらう。
感情(エンジン)
共感、物語、情熱で心を動かす。数字の号令だけでは人は動かない。ダイエットの例のように「なりたい姿」への共感が推進力。
論理(道しるべ)
理由・証拠・一貫性で安心して行動できる状態に。未来のイメージ(ワクワク)も効果的。
まとめ
人を動かすのは力ではなく、相手の心が自発的に動く場づくり。
信頼を築き、感情でエンジンをかけ、論理で道筋を示す。
質問と言葉を上手に使い、**「指導・強制」より「相談・自主性」**の関係を目指そう。
本文
経営をしていたり、チームを率いていたりすると、
「どうやったら相手に伝わるかな?」「同じ方向を向いてもらうには?」
そんなことを考える機会、きっと多いはず。
今日は、「質問」と「言葉」を使った「コーチング」による
若手人材の育成、ひいては採用時にも役立つ方法について書こうと思う。
本稿が、ジェネレーションギャップや指導方法に悩む方々の参考になればうれしいです。
先日、地元地方紙の記事に
「高校生の地元就職促進を」と題した記事が出ていた。
地元企業と高校の先生が意見交換したそうです。
記事によると、最近の高校生は
1. 給与より居心地
2. 「指示」よりも「相談型」の指導方法
傾向として、このようなことが大切で
「上の世代からの歩み寄りも大事」との声が企業側から出たそうです。
「給与よりも居心地」
具体的に居心地の示すものが何なのかが、私にはわかりませんが
ようは、人間関係や職場の雰囲気まで含めた
「労働環境」がいいということなのだろうと思う。
「指示」よりも「相談」するような伝え方が求められている
相談型とは、一体何なのか、私には全く理解できなかった。
よくよく考えた結果、昭和世代が若いころ言われてきた
「こうしろ!」とか「こうだ!」ではなく
「どう思う?」とか「あなたなら、どうする?」という
「問いかけを使って、新人さん自身に答えを考えさせる」ということなのかなと
私は理解した。
しかしこれ、簡単なスキルではない。
私自身も、もう何年も毎月練習と実績を積んできましたが
未だに、自身の感覚としての完成形には、たどり着いていません。
一般的に言う「コーチング」のという技術を使うわけですが
実際にやってみれるとわかりますが、スタート時点では「どう思う?」と
問いかけることができるのですが、だんだん相手が悩んだり、迷ったりして
答えに詰まってくると、経験や実績や知恵がある人間はつい、「こうしてみたら」と
いうセリフが口をついてしまいます。いわゆる「ティーチング」になってしまうのです。
現代の「相談型」を求めている相談者や部下ならば、この「こうしてみたら」のセリフは
「理解してもらえてないな」と感じてしまうものなのです。
では、コラムにて、コーチングの「失敗例」をみてみましょう。
コラム 励ましのつもりが逆効果?
最近、失恋を経験した女性が、とても落ち込んだ表情で口を開きました。
「相談したい事があるの。実は私、昨日、彼と別れたの」
「お互い、あんなに大好きだったし、将来の二人の姿だって・・・」
大勢の人の前でも、涙が止まらない女性。そんな女性にあなたは
「大丈夫だよ。男なんて星の数ほどいるし、あなたなら、もっといい男がみつかるはず」
と、やさしい心からあふれ出た言葉を発しました。
しかし、「大丈夫だよ。・・・」のセリフを聞いた女性はどう思ったでしょう?
もちろん、「そうだよね」と思った人もいるでしょう。
さっさと切り替えて「次のいい男探し」の旅へ出発 これはこれでよしですよね。
しかし、「何言ってるの!あんなに好きだった、あれほどの男の代わりなんていない!」
「もっといい男がみつかるだなんて、無責任なこと言わないで!」
こう思う人だっているのです。
このように「味方だよ。元気出して。」の思いからでたやさしい言葉ですが
逆効果に終わることもあるのです。
「コーチング」(相談型の指導)の基本とは
様々なコーチング理論がありますので、その中の1つとしてお読みください。
1.人を動かす「本物の影響力」とは?〜信頼・感情・論理のバランス〜
「人に影響を与え、巻き込み、同じゴールを目指し一緒に歩む」
なかなか難しいことですよね。
しかし、それを可能にするのが「質問」と「言葉」を使った「コーチング力」
ですが、その力をフルに発揮するには「信頼」「感情」「論理」という3つの条件が必要になります。
このバランスが整ってこそ、相手の心に届く「本物の影響力」が生まれます。
1. 信頼 〜影響力の土台は「この人の言うことなら」〜
どんなに良いことを言っても、
「この人、信頼できるなぁ」って思われていなければ、言葉は届きません。
信頼を築くために大事なのは、
専門性:「この分野のことをよく知ってる人だ」と思ってもらうこと
誠実さ:言葉と行動が一致していて、約束をちゃんと守ること
好意や共通点:「この人、なんか話しやすい」「考えが近いな」と感じてもらうこと
2. 感情 〜人を動かす「エンジン」〜
人は、最終的には「心が動いたから行動」するのです。
理屈による動機付けだけでは、長続きしません。
共感すること:「わかってくれてる」と思えると、自然と心が開く
物語で伝える:データや理屈よりも、リアルなエピソードは心に残る
情熱を見せる:「この人、本気なんだな」と思える熱量は、相手の背中を押す
例えば経営でも、「数字が大事」とわかっていても、
「この未来を一緒につくりたいんだ」という社長の想いに共感したとき、
社員一丸となって、会社は動き始めます。
だから「売上目標1億円だ!」といくら叫んでも
社員さんたちには、「シラケた空気」が漂ってしまうのです。
つい、やってませんか?
もっと身近なことで言えば「ダイエット」
「カロリー計算して食事をとるぞ」「基礎代謝を上げるために運動をするぞ」
「ゆっくり、たくさん噛んで食べて満腹感を感じるようにしよう」
どれも正解です。 では
「痩せて異性にモテたい」「カッコよく服を着たい」
「今度のパーティーは、この服を着ていきたい」
さて、あなたなら、どちらの方がダイエットを頑張れそうですか?
答えは、明らかですね。
3. 論理 〜感情を「安心して行動」に変えるための道しるべ〜
感情が動いたあと、次に必要なのは「なぜそれをやるのか?」という「納得感や使命感」が必要になります。
また、論理的ではないとしても目標を達成できた自分の姿を思い浮かべ
「ワクワク感」を感じてもらうのもいいでしょう。
明確な理由:「なぜ今それが必要か」を、分かりやすく、短い言葉で話す
証拠やデータ:数字や実績があると、安心して進める
話の一貫性:言ってることが筋が通ってると、信頼がより深まる
論理は、「安心して進める」もしくは「未来を想像させる」根拠になります。
だからこそ、情熱だけじゃなく、冷静さや道筋も大切です。
まとめ:3つの条件を整え、「質問と言葉」を上手に使おう
人に影響を与え、あなたの望む行動をとってもらうには、「力で押す」ではなく、
「相手の心が、自ら動き出す」状況をつくることが大切です
信頼という土台を築き、
感情というエンジンをかけて、
論理という道しるべで照らす。
この3つを意識するだけで、あなたの想いや言葉は、もっと伝わりやすくなるはずです。
あなたが最近、「人に伝えるのがむずかしいなぁ」と感じた場面はありましたか?
また、逆に「うまく伝わったなぁ」と感じたとき、どんな要素が整っていましたか?
ぜひ、そんな経験もシェアしてくれたら嬉しいです。
「指導や強制」ではなく、「相談と自主性」というような
やさしくも力強い風が吹くような関係を築いていけたらいいですね。
さて、長くなってしまいましたので、今回はここまでにします。
次のブログで、実際の現場で使うと効果が出る「実践編」をお送りします。
「自身に投げかける言葉」「相手に投げかける言葉」など
そのまま使えるセリフをご紹介します。効果抜群です。
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「売り上げ増」でも「利益は増えない」 値引き販売の罠にハマるな!
2025.09.04
1分で読める要約
地方紙で「宅配 値下げ競争激化」。店頭と同価格で宅配できる値引きサービスが登場し、参加ラーメン店では売上4倍の事例も(9/3 北海道新聞)
しかし重要なのは売上ではなく利益、さらに利益の源泉である粗利。割引の可否は「粗利が守れるか」で決まる
検証の前提
通常:1杯1000円(原価40%=400円、粗利600円)。宅配は+配達料300円
キャンペーン:配達料込み1000円に値下げし、150円/灰をお見せが負担(業者も150円負担)
目標:値引き後も月間粗利は据え置き(九:500杯×600円=30万円)
結果(代表ケース)
粗利率60%の商品:新粗利は450円/はい。30万円を維持するには667杯(+33.4%)が必要
粗利率20%の商品:新粗利は50円/はい。同額維持には2000杯(+300%/合計4倍)が必要。→売上4倍でも労力・経費に見合うか疑問。
目安:粗利率40%なら800杯、30%なら1000杯必要。15%以下は値引きで粗利ゼロ以下になり実施不可。
なぜ差が出る?
負担150円は売上からではなく“粗利”から直接差し引かれるため、元の粗利が小さい商品ほど致命傷になる。
値下げ前に必ずやること(3点)
自社商品の粗利率を正確に把握(原価報告書がある業種は算定に注意)。
キャンペーン後の1杯あたり粗利を試算し、必要販売数=旧粗利/杯 ÷ 新粗利/杯 × 旧販売数で損益分岐の販売数を把握。
利益以外の明確な目的(新規獲得→リピート等)があるか確認。値下げは賭けではなく戦略として実施。
結論
値下げは集客の強力な手段だが、低粗利商品には極めて厳しい。
「売上」ではなく「粗利が増えるか」で判断し、必要販売数を見積もってから実行すること。
本文
先日、とある地方紙にこんな見出しが躍っていた。
「宅配 値下げ競争激化」
記事によると、まだ全国に広まっているサービスではないようですが
東京でも開始さましたから、近い将来
多くの人が、その恩恵にあずかれるかもしれませんね。
さて、このニュース、要約すると
宅配メニューを店頭と同じ価格にしてくれる値引きサービスです
この施策に参加した、とある「ラーメン店」
1か月で「売上4倍」になったそうです。
(出典元 北海道新聞 9/3)
しかし、・・・?
大切なのは「売上4倍」ではありません。
あくまで「利益」です。
その中でも、あらゆる利益の根源である「粗利」
ここに注目することが、この「割引による利益増」の成否を分けます。
では、具体的な数字を使って解説します。
数字自体はあくまで架空の数字であることを、ご理解下さい
【前提条件】
あるラーメン店が、デリバリーで1杯1300円
(ラーメン店の売上1000円+配達料300円)のラーメンを月500杯売っています。
原価率は40% 粗利率は60%
今回、提供価格を「配達料込み1000円」に値下げするキャンペーンに参加することにしました。
値下げ分の300円は、お店とデリバリー業者で150円ずつ負担します。
さて、この「1杯あたり150円の負担」は、お店の利益にどう影響するのでしょうか?
今回は「値引き前の粗利額」と同額を「値引き後」も稼ぐには
販売数をどれくらい増やす必要があるか計算してみます。
ケースA(粗利率60%の商品の場合)
「キャンペーン前」ラーメン店の粗利額を計算
1000円-原価400円=600円の粗利/1杯
600円×500杯=月間粗利額 300000円
「キャンペーン後」の粗利額
1000円-原価400円―値引き150円=450円の粗利/1杯
答え
300000円÷450円=666.666杯
すなわち「667杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。
1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば
1.334倍の労力が必要となります。
売上個数にすると、33.4%アップ必要となります。
ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店は
大幅な「利益増」となったであろうことが推測されます。
ケースB(粗利率20%の商品の場合)
今回は比較しやすいように同じ価格設定で商品もラーメンとします
「キャンペーン前」の粗利額を計算しましょう
1000円-原価800円=200円の粗利/1杯
200円×500杯=月間粗利額 100000円
「キャンペーン後」の粗利額
1000円-原価800円―値引き150円=50円の粗利/1杯
答え
100000円÷50円=2000杯
すなわち「2000杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。
1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば
4倍の労力が必要となります。
売上個数にすると、400%アップ必要となります。
ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店でも
労力に見合った、もしくは経費に見合った「利益増」となったかどうかは
疑問符が付きます。
クイック早見表
(売価1000円・店舗負担150円・旧販売500杯)
粗利率
旧粗利/杯
新粗利/杯
倍率=旧粗利÷新粗利
必要杯数(切上)
70%
700
550
1.273
637杯
60%
600
450
1.334
667杯
50%
500
350
1.429
715杯
45%
450
300
1.500
750杯
40%
400
250
1.600
800杯
35%
350
200
1.750
875杯
30%
300
150
2.000
1000杯
25%
250
100
2.500
1250杯
20%
200
50
4.000
2000杯
15%
150
0
―
不可
10%
100
-50
―
不可
なぜ、ここまで差がつくのか?
答えはシンプルです。 お店の負担額(150円)は、売上からではなく「粗利」から直接引かれるからです。
ケース1では、もともと600円あった利益から150円引かれるので、まだ450円の利益が残ります。
ケース2では、もともと200円しかなかった利益から150円引かれるため、50円の利益しか残りません。
もともとの利益が少ない商品ほど、割引によるダメージは致命的になるのです。
まとめ:割引販売する前に、必ずやるべきこと
割引販売やキャンペーン販売は、新規顧客の獲得やお店の認知度アップに繋がる強力なツールです。
しかし、その甘い誘惑に乗る前に、ぜひ一度立ち止まってください。
1.自社の商品の「粗利率」を正確に把握する
まずは、自分の武器(商品)がどれくらいの利益を生む力を持っているのかを知ることがスタートです
「〇〇原価報告書」が存在する業種は、この数字を、把握する時は注意が必要です
2.キャンペーン後の「1商品あたりの利益」を計算する
「売上がいくらになるか」ではなく、「利益がいくら残るか」を必ずシミュレーションしましょう
大切なのは「売上」ではなく「利益」です
P/L(損益計算書)の「売上」と「利益」しか見ていない経営は非常に危険です
値下げは「賭け」ではなく「戦略」と考えましょう
3.利益が減ってでも達成したい「目的」を考える
「今回は赤字でも、新規顧客を増やしてリピートに繋げるのが目的だ」というように、
利益以外の目的が明確なら、戦略的な値下げもアリです
根拠のない、感覚基準での値下げに踏み切るのは、本当に危険です
この記事が、あなたの大切な会社やお店を守る一助となれば幸いです。
「かわいいだけじゃダメですか?」も戦略なのか?
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『社長個人の生命保険設計:家族と会社を同時に守る方法』
2025.08.29
先日に続き第2弾として、今日は社長や経営者の生命保険は
なぜ法人契約だけでは不十分なのか?を解説します。
AI要約(約1分で読める)
法人契約だけでは不十分な理由
法人契約=会社を守る資金、個人契約=家族を守る資金。
法人契約の保険金は一旦会社の資産となり、遺族に渡すには決議や規定が必要。経営状況や株主の意向で制約が出る可能性もある。
一方、個人契約なら受取人(家族)が直接受け取り、生活費・教育資金を速やかに確保できる。
個人契約の3つの役割
遺族の生活保障
受取人が直接受け取り、スピーディかつ確実に生活費を確保できる。
円滑な相続
相続税の非課税枠(500万円×法定相続人)を活用でき、遺産分割協議の対象外。争族対策や納税資金準備に有効。
老後資金準備
個人年金保険や終身保険を通じてセカンドライフの資金を積み立てられる。
法人・個人の組み合わせ例
創業期(30〜40代、借入多・子供小さい)
法人:定期保険で借入返済・運転資金を確保
個人:収入保障保険や学資保険で家族の生活・教育を守る
安定期(50代以降、子供自立・承継準備)
法人:退職金準備や承継資金として返戻金のある保険を活用
個人:終身保険で納税資金・遺産分割対策、年金保険で老後資金
まとめ
法人保険=事業保障、個人保険=生活保障・資産承継。
両輪としてバランス良く設計することが、社長・会社・家族を守るカギ。
専門性が求められるため、信頼できる代理店や税理士への相談が必須。
👉 結論:「会社を守る器」と「家族を守る器」は別物。二刀流の設計こそ、社長の責任ある優しさ。
本文
第2章:社長個人の生命保険 - なぜ法人契約だけでは不十分なのか?
「法人で数億円の保険に入っているから、個人では備える必要はない」と考えるのは早計です。
なぜなら、結論から言うと、
法人契約は会社を守るための資金、個人契約は家族を守るための資金だからです。
同じ「死亡時の備え」でも、保険金の受取人・税制・入金スピード・使途がまったく異なるため、
法人契約だけでは家族の生活防衛が穴あきになりやすいのです。
法人契約の生命保険の保険金は一部の生命保険を除き、一度会社の資産となり、
そこからご遺族に渡すには「死亡退職金」などの形で会社の決議を経て
もしくは、会社の定める規定により支払われる必要があります。
会社の経営状況や財務の状態、他の株主の意向によっては、
ご遺族が望む金額を、望むタイミングで受け取れない可能性があるのです。
そこで重要になるのが、社長個人で契約する生命保険です。
個人契約でしか果たせない3つの役割
1. ご遺族の生活を直接守る
個人契約の保険金は、指定された受取人(配偶者やお子様など)が直接受け取ることができます。
会社の経営状況に関わらず、ご遺族の当面の生活費や教育資金などを確実に遺すことができます。
また、直接遺族が保険金を受け取るため、規定や支給額、税制などを加味して
支給額を判断する法人契約の生命保険に比べ、受取までのスピードが速い。
2. スムーズな相続を実現する
生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象ですが、
保険金全体に対しては「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。
注意 (保険金を複数人で受け取った場合の計算は別となります。今回は割愛)
また、受取人を指定でき、遺産分割協議の対象外となり、
特定の家族に確実に資産を遺す「争族対策」などとしても有効です。
よって、相続人の納税資金の準備にも役立てることができます。
3. ご自身の老後資金を準備する
会社の退職金とは別に、個人年金保険や終身保険などを活用して、
ご自身のセカンドライフのための資金を計画的に準備することができます。
第3章:【実践編】法人と個人のベストな組み合わせ例
会社のステージと社長のライフプランによって、最適な保険の組み合わせは変わります。
年代別に、一般的に考えられる例を書きます。
ケース1:創業期の30代~40代の社長(借入金が多く、お子様が小さい)
法人契約:
借入金の返済(法人税を考慮した金額)と当面の運転資金をカバーするため、
保険料が割安な定期保険や逓減定期保険で大きな事業保障を確保することを優先
個人契約:
ご自身の万が一の際に、残されたご家族が生活に困らないよう、
収入保障保険で生活費を、学資保険や終身保険などで教育資金を準備
ケース2:安定期の50代以上の社長(子供が自立 利益が安定し、事業承継を検討中)
法人契約:
事業保障に加え、役員退職金の準備として、解約返戻金のある定期保険や終身保険などを活用
将来の事業承継に必要な資金準備も視野に入れる
個人契約:
自社株など相続税の納税資金や、遺産分割対策として終身保険に加入
ご自身の老後資金として個人年金保険の検討も始める。
まとめ
法人契約と個人契約の生命保険は、守るべき対象が異なる、車の両輪のような存在です。
法人保険: 会社と従業員を守る「事業保障」
個人保険: 残されたご家族を守る「生活保障」と「資産承継」
それぞれの目的を明確にし、自社の状況とご自身のライフプランに合わせて適切に組み合わせることが、
「社長と会社」そして「大切なご家族の未来」を守るための鍵となります。
保険や税務は非常に専門的な知識が求められる分野です。
この記事をきっかけに、一度、信頼できる専門家(保険代理店や顧問税理士)にご相談の上、
現在の保険ポートフォリオが最適かどうかを確認してみてはいかがでしょうか。
会社を守る器と、家族を守る器は別物。
二刀流の設計で、事業も生活も止めない。これが、社長の「責任ある優しさ」です。
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「経営者のための生命保険戦略 – 会社を守る正しい選び方」
2025.08.28
数あるブログの中から、私のブログへの訪問、有難うございます。
地元函館や北海道はもちろん、
「お金に困まらない経営をしたいあなたに届け」
その想いで、一生懸命書き続けます。
2分で読めるAI要約
大前提(合言葉)
目的 → 金額 → 商品 → 税務(この順番を崩さない)
保険は手段。まず「何のために・いくら必要か」を数値化し、その後に商品・税務を当てはめる。
“お付き合い”で契約先を選ぶのは危険(とくに法人)。金額設定ミス/受取人設計ミス/税務理解不足は、ムダ契約・資金繰り悪化に直結。
法人契約と個人契約は目的も役割も別物として設計する。
第1章:法人契約の生命保険 ― 目的と正しい金額設定
法人契約の主目的(3つ)
事業保障・運転資金の確保
社長不在時の信用低下・借入一括返済リスク・売上減少に備える資金を確保。
役員退職慰労金の準備
将来の大口支出(退職金)を計画的に積み立て。商品によっては税務メリットも。
事業承継対策
自社株の買い取り資金、相続税の納税資金を準備。
※自社株評価や後継者選定・手続き確認などの事前整備が必須。誤ると多額の負債承継リスク。
必要保障額の考え方
【内訳】
A. 死亡退職金・弔慰金(規程:最終月額報酬×在任年数×功績倍率 など)
B. 借入返済資金(税引後で足りる額)
法人受取の保険金には法人税が課税。借入残高そのままでは不足。
⇒ 設定式:借入残高 ÷(1 − 実効税率)
例:残高1億円、税率30% → 1億 ÷ 0.7 = 約1.43億円
C. 当面の運転資金(目安:月商3〜6か月分、または固定費6か月分)
D. 会社の自己資金(即時に使える現預金等。不動産など換金困難資産は除外)
総額式:
必要保障額 =(A + B(税考慮後)+ C)− D
運用上の注意
会社は変化する。成長・借入増減に応じて定期見直しが不可欠。
多くの契約は請求・支払いに手続き要件がある。整備不足は支給遅延や不足の原因。
事業承継・相続はプラスもマイナスも承継。慎重に。
本文
生命保険を選ぶ際の「大前提」
合言葉:目的 → 金額 → 商品 → 税務(順番を逆にしない)
保険は「手段」まず何のために、いくら必要かを数字で決め、その後に商品と税務を当てはめます。
また、残念なことですが「保険募集人」が持つ知識レベルには大きな差があります。
「お付き合い」を保険募集人や契約の判断基準とするのは法人契約の場合
最悪「会社の生死」を「お付き合い」に任せるのと同じことと言えます。
実際に現場では「保険金額の設定ミス」「契約者や保険金受取人の設定ミス」
「初歩的な税務知識を基にした保険販売による財務の棄損」など
想像をはるかに超える数の、実態やニーズに合っていない生命保険契約が存在しています。
つまり、この大前提を外すと、ムダ契約・資金繰り悪化・受取人設計ミスに直結することになります。
また、「法人契約」と「個人契約」とでは、その「目的」も「はたすべき役割も」異なります。
全くの別物として考える必要があります。
では、はじめに「法人契約」の生命保険から見ていきましょう。
第1章:法人契約の生命保険 - その目的と正しい保険金額の設定方法
法人で契約する生命保険は、社長個人やその家族のためではなく、
あくまで「会社を守るため」のものです。主な目的は以下の3つに大別されます。
1. 事業保障や運転資金の確保
社長に万が一のことがあった場合、会社の信用は大きく揺らぎます。
金融機関からの一括返済を求められたり、取引先との関係が悪化したりするリスクも考えられます。
こうした事態に備え、会社を存続させるための資金を確保します。
また、中小企業の場合、社長の存在は売上の減少に直結するリスクが
少なからず存在します。そのような事態を見据えた資金確保が必要です。
2. 役員退職慰労金の準備
役員の退職金を計画的に準備するための資金です。
保険を活用することで、将来の大きな支出に備えつつ、
保険の種類によっては税務上のメリットを得られる場合があります。
3. 事業承継対策
後継者が自社株を買い取るための資金や、相続に伴う納税資金などを準備します。
また、生命保険の活用の前に「自社株対策」「次期経営者の選定と育成」
「現社長の死亡に伴う、新社長選任の手続き方法の確認」など
しっかりと準備しておく必要があります。
このように複数の条件が整わなければ、生命保険の保険金の請求などが
迅速にできないようになっている契約がほとんどですので注意が必要です。
さらに最悪、1つ手続きを間違えただけで「多額の借金」を背負うことにもなりかねません。
事業承継や相続は基本的に「プラスだけ」を引き継ぐものではなく
「マイナス」も引き継ぐものと考え、慎重に対処する必要があります。
正しい保険金額の算出方法
では、具体的にどれくらいの保険金があれば会社を守れるのでしょうか?
「事業保障資金」を例に、必要な保障額の目安を計算してみましょう。
【事業保障に必要な資金の内訳】
A. 死亡退職金・弔慰金
役員退職慰労金規程に基づきます。(例:最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率)
既定がない場合などは、議事録の作成など手間が増えます。
B. 借入金の返済資金
社長に万が一のことがあった際、金融機関からの借入金を返済するための資金です。
ここで最も注意すべき点は、法人が受け取る死亡保険金には法人税が課税されるということです。
したがって、借入金の残高と同額の保険金を用意するだけでは、
納税後に資金が不足し、完済できなくなってしまいます。
税金を支払った後に、借入金を全額返済できるだけの資金が手元に残るように、
以下の計算式で保険金額を設定する必要があります。
計算式と具体例: 借入金残高1億円、法人税の実効税率30%の場合
1億円÷(1-0.3)=1億4300万円
となり、約1億4300万円の保険金が必要となります
C. 当面の運転資金
売上が回復するまでの運転資金。一般的に月商の3〜6ヶ月分
もしくは、固定費の6か月分を目安にしましょう
D. 会社の自己資金
会社が保有する現金・預金など、すぐに使える資金
すぐに現金化できる、商品や設備などを含める場合もあります。
不動産等、すぐには現金化できない資産は勘案してはいけません。
【必要保障額の計算式】
必要保障額=(A+B(税金考慮後の金額)+C)−D
この計算式を基に、自社の財務状況を当てはめてみてください。
また、会社は生き物です。成長もしますし、
それに伴い借入金が変動するのが当たり前です。
保障額は適宜見直すことが非常に重要です。
長くなりましたので次回
『社長個人の生命保険設計:家族と会社を同時に守る方法』と題して
お届けします。
2025.10.01
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
かつて「地図が苦手」な人が多かったが、スマホ地図アプリの登場で誰もが簡単に目的地にたどり着けるようになった。
これは、GPSによる「現在地の可視化」「ルート案内」「全体像と詳細の切り替え」「心理的安全性」の4つの機能が理由だ。
経営の財務管理も同じで、決算書や試算表という「紙の地図」ではなく、
スマホのように「今の財務状況」をリアルタイムで可視化し、目標までのルートを示す必要がある。
具体的には、日次の資金残高確認、4週間の出入金予定表作成、危険ラインの設定から始めることで、資金繰りの不安を解消できる。
重要なのは、専門的な分析力ではなく、財務を「誰もが理解できる形」にデザインすることだ。
本文
なぜ、あれほどいた「地図が苦手な人」は消えたのか?
かつて、多くの人が「地図を読むのが苦手で」と口にしていました。
しかし今、スマートフォンの地図アプリを使いこなせない人はほとんど見かけません。一体なぜでしょうか?
人々の空間認識能力が向上したわけではありません。答えはシンプルです。
ツールが「地図を読み解く」という複雑なスキルを不要にし、
誰もが「ナビに従う」だけで目的地にたどり着ける体験に変えたからです。
実はこれ、経営における「財務」にも全く同じことが言えます。
多くの経営者が、決算書や試算表といった専門的な「紙の地図」を前に、
「数字が苦手だ」「どこをどう見ればいいか分からない」と感じています。
しかし、もし会社の財務状況を「スマホの地図」のように、誰もが直感的に理解できる形に変えられたとしたら?
この記事では、スマホ地図の圧倒的なわかりやすさをヒントに、
複雑な財務を「見える化」し、「迷わない経営」を実現する方法をご紹介します。
1.最大の違いは「現在地」がわかること
スマホ地図が画期的な最大の理由は、GPSで常に「現在地」と「進むべき方向」を示してくれることです。
「自分は今どこにいる?」という、最も重要で、最も不安になる問いに一瞬で答えてくれます。
これを経営に置き換えてみましょう
【紙の地図】: 決算書や試算表
先月や先々月の「過去」の地点情報です。数字の羅列から「で、今、うちの会社の状況は良いの?悪いの?」を読み解くには時間がかかります
【スマホ地図】:リアルタイムの財務指標
今の現金残高、売上、利益がひと目でわかります。会社の「今」が青い点として明確に示されるため、意思決定のスピードが格段に上がるのです
2. 目的地(目標)までの「ルート案内」機能を持つ
スマホ地図は、現在地から目的地までの最適なルートを自動で示してくれます
道を間違えても、すぐに新しいルートを再検索してくれます
これを経営に応用します
【紙の地図】 年度の事業計画書、Excelの売上目標
目標(目的地)は書いてあるが、そこまでの日々の道のり(ルート)は個人の頭の中にしかない
計画と実績がズレても、軌道修正に時間がかかる
【スマホ地図】 予算実績管理(予実管理)ツール
目標(予算)と現状(実績)の差が常に表示される
「あと50mで右折です」という音声案内のように、「目標達成まであと〇〇円」「このままでは〇〇円ショートします」といった具体的な指標が示される
これにより、迅速な軌道修正が可能になります
「計画を立てて終わり」ではなく、目標達成までの道のりをナビゲートしてくれる仕組みが不可欠です。
3. 「全体像」と「詳細」を自由に行き来する
スマホ地図は、2本の指で広域表示と詳細表示を切り替えられます。
これにより、森(全体像)と木(詳細)の両方を簡単に見ることができます。
【紙の地図】 決算書全体と、各勘定科目の元帳
両者を見比べるのは手間がかかり、つながりを理解しにくい
【スマホ地図】 現代の会計ツール
システムを使い売上を確認 → 気になる部分をクリック → どの取引先からの売上が大きいかを表示
→ さらにクリックして個別の請求書データまで確認、といったように、知りたい情報をストレスなく深掘りできる。
この「全体と詳細を自由に行き来できる」環境が、数字に対する心理的なハードルを下げ、問題の早期発見につながります。
4. 「分からない」という心理的な不安を取り除く
「道に迷ったらどうしよう」という不安は、人を臆病にします。
スマホの地図は「いつでも現在地がわかる」「道を間違えても大丈夫」という心理的な安全性を提供してくれるため、
私たちは安心して知らない場所へも踏み出せます。
経営も同じです。
「資金繰りは本当に大丈夫か?」
「この投資は正しい判断だったか?」
「社員に会社の状況を聞かれたら、どう説明しよう?」
こうした不安の根源は、「状況が正確にわかっていない」ことにあります。
財務を「見える化」することは、経営判断の拠り所となり、社長自身、そして社員に対しても
「うちは大丈夫だ」「今はこういう状況だから、次はこの一手を打つ」
と自信を持って説明するための基盤となるのです。
最初の⼀歩:「資⾦の現在地」を⾒える化する
では、何から手をつければいいのでしょうか。多くの会社がPL(損益計算書)を重視しますが、
まず整えるべきは会社の血液である「資金(キャッシュ)」の現在地です。
利益が出ていても資金が尽きれば会社は立ち行かなくなります。
以下の3つを始めるだけで、あなたの会社の地図に「現在地」を示す青い点が灯ります。
日次残高の記録:メイン口座の実残高を毎朝チェックし、どこにいても確認できるようにする
4週間の出入金表の作成:向こう4週間の確定している支払・入金の予定を日付順に並べる
危険ラインの設定:会社の規模に応じて「残高〇〇万円を下回ったら黄色信号」といった危険ラインを具体的に決めておく
目的は完璧な予測ではありません。「ズレを早く見つけて修正する」ことです。
これだけで、「資金繰りは大丈夫か?」という漠然とした不安が、
「2週間後に資金が厳しくなるから、A社への支払いを相談しよう」や
「3か月後に資金が厳しくなりそうだから、早めに銀行に相談しよう」
という具体的なアクションに変わります。
【まとめ】現在地がわかれば、会社は迷わない
「数字が苦手」なのではありません。あなたの会社が使っている財務という「地図」が、
読み解くのに特殊なスキルを要する「紙の地図」のままなだけかもしれません。
これからの経営者に必要なのは、財務諸表を読み解く専門的な能力以上に、
会社の状況を「スマホ地図」のように誰もがわかる形にデザインし、チーム全員で目的地へ向かう力です。
まずは、あなたの会社の「現在地」を示す、キャッシュという名の青い点を灯すことから始めてみてはいかがでしょうか。
それだけで、経営の景色は大きく変わるはずです。
もし、記事を読まれて「うちの財務も、青い点(現在地)が見えるようにしたい」
そんな方には、1枚の紙で、会社のお金を見える化でき、
売上や利益に関することを、社内全体で共通言語として使える「お金のブロックパズル」
の導入サポートもあります。まずはお気軽にお問い合わせください。
漠然と感じているお金の不安がクリアになりますよ。
2025.09.25
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
多くの社長が資金に苦しむ根因は、売上偏重でもコスト偏重でもなく、
「会社に必要なお金が手元に残る設計=数字の地図」がないこと。
固定費・返済・戦略費・税や内部留保を賄う必要粗利を明確にし、
粗利率から必要売上を算出、現状とのギャップを客数・単価・リピートなどに分解して打ち手を決める。
戦略費は効くものを守り、効かないものは止める。
入出金の時間差や在庫・回収の管理などキャッシュの視点も欠かせない。
月次で「事実→振り返り→次の一手」を1枚で確認し、全社員と共有することで、ビジョンと資金が両立する経営へ。
数字は答えではなく座標。社長にしかできない視点転換が、組織を自律的に動かす。
本文
「社長であれば、経営の数字をしっかり見ているのが当たり前」
世間の常識はそう言いますが、キャッシュフローコーチとして、経営者の伴走役を担っている中で、
「数字が見えていない社長」が意外に多いというのが実感です。
それはなぜでしょうか?
理由は明快で、お金の流れを全体像で学ぶ機会がなかったからです。
「とにかく売上」と、現場を駆け抜けてきたせいで
売上・人件費・返済などが頭の中でバラバラに存在し、
「売上が上がれば、給料も支払いも返済も何とかなるはず」と「思い込んでいる」ケースが少なくありません。
しかし、現実は単純ではありません。
お金の流れが見えていないため、売上を上げても手元にお金が残らず、
「返済をするために、また借金をする」といった本末転倒な事態が起こります。
精神論だけで頑張り続ける経営は、やがて心身共に限界を迎えてしまうでしょう。
資金繰りが苦しくなったとき、多くの社長は主に二つの解決策を模索します。
本稿では、それらが本当に有効な道なのか、詳しく見ていきます。
1. コスト削減は万能薬ではない
資金繰りが苦しいとき、まず目が行くのは「人件費」ではないでしょうか。
たしかに固定費の大きな割合を占めますが、安易な人員削減には慎重な判断が必要です。
たとえば、勤務態度に不満があった社員を解雇したとします。
一時的に人件費は減るかもしれませんが、その社員が年間2,000万円の粗利を生み出していたとしたら、
人件費500万円のコストが減る以上に2,000万円の粗利が失われる可能性があります。
さらに、社内のモチベーション低下や、残された社員への業務負担増といったデメリットも無視できません。
水道光熱費や事務用品などの地道な節約も大切ですが、収益へのインパクトは限定的です。
となると、最終的に削られやすいのは、将来の売上を生み出すための
「広告宣伝費」や「研究開発費」「教育研修費」といった「戦略費」となります。
しかし、これらを安易に削減すれば、数ヶ月後に売上ダウンを招き、さらなる苦境に陥るリスクがあります。
効かない戦略費は止める、効いている戦略費は守るという線引きが重要なのです。
結局のところ、コスト削減だけでは根本的な解決には至らず、限界があることに気づきます。
2. 「売上アップすれば解決」という幻想
コスト削減だけでは不十分だと気づくと、次に多くの社長が考えるのが「売上アップ」です。
「売上が増えれば、資金繰りの悩みは解決する」と信じている社長は少なくありません。
ならば、資金繰りに苦しむ会社が後を絶たないのはなぜでしょうか?
真の問題は「売上アップの方法がわからない」ことではありません。
実は、社長そして社員一人ひとりが「いくらの売上をつくれば、会社が必要とするお金が手元に残るのか」
を理解していないことが問題なのです。
必要なのは「数字で描く地図」
売上目標を何度も叫んでも、行動は具体化しません。
重要なのは、固定費・返済・戦略費をすべてまかなうために必要な売上(必要粗利)を明確にすることです。
数字が明確になれば、「あといくら必要か」「なぜそれが必要か」が見えるようになります。
社員にも行動の優先順位が伝わるし、自分自身の意思決定もブレにくくなります。
一度、ご自身や社員さんに、こう尋ねてみて下さい。
「当社は売上や利益が、いくら必要ですか?」と。
「多ければ多いほどいい」という曖昧な答えしか返ってこない会社は、行動にはつながりません。
現在地もゴールまでの距離も分からなければ、走り続けるモチベーションは維持できないのと同じです。
つまり多くの会社では、以下の二点が漠然としています。
1.いくらの売上アップが必要か?
2.それはなぜ必要なのか?
行動を起こすには、このような、根拠のある目標が必要不可欠なのです。
根拠とは、人件費やその他の固定費、返済、そして将来への投資などを全て賄うために
「どれだけの売上(粗利)が必要なのか」という数字です。
この目標と現状のギャップを数字で可視化し、全社員が共有することで、組織は自律的に動きだします。
3. 社長にしかできない「視点の転換」と「数字の地図」づくり
「これまでも長年の経験と勘でやってきたから、計画は不要」という経営者もいます。
でもそれは、すでに地図や地形を熟知した熟練の登山者だからできることです。
社員がいる会社では、計画や目標なしに動けというのは「目隠しして走れ」と言っているようなものです。
私は、凡人の社長だからこそ、計画や目標は必要だと考えます。
目標を立てて毎月軌道修正する会社と、場当たり的に経営する会社では、1年後の結果が異なるのは当然です。
重要なのは「変更はいつでもあり得る」という前提で目標を置くことです。
私自身の例ですが、大学で経済や経営を学んだわけではない私が、
会社の存在意義を明文化し、計画や目標を立て、その上に財務の考え方を積み上げた結果、
内部留保を5年間で5倍以上に増やすことができました。
「悪いところは良くなるだけ」「わからないことは、伸びしろである」と、視点を持ちましょう。
寺田寅彦の言葉を借りれば、「不安」は「希望」の裏返しであり、「苦手」「わからない」は「伸びしろ」の別名です。
数字を見る視点を変え、財務や決算書を「経営判断の力強い味方」に変える。
その第一歩として、今日から「数字の地図」づくりを始めませんか。
今日からできる「数字の地図」づくり(5つのステップ)
固定費の棚卸し: 人件費、地代家賃、減価償却費、借入金返済額など、毎月必ず発生する費用を明確にします。
必要粗利の算定: 上記固定費と、守るべき戦略費の合計額が、最低限必要な粗利額です。自社の粗利率をかけ合わせれば「必要売上」が算出できます。
ギャップの分解: 必要売上と現在の売上の不足額を、「客数×客単価×リピート率」のように数式に分解し、どこに手を打つべきかを見極めます。
「やめる」リストの作成: 効果の薄い施策、赤字案件、安易な値引きなど、先に止めるべきものを明確にします。一方で、効果が出ている戦略費は死守します。
月次の振り返り: 毎月30分でも良いので、「事実→学び→次の一手」のサイクルを回し、見込みと実績、資金状況を一枚で確認する習慣をつけましょう。
数字は、あなたの経営の答えではなく「座標」です。
今どこにいて、どこに向かうのかを教えてくれるナビゲーターです。
「どれだけ頑張ればいいのか」 「なぜ頑張る必要があるのか」
この問いに数字で答えられるようになったとき、売上至上主義でもコスト至上主義でもない、
ビジョンと資金が両立する経営が始まります。
2025.09.22
昨日、世界陸上東京大会の幕が下りた。
毎日、熱戦が繰り広げられ、熱心に見ていた人も多いと思います。
私もその一人なのですが、その中でも一番印象に残り
ずっと「私ならどう声をかけるか」と考えさせられる場面がありました。
あの、村武ラシッド選手の決勝の後のインタビューで発せられた
「何が足りなかったのだろう」です。
私は普段、中小企業の経営者向けに、会社の数字を分かりやすく可視化するツールを使い、
経営の『伴走者』となる仕事をしています。
その中で痛感するのが、『優れた仕組み(システム)だけでは人は動かず、最後の決め手は人の感情だ』
ということです。
経営者の「変わろう」とする強い気持ちや、「何かを変えなければ」という強い決意が
なければ、どんなに優れて簡単なツールでも、どんなに優れた技術論でも「宝の持ち腐れ」となります。
そこで本稿では、自戒の念をたくさん含めた上で
社長や上司はもちろん、学校やスポーツの教育者や指導者、子育て中の親御さんにも
役に立てるような「言葉がけ」について書いていきます。
本稿を読んでいただき、少しでもお役に立てればと思います。
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約文」
世界陸上でメダルをわずか0.06秒差で逃した村竹ラシッド選手の「何が足りなかったんだろう」という言葉。
この瞬間、コーチや指導者は何を伝えるべきか。
人はシステムだけでは動かない。最後は感情で動く。だからこそ、言葉がけには3つのフェーズが必要だ。
フェーズ1:直後は感情を受け止める
「よくやった。悔しいな。今はそれでいい」
フェーズ2:努力を承認し、視点を変える
「この悔しさを、どう伸びしろに変えるか。一緒に考えよう」
フェーズ3:冷静に振り返り、未来へ
「この経験が、次の成功に必要な財産だ」
社長、上司、教育者、親。誰かの「そばにいる立場」のあなたの一言は、人生を左右する力を持っている。
悔しさを成長の燃料に変えられるのは、信頼関係のある「あなたの言葉」だけなのだ。
本文
はじめに
男子110mハードル・世界陸上決勝。
わずか0.06秒差でメダルを逃した村武ラシッド選手が、号泣しながら語った言葉に、心を打たれた人は多かったと思います。
「何が足りなかったんだろう」
この一言に込められた悔しさ、孤独、そして責任感。
この瞬間、彼のそばにいて、一緒にここまで歩んできた人々が何を伝えるか。
それは、競技結果以上に大切な「人生の節目」であり、コーチングの真価が問われる場面でもあります。
今回は、コーチの立場からの声かけを、3つのフェーズに分けて考えてみます。
これはアスリートに限らず、企業のリーダーや教育者にも響く、「言葉と問いの使い方」のヒントになるはずです。
🔹フェーズ1:レース直後 ― 感情を受け止める
この瞬間に必要なのは、「分析」や「反省」ではありません。
「ただそこにいて、感情に寄り添い、一人じゃないと伝えること」
これが必要になると思います。
かける言葉の例
「よくやった。悔しいな。今は、それでいい」
「俺も悔しい。でも、最高の走りだった。胸を張ろう」
「今は何も考えなくていい。まずは、しっかりクールダウンしよう」
ポイントは、「前を向け」ではなく「今のままでいいよ」と伝えること。
涙を流せるほどの本気に、評価も分析もいらない。ただ、「隣にいること」がすべて
だと思います。相手の感情をそのまま素直に全て受け止めましょう。
ここで焦って指導やアドバイスに入ると、心は閉じます。
🔹フェーズ2:感情が落ち着いたタイミング ― 努力を承認し、視点を変える
一晩明け、少し冷静さが戻ってきた頃、
このタイミングでは、これまでの努力やプロセスをしっかりと認めた上で、
「一緒に振り返ろう」と未来への入り口を開きます。
かける言葉の例
「この一年、お前がどれだけやってきたか、私が一番よく見てる。世界5位だぞ。誇りに思う」
「『何が足りなかったんだろう』その答え、これから一緒に見つけていこう」
「あの0.06秒をどうやって削るか。面白い挑戦がまた始まったな」
悔しさを「課題」ではなく「伸びしろ」に変換し、
「敗北」を「進化の起点」にする、すなわち、「ここからまたスタート」しようと
顔を上げ、前を向かせるような言葉がけが大切になります。
🔹フェーズ3:数日後の自己分析 ― 冷静に振り返り、未来へ
心身が整った後、ようやく技術的な振り返りと未来の設計に入ります。
このフェーズでは、一方的な分析やデータを伝えるのではなく、
対話を通じ、冷静な自己分析から始めることが大切です。
その上で、自己分析から出てきた課題に対してデータを提示し
「一緒に考えていく」姿勢が必要です。
「アドバイス」ではなく「自分の言葉」で話してもらうことが重要です。
かける言葉の例
「さて、レースを振り返ろう。あなた自身はどう感じてた?何でも聞かせて」
「データを見ると、ここは完璧。でも、この部分が足りていないようだ。どう修正していくか、考えよう。」
「よし!この悔しさが、最後のピースだったかもしれん。つぎこそ成功するために必要な財産を、今日手に入れたんだ。」
技術的な話も、本人の感じたことを起点にする。
そして最後には、「この経験が財産になる」という意味づけを行い、再び目を前に向けさせます。
主観→客観→対策の順で組み立て、「誰が・いつ・何を・どう測るか」まで落とし込む。
ここまで来て初めて、必要と思われる行動や技術、そして数値やデータが活きます。
■ おわりに
村武選手が流した悔し涙。しかし、信頼する周りの人々の言葉によって、
その涙はきっと次の舞台へ向かうための『最高の燃料』に変わるはずです。
私たちもまた、誰かの『伴走者』です。
社長や上司、先生や親の言葉は、単なる「慰め」や「励まし」ではありません。
それは、感情に寄り添い、努力を承認し、未来への光をともす「伴走者としての言葉」です。
あなたが誰かの「そばにいる立場」だとしたら
その一言は、時に人生を左右する力を持っています。
悔しさを燃料に変えさせ、点火させることができるのは、
信頼関係ができている、「あなた」であり「あなたの言葉」なのです。
今日、あなたが向き合う大切な人に、どんな言葉をかけますか?
私も、まだまだ「言葉の力」磨いていきます。
2025.09.19
みなさんも、「世界陸上」ご覧になってますか?
私は毎晩、興奮気味に見ています。
競技自体はもちろんですが、競技終了後のインタビューは
「質問のプロ」の教材として見ています。
たとえば、110mハードルの村武ラシッド選手の、あの言葉
「何が足りなかったんだろう」
後に続ける言葉を考えることは、経営者や部下を持つ方々、
子育て中の方にとって、とても役に立つと思います。
さて、本日は「聴く姿勢」について書いていきます。
本文は経営者・幹部をメインターゲットとして書いていますが、
この考え方は部下や同僚、さらには家庭など、あらゆる人間関係に応用できます。
まずは、触れていただき、周りの方々との、良好な信頼関係を築くためにお使い下さい。
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約文」
部下の本音が出てこない、顧客の不満が溜まってしまう。
こうした悩みは、リーダーが「受け止める」と「受け入れる」を混同していることが原因かもしれません。
「受け止める」とは、相手の意見や感情を否定せず、なぜそう思うのかを理解しようとする「傾聴」の姿勢です。
一方、「受け入れる」とは、その意見を承認し、実行を決める「判断」の行動です。
大切なのは、まず相手の声を最後まで「受け止める」こと。
これにより相手は安心感を抱き、信頼関係が生まれます。
その上で、リーダーとして会社の理念や状況を鑑み、冷静に「受け入れるか」を判断するのです。
この「受け止めてから判断する」プロセスが、組織の心理的安全性を高め、
売上アップや社員の自発的な成長を促す好循環を生み出します。
本文
社員や顧客の声、あなたは本当に「聴けていますか?」
「部下の意見を聞いているはずが、どうも本音が出てこない」
「お客様の要望を聴いているつもりなのに、いつの間にか不満が募っている」
経営者やチームを率いる幹部の方々から、こんな悩みを耳にすることがあります。
その原因の一つに、「受け止める」と「受け入れる」の混同があるかもしれません。
一見似ているようで、この二つの言葉には明確な違いがあります。
この違いを理解し、適切に使い分けることができれば、組織の心理的安全性は高まり、
より良い意思決定へと繋がり、結果として企業の成長を加速させる強力な武器となります。
本日は、コンサルティング現場の具体例を交えながら、
この「受け止める」と「受け入れる」の違いとその実践方法について深く掘り下げていきます。
1. コンサル現場に見る「受け止める」と「受け入れる」の決定的な違い
まずは、私たちが日々のコンサルティングでクライアントの経営者と接する中で意識している、
この二つの姿勢の違いから見ていきましょう。
🔹 受け止める姿勢:相手の「なぜ?」を深く理解する傾聴
「受け止める」とは、相手の言葉や感情、意見をそのまますべて一度、自分の中に招き入れ、理解しようとする態度を指します。
重要なのは、その場で賛成か反対かを判断しないこと。
「この人はなぜそう考えるのだろう?」「その背景には何があるのだろう?」といった探求心を持って耳を傾けます。
この姿勢によって、相手は「自分の話をちゃんと聴いてもらえた」「理解しようとしてくれている」と感じ、
深い信頼を寄せてくれるようになります。
【具体例】
社長:「うちは値上げなんてしたら、今いるお客さんがみんな離れてしまうよ!」
コンサル:「なるほど、そう感じておられるのですね。
具体的に、どんなタイプのお客さんが、どのような理由で離れていくことをイメージされていますか?」
この例でコンサルタントは、社長の「値上げへの懸念」を否定も肯定もしていません。
ただ、その感情や意見の背景にある具体的なイメージや懸念を掘り下げようとしています。
これが「受け止める」という行為です。
🔹 受け入れる姿勢:自分の意思で「採用・承認」する判断
一方、「受け入れる」とは、相手の意見や方針を自分自身も「良い」と判断し、実際に採用・承認する態度を意味します。
つまり、その意見を「自分ごと」として取り込み、実行に移すことを決める段階です。
「受け止める」ことと「受け入れる」ことは必ずしもセットではありません。
相手の意見をしっかりと受け止めて理解した上で、最終的に受け入れるかどうかは別の話です。
【具体例】
社長:「会社のキャッシュが厳しいから、従業員の賞与をゼロにするしかないと考えている。」
コンサル:「なるほど、財務状況を考えると、それほど厳しいご決断を迫られているのですね。
会社の存続を最優先される社長のお気持ち、お察しいたします。
その覚悟を受け止めた上で、まずはその方針で進めることが今は必要かもしれません。
その上で、来季に従業員のモチベーションをどう回復していくか、
具体的な改善策も合わせて検討しましょう」
このケースでは、コンサルタントは社長の「賞与ゼロ」という厳しい意見を「受け入れて」います。
その上で「来季に向けて」と提案することで、前向きな姿勢に持っていこうとしています。
2. 経営者・幹部が実践すべき「使い分け」の極意
この二つの姿勢は、経営者やチームを率いる幹部の方々にとって、日々のマネジメントにおいて非常に重要な意味を持ちます。
(1) 社員や部下の声は、まず「受け止める」ことから始める
組織において、心理的安全性の高さは生産性やエンゲージメントに直結します。
社員や部下が安心して意見を言える環境を作るためには、
彼らの発言や不満やアイデアを「まずは否定せずに聴き切る」という姿勢が不可欠です。
たとえそれが、経営方針と異なる意見であっても、感情的な不満であっても、
まずは「そう感じているんだな」「そういう考え方もあるのか」と、
彼らの内面を理解しようと努めることが、彼らが「ちゃんと聴いてもらえた」と感じる第一歩です。
(2) 最終的な判断で「受け入れる」かどうかを決める
しかし、「受け止める」ことのすべてが「受け入れる」ことではありません。
組織のトップである経営者や幹部には、最終的な意思決定を下す責任があります。
すべての意見を受け入れてしまっては、経営判断がブレたり、
組織全体の方向性を見失ったりするリスクがあります。
社員や部下の意見を十分に受け止めた上で、
会社の理念・ビジョン、数字的な持続可能性、他の選択肢との比較など、多角的な視点から総合的に判断し、
最終的に「受け入れるかどうか」を決定することが重要です。
このプロセスこそが、リーダーシップの発揮される瞬間です。
3. 今日から実践!「受け止める」ための質問と「受け入れる」判断の視点
では、具体的にどのように実践していけば良いのでしょうか。
🔹 「受け止める」ための質問例
相手の言葉の奥にある意図や感情を引き出すために、以下のような質問が有効です。
「なるほど、そう考えるようになった理由は、具体的に何ですか?」
「そのとき、あなたはどんな気持ちでしたか?」「どんな思いでしたか?」
「今の状況で、一番心配していることは何ですか?」
🔹 「受け入れる」判断の視点
社員や部下の意見を受け止めた上で、最終的に「受け入れるか否か」を判断する際には、以下の視点を参考にしてみてください。
会社の理念・ビジョンに合致するか? 長期的な会社の方向性と一致しているか。
数字的に持続可能か? コスト、収益、リソースなど、具体的な数字に基づいて実行可能か。
他の選択肢と比べて最善か? 最も効果的で合理的な選択肢であるか。
4. まとめ:「受け止める」から始まる、信頼と成長のサイクル
「受け止める」とは、相手への理解と傾聴の姿勢です。「受け入れる」とは、その理解を基にした承認と決定の行動です。
経営者や幹部として組織を導く上で最も大切なのは、
社員や顧客の声に対して「いきなり受け入れるかどうか」を決めないことです。
まずは相手の意見や感情を「受け止め」、その背景と意図を深く理解しようと努める。
そして、その上で経営者としての責任と判断基準に基づき、「受け入れるか否か」を冷静に決定する。
この「受け止めてから受け入れる」というプロセスこそが、
組織内の信頼関係を強固にし、従業員のエンゲージメントを高め、
結果として売上アップや社員の自立性向上、定着率の増加を可能にする鍵となります。
「ちゃんと聴いてもらえた」という安心感が、次の建設的な意見を生み、それがまた組織の成長を促す。
このポジティブなサイクルを回し続けるために、今日からあなたの「聴く姿勢」に意識を向けてみませんか。
「心」も「体」も「聴く姿勢」が大切です!「こら! その体勢!」
2025.09.16
「数字に強い人」と聞くと、計算が速い、統計に詳しいといったイメージがありませんか?
しかし、ビジネスの現場で本当に求められる「数字力」は、それだけではありません。
数字を使って未来の姿を描き、データに基づいて冷静に判断できる力こそが、
これからの時代を生き抜くビジネスパーソンにとって不可欠なスキルです。
この記事では、経営者と社員、それぞれの視点から「本当に数字に強い」とはどういうことなのか、
その本質を解き明かしていきます。
この記事でわかること
数字で語る人が、なぜ立場を問わず信頼されるのか
数字を使って未来を予測し、ビジネスの精度を上げる方法
厳しい状況でも、数字を味方につけて冷静に行動するコツ
忙しいあなたへ【1分で読めるAI要約】
ビジネスで本当に役立つ「数字力」の本質
ビジネスで「数字に強い」とは、計算が速いことではありません。
数字を使って「信頼を築き」「未来を予測し」「冷静に判断する」力があることを指します。
これは経営者から新入社員まで、すべてのビジネスパーソンに必須のスキルと言えます。
その理由は、以下の3つの効果に集約されます。
1. 数字で語ると「信頼」される
「頑張ります」といった曖昧な言葉ではなく、「売上目標10億円」「先月比15%増」
のように具体的な数字で話すと、発言に客観的な説得力が生まれます。
これにより、経営者は組織を動かしやすくなり、社員は上司や顧客からの信頼を得やすくなります。
2. 数字で「未来を予測」できる
数字は過去の記録だけでなく、未来を予測する道具です。
「価格を5%上げたら利益はどうなるか」といったシミュレーションで最適な経営判断を下したり、
「このままでは目標未達になる」と予測して先手を打ったりと、
ビジネスの精度を格段に向上させることができます。
3. 数字を味方にすると「冷静」でいられる
赤字や目標未達といった厳しい状況でも、感情的になる必要はありません。
数字は「改善すべき点」を教えてくれる冷静なパートナーです。
数字を深掘りして「なぜそうなったのか」を分析すれば、次に打つべき具体的な一手が見えてきます。
まとめ
「数字力」とは、感覚ではなく根拠をもって語る力です。
日々の会話や報告に一つ数字を交える習慣をつけるだけで、誰でもこの強力な武器を身につけることができます。
本文
1. なぜ「数字で語る」だけで信頼されるのか?
ビジネスにおける信頼は、客観的な事実から生まれます。その最も強力なツールが「数字」です。
たとえば経営者が、ただ「売上を伸ばすぞ」と檄を飛ばしても、社員は何をすべきか分からず、組織は動きません。
【経営者の場合】
「3年で売上10億円、市場シェア15%を目指す。そのために、まず半年で新規顧客を100社開拓する」
このように具体的な数字で目標を示すことで、初めて組織全体が同じゴールを見て、
具体的なアクションプランを共有できるのです。
これは社員やビジネスパーソンにとっても同じです。
上司への報告で「頑張っています、成果は出ています」と伝えるだけでは、あなたの評価は上がりません。
【社員の場合】
「担当案件の進捗ですが、施策Aによって追加の発注が先月比で15%増えました」
このように数字で語れる人は、上司や顧客に対して
「客観的な事実に基づいて仕事を進められる人材だ」という信頼を簡単に得ることができます。
コラム
私たち「コンサルタント」と名乗る人間にも実は同じことが言えます。
よく、決算書や試算表を元に「〇〇比率」や、格好のいいカタカナや英語の「数値」を
「見栄えのいい資料」として提示している人がいるようですが
経営者の知りたいことは、その数値ではありませんし
数値を良くすることが経営目標ではありませんよね。
経営者が立てた目標、その達成のために、「数字」を「役に立つ数字に」変換し
専門的なことなど知らなくても、「やるべき事の判断材料を提示」できるような
コンサルタントやコーチを「伴走者」として選択しましょう。
また、会社全員の間に「売上」「コスト」「利益」などに関する「共通言語」が
存在している会社と、そうではない会社では、その成長速度や社内の雰囲気も
全く変わってきます。その結果は、目標達成率や社員満足度にも大きく影響を及ぼします。
実際に「お金のブロックパズル」を社内に導入することは
「お金の見える化」だけにとどまらず、社員の利益やコストに対する意識を高め
全社一丸で目標に向かって進んでいくことの一助となります。
※「お金のブロックパズル」とは
会社の利益構造をシンプルに図式化し、
「どこに手を打てば利益が出るか」
「その利益額は、どのくらいの金額か」
「新規投資時の判断基準の明確化」
「未来の収益計画の立案」などを
決算書が読めなくても誰でも、視覚的に理解可能にする会計ツールです
2. 数字で未来を予測し、最適な一手を選ぶ
数字は過去の結果を記録するだけのものではありません。
未来を予測し、進むべき道を照らす「羅針盤」の役割を果たします。
経営者にとって、意思決定の場面で数字は強力な根拠となります。
感覚や経験則だけに頼った判断は、大きなリスクを伴います。
【経営者の場合】
「価格を5%上げた場合、既存顧客が1割離れても、粗利益は年間で500万円のプラスに転じる」
「お金のブロックパズル」などを用いて、このようなシミュレーションができれば、
自信を持って価格改定の意思決定ができます。
社員が周囲から一目置かれる存在になるためにも、未来の予測は欠かせません。
【社員の場合】
「現在の進捗率だと、3か月後の四半期目標達成率は80%に留まる可能性が高いです。
今のうちから施策Bを追加で実施することを提案します」
このように、数字を使って少し先の未来を描き、先手を打つ提案ができれば、
単なる「作業者」から「戦略を考えるパートナー」へとステップアップできるでしょう。
3. 数字を「冷静なパートナー」とし、感情に流されない
赤字、売上減少、目標未達。こうした厳しい数字を突きつけられると、
多くの人は焦りや不安を感じてしまいます。しかし、本当に数字に強い人は、そんな時こそ冷静です。
彼らは、ネガティブな数字を「終わり」のサインではなく、
「改善すべき点を教えてくれるヒント」として捉えます。
【経営者の場合】
赤字決算という結果に対し、「どの部門のコストが最大の要因か」「テコ入れすべき事業はどこか」
「広告宣伝の有効性は」「新商品開発の必要性は」「人件費の最適化には」
と数字をさらに深掘りし、次の一手を冷静に導き出します。
これは社員にとっても、成長の大きなチャンスです。
【社員の場合】
重要業績評価指標(KPI)が未達、結果、売上目標も未達だったとしても、
「なぜ届かなかったのか」「どの活動量が足りなかったのか」
を数字で客観的に振り返り、次のアクションを具体的に改善できます。
数字はあなたを責める敵ではありません。常に客観的な事実を伝え、
次に進むべき道を教えてくれる、最も信頼できるパートナーなのです。
まとめ:数字は、立場を超えて最強の武器になる
本記事で解説した「数字力」は、役職や立場を超えて、すべてのビジネスパーソンにとって強力な武器となります。
経営者にとっては → 社員を導く「説得力」と、未来を切り拓く「冷静な意思決定」の源泉となる。
若手ビジネスパーソンにとっては → 上司や顧客から信頼を勝ち取り、キャリアを飛躍させるための「武器」となる。
数字に強い人とは、未来を「感覚」ではなく「根拠」をもって語れる人です。
日々の業務報告や会議での発言に、一つでも数字を交える習慣をつけることから、
誰でも「数字に強いビジネスパーソン」へと成長できます。
数字を恐れるのではなく、ぜひあなたのキャリアの味方にしてみませんか。
さあ、今日の会議でまずは一度、「数字」を使って発言してみましょう!
2025.09.10
さて、昨日は現代の若者が求めている「相談型」の人材育成について
その基礎となる考え方を書きました。
本稿は実践編ですが、前回の記事では『信頼関係の構築が全ての土台である』という考え方について解説しました。
本稿だけでもご理解いただけますが、合わせてお読みいただくとより効果的です。
https://sato-insurance.jp/blog/1003/
忙しいあなたへ。1分で読める要約文
現代の若手社員(20〜30代)は「納得感」を重視し、
一方的な指示ではなく目的を理解した上で自ら考えて動くことにやりがいを感じます。
彼らの主体性を引き出すには、マネジメントスタイルを「指示」から「対話」へとアップデートする必要があります。
その鍵となるのが「問いかけ」です。効果的な問いかけは、まず「感情」に触れることから始めます。
「この仕事は楽しい?」「不安はない?」といった感情への問いかけから入り、
次に「あなたならどうする?」という思考を促す質問へと進みます。この順序が重要です。
問いかけを職場文化として根付かせるための3ステップは:
1.部下の話を急かさず、まず3分間真剣に「聴く」
2.仕事の目的と基本ルールだけを伝え、手段は「任せる」
3.質問後、すぐに答えやアドバイスせず、相手の言葉を「待つ」
この「問いかけ」アプローチにより、若手社員の思考力が育ち、自発的な行動が増え、チーム内の信頼関係が深まります。
最初の一歩として、明日から「仕事は楽しい?」「どこから始められそう?」「改善点は?」といった問いかけを試してみましょう。
部下の表情の変化こそが、あなたのチームの未来を映す鏡です。
本文
【若手が動かない】「指示待ち部下」が自ら動き出す【問いかけ】の技術
「最近の若手は受け身で困る…」「もっと主体的に動いてほしいのに、言われたことしかやらない…」
多くの経営者や管理職が、このような悩みを抱えています。
しかし、それは本当に若手社員だけの問題なのでしょうか。
もしかすると、彼らに主体性がないのではなく、
あなたの職場に「主体性を発揮できる場」がないだけなのかもしれません。
なぜ、あなたの部下は「指示待ち」になってしまうのか?
かつては「背中を見て学べ」「言われたことを正確にやるのが仕事だ」という価値観が当たり前でした。
しかし、今の20〜30代は「納得感」を何よりも重視します。
一方的に命令されるのではなく、目的を理解し、
自分で考えて動くことにやりがいを感じる世代なのです。
つまり、これからのリーダーに求められるのは、
コミュニケーションのあり方を「指示」から「対話」へとアップデートすること。
その鍵こそが「問いかけ」なのです。
主体性を引き出す魔法のスイッチ、「問いかけ」とは?
会議などの場で、経験の少ない若手社員は
「こんなこと言ったら、なんて思われるだろう」「笑われるんじゃないだろうか」
という感情を抱いてしまいがちです。
ですから、決して否定せず、まずは全てを受け止める姿勢や空気を作りましょう。
「何を言っても、笑われないんだ」「経験の差抜きに、意見を聞いてもらえるんだ」
という安心感や信頼感の醸成はとても大切です。
その上で、部下に「やれ」と命令する代わりに、「考えるきっかけ」を渡します。
これだけで、若手社員や社内の空気は驚くほど変わります。
<問いかけの具体例>
「どうだい?この仕事(プロジェクト)、楽しい?」
「この仕事(プロジェクト)を進めるうえで、不安や悩みはない?」
「あなたなら、どんなやり方を試してみたい?」
「その方法がベストだと考えた理由は?」
こうした問いを投げかけることで、
部下は「自分の頭で考えていいんだ」「意見を持っていいんだ」と安心し、思考が回り始めます。
ここで、間違ってはいけないポイントは「話す順番」です
実は上の4つのセリフですが、適当に並べているわけではありません。
「楽しい」「不安」といったような「感情」を問うことから始めています。
ここがポイントの1つです。
昭和世代の私たちに対するマネジメントは「行動」に対するものでした。
私のサラリーマン時代でいうと
理由や意味も伝えられず「1日最低50件の飛び込みをしろ」と。
もちろん、大量行動は、成功へ近づくための手段の1つですから
それ自体は、決して間違っているわけではありません。
しかし、現代の人たちはそのような「体育会系」の教育を受けていません。
昭和世代と比べると「頭脳派」なのです。
とはいえ人間は理論や理屈だけでは、動きません。
「あの人、好み!」⇒「どうやったら話しかけれるだろう?」⇒「こうやってみよう!」
恋愛に限らず、ほぼ全ての行動は、このような流れで行われているはずです。
ですから、まずは「感情をマネジメントする」
実は、行動を起こしてほしければ、感情を動かすことが近道なのです。
「問いかけ」がもたらす3つの効果
1.思考力が育つ
2.自発的な行動が増える
3.チームの信頼が深まる
データも証明「採用」と同じくらい重要な「育成」という課題
中小企業基盤整備機構の調査(2025年3月発表)では、
人手不足の要因として「人材確保・採用(63.3%)」に次いで、
「人材育成(49.1%)」が挙げられています。
採用と同じかそれ以上に、「採用した人材をいかに育てるか」が、企業の未来を左右するのです。
【実践編】「問いの文化」を職場に根づかせる3つのステップ
では、具体的にどうすれば「問いの文化」は根付くのでしょうか。
明日から意識できる3つのステップをご紹介します。
ステップ1:『聴く』を選ぶ
部下が話し始めたら、結論を急がさずに、まず3分間、真剣に耳を傾けてみましょう。
ステップ2:『任せる』を決める
仕事の「目的」と「決まり」だけを明確に伝え、具体的な「手段」は本人に任せてみましょう。
ステップ3:『待つ』を習慣にする
問いを投げかけたら、すぐに答えやアドバイスをせず、
相手が自分の言葉で話し始めるのをじっと待ってみましょう。
「自分でやったほうが早い」という気持ちを一度、脇に置いてみてください。
待つ時間は、未来へのリターンが大きい「人への投資」と考えましょう。
お金もかからない、最高の投資ですよね。
経営者の覚悟が、若手の挑戦に火をつける
リーダーが「話す」ことよりも「聴く」ことを選び、
「教える」ことよりも「引き出す」ことを大切にする。
これは簡単なようで、実は大きな意識改革であり、決断です。
ましてや、はじめは双方とも違和感すら覚えますし、企業文化として根付くには
時間が必要となります。
しかし、この一歩を踏み出したリーダーのもとから、若い力が躍動し、未来が創られていきます。
最後に 〜あなたのチームを変えるための第一歩〜
この記事を読んで、何から始めればいいか迷うかもしれません。
まずは、以下の「3つの問い」の中から一つだけ選び、明日の朝礼や1on1で使ってみませんか?
「最近仕事は、楽しい?困っていることはないかい?」
「その問題、最初の一歩として、何から始められそう?」
「一度やってみてどうだった?どこか改善できそうなところないかな?」
そして、最後にあなた自身に問いかけてみてください。
あなたの「問いかけ」を聞くとき、部下はどんな表情をしていますか?
その表情こそが、あなたのチームの未来を映す鏡なのかもしれません。
この記事で紹介した問いかけは、あくまでチームを変える第一歩です。
あなたの組織に合わせた、より具体的な育成プランにご興味があれば、
トップページ右上より、お気軽にご相談ください。
2025.09.09
忙しい「あなた」へ 1分で読める要約文
経営者・リーダーの関心は「どう伝えるか」「同じ方向を向いてもらうか」。
本稿は質問と言葉を使うコーチングで若手育成や採用に活かす方法を述べる。
地方紙の話題:高校生は「給与より居心地」「指示より相談型」を重視。
相談型とは「こうしろ」ではなく「どう思う?」「あなたなら?」と問い、本人に考えさせること。
だが実践は難しく、相手が詰まると教える(ティーチング)に戻りがちで、相談者は「理解されていない」と感じやすい。
失敗例:失恋相手へ「大丈夫、もっといい人がいる」は励ましのつもりが否定に聞こえ逆効果になることがある。
まず相手の感情に寄り添う姿勢が重要。
コーチングの基本:信頼・感情・論理のバランス
信頼(土台)
専門性/誠実さ(言行一致・約束遵守)/好意・共通点で「この人なら」と思ってもらう。
感情(エンジン)
共感、物語、情熱で心を動かす。数字の号令だけでは人は動かない。ダイエットの例のように「なりたい姿」への共感が推進力。
論理(道しるべ)
理由・証拠・一貫性で安心して行動できる状態に。未来のイメージ(ワクワク)も効果的。
まとめ
人を動かすのは力ではなく、相手の心が自発的に動く場づくり。
信頼を築き、感情でエンジンをかけ、論理で道筋を示す。
質問と言葉を上手に使い、**「指導・強制」より「相談・自主性」**の関係を目指そう。
本文
経営をしていたり、チームを率いていたりすると、
「どうやったら相手に伝わるかな?」「同じ方向を向いてもらうには?」
そんなことを考える機会、きっと多いはず。
今日は、「質問」と「言葉」を使った「コーチング」による
若手人材の育成、ひいては採用時にも役立つ方法について書こうと思う。
本稿が、ジェネレーションギャップや指導方法に悩む方々の参考になればうれしいです。
先日、地元地方紙の記事に
「高校生の地元就職促進を」と題した記事が出ていた。
地元企業と高校の先生が意見交換したそうです。
記事によると、最近の高校生は
1. 給与より居心地
2. 「指示」よりも「相談型」の指導方法
傾向として、このようなことが大切で
「上の世代からの歩み寄りも大事」との声が企業側から出たそうです。
「給与よりも居心地」
具体的に居心地の示すものが何なのかが、私にはわかりませんが
ようは、人間関係や職場の雰囲気まで含めた
「労働環境」がいいということなのだろうと思う。
「指示」よりも「相談」するような伝え方が求められている
相談型とは、一体何なのか、私には全く理解できなかった。
よくよく考えた結果、昭和世代が若いころ言われてきた
「こうしろ!」とか「こうだ!」ではなく
「どう思う?」とか「あなたなら、どうする?」という
「問いかけを使って、新人さん自身に答えを考えさせる」ということなのかなと
私は理解した。
しかしこれ、簡単なスキルではない。
私自身も、もう何年も毎月練習と実績を積んできましたが
未だに、自身の感覚としての完成形には、たどり着いていません。
一般的に言う「コーチング」のという技術を使うわけですが
実際にやってみれるとわかりますが、スタート時点では「どう思う?」と
問いかけることができるのですが、だんだん相手が悩んだり、迷ったりして
答えに詰まってくると、経験や実績や知恵がある人間はつい、「こうしてみたら」と
いうセリフが口をついてしまいます。いわゆる「ティーチング」になってしまうのです。
現代の「相談型」を求めている相談者や部下ならば、この「こうしてみたら」のセリフは
「理解してもらえてないな」と感じてしまうものなのです。
では、コラムにて、コーチングの「失敗例」をみてみましょう。
コラム 励ましのつもりが逆効果?
最近、失恋を経験した女性が、とても落ち込んだ表情で口を開きました。
「相談したい事があるの。実は私、昨日、彼と別れたの」
「お互い、あんなに大好きだったし、将来の二人の姿だって・・・」
大勢の人の前でも、涙が止まらない女性。そんな女性にあなたは
「大丈夫だよ。男なんて星の数ほどいるし、あなたなら、もっといい男がみつかるはず」
と、やさしい心からあふれ出た言葉を発しました。
しかし、「大丈夫だよ。・・・」のセリフを聞いた女性はどう思ったでしょう?
もちろん、「そうだよね」と思った人もいるでしょう。
さっさと切り替えて「次のいい男探し」の旅へ出発 これはこれでよしですよね。
しかし、「何言ってるの!あんなに好きだった、あれほどの男の代わりなんていない!」
「もっといい男がみつかるだなんて、無責任なこと言わないで!」
こう思う人だっているのです。
このように「味方だよ。元気出して。」の思いからでたやさしい言葉ですが
逆効果に終わることもあるのです。
「コーチング」(相談型の指導)の基本とは
様々なコーチング理論がありますので、その中の1つとしてお読みください。
1.人を動かす「本物の影響力」とは?〜信頼・感情・論理のバランス〜
「人に影響を与え、巻き込み、同じゴールを目指し一緒に歩む」
なかなか難しいことですよね。
しかし、それを可能にするのが「質問」と「言葉」を使った「コーチング力」
ですが、その力をフルに発揮するには「信頼」「感情」「論理」という3つの条件が必要になります。
このバランスが整ってこそ、相手の心に届く「本物の影響力」が生まれます。
1. 信頼 〜影響力の土台は「この人の言うことなら」〜
どんなに良いことを言っても、
「この人、信頼できるなぁ」って思われていなければ、言葉は届きません。
信頼を築くために大事なのは、
専門性:「この分野のことをよく知ってる人だ」と思ってもらうこと
誠実さ:言葉と行動が一致していて、約束をちゃんと守ること
好意や共通点:「この人、なんか話しやすい」「考えが近いな」と感じてもらうこと
2. 感情 〜人を動かす「エンジン」〜
人は、最終的には「心が動いたから行動」するのです。
理屈による動機付けだけでは、長続きしません。
共感すること:「わかってくれてる」と思えると、自然と心が開く
物語で伝える:データや理屈よりも、リアルなエピソードは心に残る
情熱を見せる:「この人、本気なんだな」と思える熱量は、相手の背中を押す
例えば経営でも、「数字が大事」とわかっていても、
「この未来を一緒につくりたいんだ」という社長の想いに共感したとき、
社員一丸となって、会社は動き始めます。
だから「売上目標1億円だ!」といくら叫んでも
社員さんたちには、「シラケた空気」が漂ってしまうのです。
つい、やってませんか?
もっと身近なことで言えば「ダイエット」
「カロリー計算して食事をとるぞ」「基礎代謝を上げるために運動をするぞ」
「ゆっくり、たくさん噛んで食べて満腹感を感じるようにしよう」
どれも正解です。 では
「痩せて異性にモテたい」「カッコよく服を着たい」
「今度のパーティーは、この服を着ていきたい」
さて、あなたなら、どちらの方がダイエットを頑張れそうですか?
答えは、明らかですね。
3. 論理 〜感情を「安心して行動」に変えるための道しるべ〜
感情が動いたあと、次に必要なのは「なぜそれをやるのか?」という「納得感や使命感」が必要になります。
また、論理的ではないとしても目標を達成できた自分の姿を思い浮かべ
「ワクワク感」を感じてもらうのもいいでしょう。
明確な理由:「なぜ今それが必要か」を、分かりやすく、短い言葉で話す
証拠やデータ:数字や実績があると、安心して進める
話の一貫性:言ってることが筋が通ってると、信頼がより深まる
論理は、「安心して進める」もしくは「未来を想像させる」根拠になります。
だからこそ、情熱だけじゃなく、冷静さや道筋も大切です。
まとめ:3つの条件を整え、「質問と言葉」を上手に使おう
人に影響を与え、あなたの望む行動をとってもらうには、「力で押す」ではなく、
「相手の心が、自ら動き出す」状況をつくることが大切です
信頼という土台を築き、
感情というエンジンをかけて、
論理という道しるべで照らす。
この3つを意識するだけで、あなたの想いや言葉は、もっと伝わりやすくなるはずです。
あなたが最近、「人に伝えるのがむずかしいなぁ」と感じた場面はありましたか?
また、逆に「うまく伝わったなぁ」と感じたとき、どんな要素が整っていましたか?
ぜひ、そんな経験もシェアしてくれたら嬉しいです。
「指導や強制」ではなく、「相談と自主性」というような
やさしくも力強い風が吹くような関係を築いていけたらいいですね。
さて、長くなってしまいましたので、今回はここまでにします。
次のブログで、実際の現場で使うと効果が出る「実践編」をお送りします。
「自身に投げかける言葉」「相手に投げかける言葉」など
そのまま使えるセリフをご紹介します。効果抜群です。
2025.09.04
1分で読める要約
地方紙で「宅配 値下げ競争激化」。店頭と同価格で宅配できる値引きサービスが登場し、参加ラーメン店では売上4倍の事例も(9/3 北海道新聞)
しかし重要なのは売上ではなく利益、さらに利益の源泉である粗利。割引の可否は「粗利が守れるか」で決まる
検証の前提
通常:1杯1000円(原価40%=400円、粗利600円)。宅配は+配達料300円
キャンペーン:配達料込み1000円に値下げし、150円/灰をお見せが負担(業者も150円負担)
目標:値引き後も月間粗利は据え置き(九:500杯×600円=30万円)
結果(代表ケース)
粗利率60%の商品:新粗利は450円/はい。30万円を維持するには667杯(+33.4%)が必要
粗利率20%の商品:新粗利は50円/はい。同額維持には2000杯(+300%/合計4倍)が必要。→売上4倍でも労力・経費に見合うか疑問。
目安:粗利率40%なら800杯、30%なら1000杯必要。15%以下は値引きで粗利ゼロ以下になり実施不可。
なぜ差が出る?
負担150円は売上からではなく“粗利”から直接差し引かれるため、元の粗利が小さい商品ほど致命傷になる。
値下げ前に必ずやること(3点)
自社商品の粗利率を正確に把握(原価報告書がある業種は算定に注意)。
キャンペーン後の1杯あたり粗利を試算し、必要販売数=旧粗利/杯 ÷ 新粗利/杯 × 旧販売数で損益分岐の販売数を把握。
利益以外の明確な目的(新規獲得→リピート等)があるか確認。値下げは賭けではなく戦略として実施。
結論
値下げは集客の強力な手段だが、低粗利商品には極めて厳しい。
「売上」ではなく「粗利が増えるか」で判断し、必要販売数を見積もってから実行すること。
本文
先日、とある地方紙にこんな見出しが躍っていた。
「宅配 値下げ競争激化」
記事によると、まだ全国に広まっているサービスではないようですが
東京でも開始さましたから、近い将来
多くの人が、その恩恵にあずかれるかもしれませんね。
さて、このニュース、要約すると
宅配メニューを店頭と同じ価格にしてくれる値引きサービスです
この施策に参加した、とある「ラーメン店」
1か月で「売上4倍」になったそうです。
(出典元 北海道新聞 9/3)
しかし、・・・?
大切なのは「売上4倍」ではありません。
あくまで「利益」です。
その中でも、あらゆる利益の根源である「粗利」
ここに注目することが、この「割引による利益増」の成否を分けます。
では、具体的な数字を使って解説します。
数字自体はあくまで架空の数字であることを、ご理解下さい
【前提条件】
あるラーメン店が、デリバリーで1杯1300円
(ラーメン店の売上1000円+配達料300円)のラーメンを月500杯売っています。
原価率は40% 粗利率は60%
今回、提供価格を「配達料込み1000円」に値下げするキャンペーンに参加することにしました。
値下げ分の300円は、お店とデリバリー業者で150円ずつ負担します。
さて、この「1杯あたり150円の負担」は、お店の利益にどう影響するのでしょうか?
今回は「値引き前の粗利額」と同額を「値引き後」も稼ぐには
販売数をどれくらい増やす必要があるか計算してみます。
ケースA(粗利率60%の商品の場合)
「キャンペーン前」ラーメン店の粗利額を計算
1000円-原価400円=600円の粗利/1杯
600円×500杯=月間粗利額 300000円
「キャンペーン後」の粗利額
1000円-原価400円―値引き150円=450円の粗利/1杯
答え
300000円÷450円=666.666杯
すなわち「667杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。
1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば
1.334倍の労力が必要となります。
売上個数にすると、33.4%アップ必要となります。
ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店は
大幅な「利益増」となったであろうことが推測されます。
ケースB(粗利率20%の商品の場合)
今回は比較しやすいように同じ価格設定で商品もラーメンとします
「キャンペーン前」の粗利額を計算しましょう
1000円-原価800円=200円の粗利/1杯
200円×500杯=月間粗利額 100000円
「キャンペーン後」の粗利額
1000円-原価800円―値引き150円=50円の粗利/1杯
答え
100000円÷50円=2000杯
すなわち「2000杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。
1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば
4倍の労力が必要となります。
売上個数にすると、400%アップ必要となります。
ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店でも
労力に見合った、もしくは経費に見合った「利益増」となったかどうかは
疑問符が付きます。
クイック早見表
(売価1000円・店舗負担150円・旧販売500杯)
粗利率
旧粗利/杯
新粗利/杯
倍率=旧粗利÷新粗利
必要杯数(切上)
70%
700
550
1.273
637杯
60%
600
450
1.334
667杯
50%
500
350
1.429
715杯
45%
450
300
1.500
750杯
40%
400
250
1.600
800杯
35%
350
200
1.750
875杯
30%
300
150
2.000
1000杯
25%
250
100
2.500
1250杯
20%
200
50
4.000
2000杯
15%
150
0
―
不可
10%
100
-50
―
不可
なぜ、ここまで差がつくのか?
答えはシンプルです。 お店の負担額(150円)は、売上からではなく「粗利」から直接引かれるからです。
ケース1では、もともと600円あった利益から150円引かれるので、まだ450円の利益が残ります。
ケース2では、もともと200円しかなかった利益から150円引かれるため、50円の利益しか残りません。
もともとの利益が少ない商品ほど、割引によるダメージは致命的になるのです。
まとめ:割引販売する前に、必ずやるべきこと
割引販売やキャンペーン販売は、新規顧客の獲得やお店の認知度アップに繋がる強力なツールです。
しかし、その甘い誘惑に乗る前に、ぜひ一度立ち止まってください。
1.自社の商品の「粗利率」を正確に把握する
まずは、自分の武器(商品)がどれくらいの利益を生む力を持っているのかを知ることがスタートです
「〇〇原価報告書」が存在する業種は、この数字を、把握する時は注意が必要です
2.キャンペーン後の「1商品あたりの利益」を計算する
「売上がいくらになるか」ではなく、「利益がいくら残るか」を必ずシミュレーションしましょう
大切なのは「売上」ではなく「利益」です
P/L(損益計算書)の「売上」と「利益」しか見ていない経営は非常に危険です
値下げは「賭け」ではなく「戦略」と考えましょう
3.利益が減ってでも達成したい「目的」を考える
「今回は赤字でも、新規顧客を増やしてリピートに繋げるのが目的だ」というように、
利益以外の目的が明確なら、戦略的な値下げもアリです
根拠のない、感覚基準での値下げに踏み切るのは、本当に危険です
この記事が、あなたの大切な会社やお店を守る一助となれば幸いです。
「かわいいだけじゃダメですか?」も戦略なのか?
2025.08.29
先日に続き第2弾として、今日は社長や経営者の生命保険は
なぜ法人契約だけでは不十分なのか?を解説します。
AI要約(約1分で読める)
法人契約だけでは不十分な理由
法人契約=会社を守る資金、個人契約=家族を守る資金。
法人契約の保険金は一旦会社の資産となり、遺族に渡すには決議や規定が必要。経営状況や株主の意向で制約が出る可能性もある。
一方、個人契約なら受取人(家族)が直接受け取り、生活費・教育資金を速やかに確保できる。
個人契約の3つの役割
遺族の生活保障
受取人が直接受け取り、スピーディかつ確実に生活費を確保できる。
円滑な相続
相続税の非課税枠(500万円×法定相続人)を活用でき、遺産分割協議の対象外。争族対策や納税資金準備に有効。
老後資金準備
個人年金保険や終身保険を通じてセカンドライフの資金を積み立てられる。
法人・個人の組み合わせ例
創業期(30〜40代、借入多・子供小さい)
法人:定期保険で借入返済・運転資金を確保
個人:収入保障保険や学資保険で家族の生活・教育を守る
安定期(50代以降、子供自立・承継準備)
法人:退職金準備や承継資金として返戻金のある保険を活用
個人:終身保険で納税資金・遺産分割対策、年金保険で老後資金
まとめ
法人保険=事業保障、個人保険=生活保障・資産承継。
両輪としてバランス良く設計することが、社長・会社・家族を守るカギ。
専門性が求められるため、信頼できる代理店や税理士への相談が必須。
👉 結論:「会社を守る器」と「家族を守る器」は別物。二刀流の設計こそ、社長の責任ある優しさ。
本文
第2章:社長個人の生命保険 - なぜ法人契約だけでは不十分なのか?
「法人で数億円の保険に入っているから、個人では備える必要はない」と考えるのは早計です。
なぜなら、結論から言うと、
法人契約は会社を守るための資金、個人契約は家族を守るための資金だからです。
同じ「死亡時の備え」でも、保険金の受取人・税制・入金スピード・使途がまったく異なるため、
法人契約だけでは家族の生活防衛が穴あきになりやすいのです。
法人契約の生命保険の保険金は一部の生命保険を除き、一度会社の資産となり、
そこからご遺族に渡すには「死亡退職金」などの形で会社の決議を経て
もしくは、会社の定める規定により支払われる必要があります。
会社の経営状況や財務の状態、他の株主の意向によっては、
ご遺族が望む金額を、望むタイミングで受け取れない可能性があるのです。
そこで重要になるのが、社長個人で契約する生命保険です。
個人契約でしか果たせない3つの役割
1. ご遺族の生活を直接守る
個人契約の保険金は、指定された受取人(配偶者やお子様など)が直接受け取ることができます。
会社の経営状況に関わらず、ご遺族の当面の生活費や教育資金などを確実に遺すことができます。
また、直接遺族が保険金を受け取るため、規定や支給額、税制などを加味して
支給額を判断する法人契約の生命保険に比べ、受取までのスピードが速い。
2. スムーズな相続を実現する
生命保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象ですが、
保険金全体に対しては「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。
注意 (保険金を複数人で受け取った場合の計算は別となります。今回は割愛)
また、受取人を指定でき、遺産分割協議の対象外となり、
特定の家族に確実に資産を遺す「争族対策」などとしても有効です。
よって、相続人の納税資金の準備にも役立てることができます。
3. ご自身の老後資金を準備する
会社の退職金とは別に、個人年金保険や終身保険などを活用して、
ご自身のセカンドライフのための資金を計画的に準備することができます。
第3章:【実践編】法人と個人のベストな組み合わせ例
会社のステージと社長のライフプランによって、最適な保険の組み合わせは変わります。
年代別に、一般的に考えられる例を書きます。
ケース1:創業期の30代~40代の社長(借入金が多く、お子様が小さい)
法人契約:
借入金の返済(法人税を考慮した金額)と当面の運転資金をカバーするため、
保険料が割安な定期保険や逓減定期保険で大きな事業保障を確保することを優先
個人契約:
ご自身の万が一の際に、残されたご家族が生活に困らないよう、
収入保障保険で生活費を、学資保険や終身保険などで教育資金を準備
ケース2:安定期の50代以上の社長(子供が自立 利益が安定し、事業承継を検討中)
法人契約:
事業保障に加え、役員退職金の準備として、解約返戻金のある定期保険や終身保険などを活用
将来の事業承継に必要な資金準備も視野に入れる
個人契約:
自社株など相続税の納税資金や、遺産分割対策として終身保険に加入
ご自身の老後資金として個人年金保険の検討も始める。
まとめ
法人契約と個人契約の生命保険は、守るべき対象が異なる、車の両輪のような存在です。
法人保険: 会社と従業員を守る「事業保障」
個人保険: 残されたご家族を守る「生活保障」と「資産承継」
それぞれの目的を明確にし、自社の状況とご自身のライフプランに合わせて適切に組み合わせることが、
「社長と会社」そして「大切なご家族の未来」を守るための鍵となります。
保険や税務は非常に専門的な知識が求められる分野です。
この記事をきっかけに、一度、信頼できる専門家(保険代理店や顧問税理士)にご相談の上、
現在の保険ポートフォリオが最適かどうかを確認してみてはいかがでしょうか。
会社を守る器と、家族を守る器は別物。
二刀流の設計で、事業も生活も止めない。これが、社長の「責任ある優しさ」です。
2025.08.28
数あるブログの中から、私のブログへの訪問、有難うございます。
地元函館や北海道はもちろん、
「お金に困まらない経営をしたいあなたに届け」
その想いで、一生懸命書き続けます。
2分で読めるAI要約
大前提(合言葉)
目的 → 金額 → 商品 → 税務(この順番を崩さない)
保険は手段。まず「何のために・いくら必要か」を数値化し、その後に商品・税務を当てはめる。
“お付き合い”で契約先を選ぶのは危険(とくに法人)。金額設定ミス/受取人設計ミス/税務理解不足は、ムダ契約・資金繰り悪化に直結。
法人契約と個人契約は目的も役割も別物として設計する。
第1章:法人契約の生命保険 ― 目的と正しい金額設定
法人契約の主目的(3つ)
事業保障・運転資金の確保
社長不在時の信用低下・借入一括返済リスク・売上減少に備える資金を確保。
役員退職慰労金の準備
将来の大口支出(退職金)を計画的に積み立て。商品によっては税務メリットも。
事業承継対策
自社株の買い取り資金、相続税の納税資金を準備。
※自社株評価や後継者選定・手続き確認などの事前整備が必須。誤ると多額の負債承継リスク。
必要保障額の考え方
【内訳】
A. 死亡退職金・弔慰金(規程:最終月額報酬×在任年数×功績倍率 など)
B. 借入返済資金(税引後で足りる額)
法人受取の保険金には法人税が課税。借入残高そのままでは不足。
⇒ 設定式:借入残高 ÷(1 − 実効税率)
例:残高1億円、税率30% → 1億 ÷ 0.7 = 約1.43億円
C. 当面の運転資金(目安:月商3〜6か月分、または固定費6か月分)
D. 会社の自己資金(即時に使える現預金等。不動産など換金困難資産は除外)
総額式:
必要保障額 =(A + B(税考慮後)+ C)− D
運用上の注意
会社は変化する。成長・借入増減に応じて定期見直しが不可欠。
多くの契約は請求・支払いに手続き要件がある。整備不足は支給遅延や不足の原因。
事業承継・相続はプラスもマイナスも承継。慎重に。
本文
生命保険を選ぶ際の「大前提」
合言葉:目的 → 金額 → 商品 → 税務(順番を逆にしない)
保険は「手段」まず何のために、いくら必要かを数字で決め、その後に商品と税務を当てはめます。
また、残念なことですが「保険募集人」が持つ知識レベルには大きな差があります。
「お付き合い」を保険募集人や契約の判断基準とするのは法人契約の場合
最悪「会社の生死」を「お付き合い」に任せるのと同じことと言えます。
実際に現場では「保険金額の設定ミス」「契約者や保険金受取人の設定ミス」
「初歩的な税務知識を基にした保険販売による財務の棄損」など
想像をはるかに超える数の、実態やニーズに合っていない生命保険契約が存在しています。
つまり、この大前提を外すと、ムダ契約・資金繰り悪化・受取人設計ミスに直結することになります。
また、「法人契約」と「個人契約」とでは、その「目的」も「はたすべき役割も」異なります。
全くの別物として考える必要があります。
では、はじめに「法人契約」の生命保険から見ていきましょう。
第1章:法人契約の生命保険 - その目的と正しい保険金額の設定方法
法人で契約する生命保険は、社長個人やその家族のためではなく、
あくまで「会社を守るため」のものです。主な目的は以下の3つに大別されます。
1. 事業保障や運転資金の確保
社長に万が一のことがあった場合、会社の信用は大きく揺らぎます。
金融機関からの一括返済を求められたり、取引先との関係が悪化したりするリスクも考えられます。
こうした事態に備え、会社を存続させるための資金を確保します。
また、中小企業の場合、社長の存在は売上の減少に直結するリスクが
少なからず存在します。そのような事態を見据えた資金確保が必要です。
2. 役員退職慰労金の準備
役員の退職金を計画的に準備するための資金です。
保険を活用することで、将来の大きな支出に備えつつ、
保険の種類によっては税務上のメリットを得られる場合があります。
3. 事業承継対策
後継者が自社株を買い取るための資金や、相続に伴う納税資金などを準備します。
また、生命保険の活用の前に「自社株対策」「次期経営者の選定と育成」
「現社長の死亡に伴う、新社長選任の手続き方法の確認」など
しっかりと準備しておく必要があります。
このように複数の条件が整わなければ、生命保険の保険金の請求などが
迅速にできないようになっている契約がほとんどですので注意が必要です。
さらに最悪、1つ手続きを間違えただけで「多額の借金」を背負うことにもなりかねません。
事業承継や相続は基本的に「プラスだけ」を引き継ぐものではなく
「マイナス」も引き継ぐものと考え、慎重に対処する必要があります。
正しい保険金額の算出方法
では、具体的にどれくらいの保険金があれば会社を守れるのでしょうか?
「事業保障資金」を例に、必要な保障額の目安を計算してみましょう。
【事業保障に必要な資金の内訳】
A. 死亡退職金・弔慰金
役員退職慰労金規程に基づきます。(例:最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率)
既定がない場合などは、議事録の作成など手間が増えます。
B. 借入金の返済資金
社長に万が一のことがあった際、金融機関からの借入金を返済するための資金です。
ここで最も注意すべき点は、法人が受け取る死亡保険金には法人税が課税されるということです。
したがって、借入金の残高と同額の保険金を用意するだけでは、
納税後に資金が不足し、完済できなくなってしまいます。
税金を支払った後に、借入金を全額返済できるだけの資金が手元に残るように、
以下の計算式で保険金額を設定する必要があります。
計算式と具体例: 借入金残高1億円、法人税の実効税率30%の場合
1億円÷(1-0.3)=1億4300万円
となり、約1億4300万円の保険金が必要となります
C. 当面の運転資金
売上が回復するまでの運転資金。一般的に月商の3〜6ヶ月分
もしくは、固定費の6か月分を目安にしましょう
D. 会社の自己資金
会社が保有する現金・預金など、すぐに使える資金
すぐに現金化できる、商品や設備などを含める場合もあります。
不動産等、すぐには現金化できない資産は勘案してはいけません。
【必要保障額の計算式】
必要保障額=(A+B(税金考慮後の金額)+C)−D
この計算式を基に、自社の財務状況を当てはめてみてください。
また、会社は生き物です。成長もしますし、
それに伴い借入金が変動するのが当たり前です。
保障額は適宜見直すことが非常に重要です。
長くなりましたので次回
『社長個人の生命保険設計:家族と会社を同時に守る方法』と題して
お届けします。