#損益分岐点売上高 に関連するブログ
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「失敗を恐れる心の正体~損失回避の法則を味方につける経営戦略~」
2025.06.06
いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にする」
そのために、一生懸命書き続けます。
今朝のテレビで一瞬だったのですが
こんなことを相談している小学生がいました。
「失敗すると、それが気になり集中できない」
「え!小学生が!」私はショックを受けました。
同時に、違うかもしれませんが
あの子は失敗するたびに、周りの大人に
「なぜ、失敗したのか」みたいな言葉を
幼いころから投げかけられていたのかなと思い
とても、残念に思いました。
(個人の勝手な思いです)
もし、失敗という事実は受け止め
チャレンジした過程を褒めていたら
「うまくいかなかったね、残念。
でも、このチャレンジをしたあなたは
すごいと思うよ」
こう語りかけていたら
きっと、あの子はそんな質問しないだろうな~と
勝手に考えてしまいました。
今日のブログは、その想いから生まれ出たものです。
振り返ってみると、私自身も含め
「それ、アカンやろー」という言葉を発しているなと思い
自戒の念も含めて書いてみました。
前段からは想像もつかない程
ビジネス寄りの内容です。
「もし失敗したらどうしよう」
新しい挑戦を前に足が止まるとき、
あなたの頭に浮かぶのは成功のイメージよりも、
失敗して失うかもしれない時間やお金ではないでしょうか。
これは性格の弱さではなく、人類に共通する心理的傾向です。
行動経済学者ダニエル・カーネマンと
エイモス・トヴェルスキーが提唱した
プロスペクト理論によれば、
人は利益よりも損失を約2~2.5倍強く感じ取ると言われています。
この現象を「損失回避の法則(Loss Aversion)」と呼びます。
ビジネスの世界でも、この法則に則ってしまい
チャンスを逸することが少なくありません。
申し訳ないのですが、行政のやることは
私が見ている限り「ほぼ100%」、この法則にハマります。
「仕方ない」と言えばそれまでですが
あらゆる世界の概念が急速に変わっている今
行政だけが、「以前のまま」でいいわけはありません。
特に、衰退が激しい地方都市の自治体においては
「損失回避の法則」を勇気をもって打ち破らなければ
また、そのような文化を育成しなければ
衰退の速度が増し、手遅れとなると思われます。
(そうです。私の住んでる街「函館」のことを
言っているのです)
では、「何をどうすればいいのか」ですが
ブログを読み進めていってもらえれば
そのヒントが書いてあります。
1. 数字で味わう損失の痛み
あなたに二つの選択肢があるとします。
A:確実に1万円もらえる
B:50%の確率で2万円もらえるが、50%の確率で0円
多くの人はAを選びます。
Bの期待値は1万円で同じにもかかわらず、
「もらえない」リスクを避けたいからです。
ところが場面を「損失」に変えると判断は逆転します。
C:確実に1万円失う
D:50%の確率で2万円失うが、50%の確率で0円
今度はDを選ぶ人が増えます。
確実な損失を避けるために、
ギャンブル的な選択に手を伸ばすのです。
利益と損失で意思決定の軸が入れ替わる典型例と言えます。
2.ビジネス現場に潜む損失回避
損失回避は会議室でもコンビニのレジ前でも姿を現します。
導入決定が遅れる
新しい商品の市場への導入は
導入効果より「売れなかったら大損」という
不安で棚上げされがちです。
もちろん、限界利益など
採算をとるために最低限必要な売上高や売上個数を
事前に把握するためにも「管理会計」の導入は
必要不可欠ですが、
そのような「数字の裏付け」があっても
「予定通りにいかなかった場合」つまりは
「損失」のことが頭の中を支配し
なかなか前に進めないことが少なくありません。
値決め戦略が保守的になる
価格を上げれば利益率向上が見込めても、
「顧客離れ」という損失が怖くて踏み切れない。
これも、多くの中小企業で起きている現象です。
大手と言われるところは、消費者からすると
「問答無用」状態で値上げし
確実に利益を確保しています。
そうしなければ、顧客へのサービスや
商品提供ができなくなるからです。
そうするかどうかは、個別の判断ですが
今は値上げし、原価等が下がったら
値下げをし顧客に喜んでいただく。
こうやって、世の中に合わせ、フレキシブルに
値決めをしていくことが、必要なのかもしれません。
マーケティング的にいうのなら「今だけ」が効く
「本日終了」「残り3席」といった表現は、
得を逃す=損失と感じさせ、購買率を高めます。
昔で言えば、万年「閉店セール」ですね。
(これ知ってる人は、それなりの年齢の方だけですね)
また、日付や席数や個数など
目に見えるものだけではなく
最近では「特別な経験」など
形のないものでも、購買意欲を高める手法が
使われています。
やはり「限定」や「あなただけに」は
心揺さぶられますよね。
「このチャンスを逸しては損だ」という心理を
ついているわけです。
3.損失回避を乗り越える4つのステップ
1.リスクを数字で「見える化」する
感情ではなくデータで判断する癖をつけましょう。
その為にも、やはり「管理会計」の導入は
企業経営には必須です。
例を書きます。
決算書の「損益計算書」を思い浮かべてください。
新商品のお菓子を発売したとしましょう。
今回は、わかりやすいように
今回発売する「お菓子のみ」しか扱っていない会社とします。
売上600万-製造原価300万=利益300万
つい、このように考えてしまいませんか?
製造し、すぐに市場に投入し、一瞬で完売なら
ほぼ、この計算で間違いありません。
では、完売まで3か月かかったらどうなるでしょうか?
実は利益がグッと下がります。
なぜなら、製造していなくても原価が増えるからです。
何が増えるのか?
そうです。人件費です。
たとえ工場が止まっていても、工場で働く人の
給料は、発生し続けます。
これが、損益計算書(P/L)経営の落とし穴なのです。
このような計算ミスを防ぐためにも
会社経営には「管理会計」が必須なのです。
2.スモールスタート
大きな変化ではなく、少しずつ試し
失敗コストを最小化し
心理的ハードルを下げることが大切です。
いきなりの設備投資や人員増強は避け
「失敗しても痛くない」もしくは
「失敗しても会社の経営に支障はない」程度から
スタートしましょう。
では、「痛くない」や「経営に支障がない」投資金額て
どれくらいなのでしょう?
ここでも、「感情」による判断をしてはいけません。
やはり「数字」による判断が必要です。
具体的には、というより論理的には
今度は「貸借対照表」(B/S)の数字で判断します。
どの数字か?
そうです。一番右下の「繰越利益剰余金」です。
この金額の範囲内なら、たとえ新事業が失敗しても
会社が「債務超過」などに陥ることはありません。
(ただし、あくまで会計上のお金ですから
いわゆる「現金」とは違います)
3.損失の上限を設計
「最悪でもここでやめる」という出口戦略を決めましょう。
つまりは「引き際」をはじめから設定しておくのです。
ここでもつい「損したくない」「損を取り返した」
「せめて投資額だけでも、回収したい」という
損失回避の法則が働きます。
しかし、その判断もやはり「感情」による判断と言えます。
やはりここでも「1000万損失を出したら撤退」など
数字による明確な意思決定が大切です。
撤退の金額の目安は、先ほど書いた通りです。
4.学習コストという投資思考
失敗=損ではなく、
次の成功確率を上げるデータ取得と捉えましょう。
この考え方を腹落ちさせると
理論上は世の中から失敗はなくなります。
トライ&エラーを恐れず繰り返し
知識資産を蓄積しましょう。
4.現状維持バイアスとの関係
損失回避は「現状維持が一番安全」
という誤解を強化します。
しかし環境が変わり続ける現代において、
現状維持は実質的な後退です。
短期的な安心と引き換えに、
中長期的な機会損失を抱え込むリスクに
気づく必要があります。
これが冒頭に書いた「行政機関」の陥っている穴の正体です。
民間企業である私たちは、
是非とも「現状維持バイアス」の居心地の良さに打ち勝ち
前進し続けていきましょう。
5.最後に──恐怖の正体を数字で照らす
「失敗したらどうしよう」という声が聞こえたら、
それは損失回避の法則が働いている証拠です。
その声を無視するのではなく、
認識し、分析し、そして活用しましょう。
リスクを数値化し、段階的に進み、
学習機会として捉える。
そして時には、損失回避の力を借りて、
より良い習慣や仕組みを作る。
私たちの脳に組み込まれた
この古代からの警報システムを理解することで、
より賢明な選択ができるようになるのです。
「恐怖に支配されるのではなく、恐怖と共に前進する。」
それが、現代を生きる私たちに求められる知恵なのかもしれません。
「真っ黒だけど、いつもの私です」
みなさん、熱中症には、気を付けて下さいね~
-
『収支分岐点と損益分岐点の実務活用法 〜現金と利益の視点から見る経営戦略〜』
2025.01.27
いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にしたい」
そのために、一生懸命書き続けます。
では、スタート!
前回のブログで「収支分岐点売上高」と「損益分岐点売上高」の
簡単な出し方について書きました。
https://sato-insurance.jp/blog/278/
今回は、計算した数字を、
実際の経営にどのように活かすかについて
書いていこうと思います。
「収支分岐点売上高」と「損益分岐点売上高」の
話の前に、よくある話をします。
「利益」と「現金」の違いです。
わかっている方は、飛ばして下さい。
よく経営者の口から出てくる言葉に
「利益は出ているんだけど、思ったように現金が増えない」
があります。
いわゆる「稼いだ金は、どこに行った?」です。
一言で言えば「利益と現金は違う」となってしまいますが
わかりやすく違いを書きます。
「利益」とは
企業が一定期間(多くは1年間)に得た収入(多くは売上)から、
経費や費用(変動費や固定費)を差し引いた残りの金額です。
これは、企業の経済活動の成果を示す指標であり、
損益計算書に書いてある数字です。
ここで大切なのは、利益は「金額」であり「指標」である
ということです。
言ってみれば「計算上の数字」ということです。
「現金」とは
現金は、企業が手元に持っている実際のお金を指します。
これは、銀行口座にある預金や、手元にある現金など、
すぐに使用できる資産です。
現金は、企業の流動性を示す重要な指標です。
もっと平たく言うと
格闘ゲームでいう「HP」つまり「残りの体力」のことです。
ゲームでも、HPが0になったらゲームオーバーですよね。
それと同じです。
ちなみに、「利益」が0になっても、
一般的な企業は、ゲームオーバーになりませんよね。
もっと言えば赤字になっても、ゲームオーバーとは
ならない方が多いはずです。
それは、実際の体力(HP)ではない証拠です。
ここだけ見ても、利益と現金は違うことがわかると思います。
この概念を踏まえた上で、読んでみてください。
1. 収支分岐点売上高:キャッシュフローの視点
収支分岐点売上高は、
企業の収入と支出が均衡する売上高を示します。
つまり、キャッシュの流入と流出が同額となり、
収支が「トントン」になっている状態を指します。
「トントン」と言えば聞こえはいいですが
実際の会社で言えば「顔が水面ギリギリ」
と言う方が正確だと思います。
すなわち「収支分岐点売上高」を下回った売上しか
上げれなかった場合「溺れる」ことになります。
特徴として
・ キャッシュフローに着目した数字
・ 資金ショートのリスクを把握できる
・ 短期的な経営判断に有効
・売上げ目標数字を立てる時に有効
実務での活用例
1. 経営戦略の策定
収支損益分岐点を把握することで、
企業はどの程度の売上が必要かを明確に理解できます。
これにより、価格設定や販売戦略を見直すことができます。
2. 投資判断
新しいプロジェクトや製品の導入を検討する際、
収支損益分岐点を計算することで、
そのプロジェクトが現金を生むかどうかを判断できます。
3. パフォーマンスのモニタリング
企業や商品のパフォーマンスをモニタリングできます。
原材料などが値上がりしている昨今
「本当の利益」言い換えると「現金」を生み出している
商品かどうかなどを知ることができます。
市場環境やコスト構造が変化が激しい今
この数値を把握することで迅速な対応が可能になります。
4. 価格戦略の見直し
製品やサービスの価格戦略を見直すことができます。
競合他社の価格や市場の需要に応じて、
価格を調整することで、利益を確保することが可能です。
2. 損益分岐点売上高:利益の視点
損益分岐点売上高は、売上高から費用を差し引いた
利益がゼロになる売上高を示します。
つまり、この売上高を超えると利益が生まれ、
下回ると損失が出るという、企業の収益力を示す指標です。
特徴として
・ 利益に着目した数字である
・ 企業の収益構造を把握できる
・ 長期的な経営戦略に有効である
実務での活用例
1. 経営計画の策定
損益分岐点を把握することで、企業は売上目標を設定しやすくなります。
例えば、固定費や変動費を考慮し、
どの程度の売上が必要かを明確にすることで、
現実的な経営計画を立てることができます。
これにより、資金繰りや投資計画も立てやすくなります。
2. 価格設定の戦略
損益分岐点を理解することで、
製品やサービスの価格設定においても
戦略的な判断が可能になります。
例えば、価格を「10円」引き上げるた場合に
どれくらいの利益が生まれるのかや、
競合他社との価格競争の際にも、
どこまでなら下げても「利益」がでるのかなどを
計算できます。
3. コストの管理
損益分岐点を基に、固定費や変動費の管理が行いやすくなります。
コスト削減のための施策を講じる際、
「どの費用を削減」すれば損益分岐点を下げられるかを
シミュレーションすることができます。
これにより、効果的で根拠を持った経費削減が可能になり
企業の成長の妨げになるような経費削減を回避することが可能になります。
4. 売上のシミュレーション
損益分岐点を用いて、異なる売上シナリオを
シミュレーションすることができます。
例えば、売上が10%増加した場合や、逆に5%減少した場合や
仕入れ値を@1円下げた場合、家賃を10%下げたらなど
様々な場面を想定した利益状況を予測が可能になります。
5. 投資判断
新規事業や新製品の導入を検討する際、
損益分岐点を計算することで、
その事業がどの程度の売上を必要とするかを把握できます。
これにより、投資の妥当性を評価し、
投資リスクを最小限に抑えることができます。
6. その他
現在の売上高と損益分岐点売上高を比べることにより
あとどれくらいまで売上が下がっても赤字にならないかや
企業の安全性を示す数値の1つとして「安全余裕率」も
はじき出すことができます。
これらは、企業の営業活動、ようは「売上高」が
赤字になるまでどの程度余裕があるかを示しています。
(利益率を変えない。目標売上高達成のための
値引き販売はしない前提の話です)
また、「目標利益」を達成するための売上高の設定も可能です。
長期の視点で計画を立てる際、
現金の出入りは、不確実性が高いと言えますので
中・長期の計画策定には、こちらの方が適していると言えます。
収支分岐点と損益分岐点を活用した経営戦略
収支分岐点と損益分岐点は、
それぞれ単独で活用するだけでなく、
組み合わせて分析することで、より効果的な経営判断が可能になります。
明確な違いは「現金ベース」か「利益ベース」なのかであり
双方とも、実際の活用方法に大きな差異はみつかりません。
よって例えば、新規事業を立ち上げる場合、
損益分岐点分析で長期的な収益性を評価すると同時に、
収支分岐点分析で短期的な資金繰りの
安全性も確認する必要があります。
また、既存事業においても、
損益分岐点を下げるためのコスト削減や販売価格の見直しを行いながら、
収支分岐点を意識した資金管理を行うことで、
安定した経営基盤を築くことができます。
それぞれの指標の特徴を理解し、
適切に活用することで、企業は収益性と安全性を
両立させた経営を実現することができます。
兄弟(本物の兄弟です)で1つの「目標?」見つめてます
2025.06.06
いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にする」
そのために、一生懸命書き続けます。
今朝のテレビで一瞬だったのですが
こんなことを相談している小学生がいました。
「失敗すると、それが気になり集中できない」
「え!小学生が!」私はショックを受けました。
同時に、違うかもしれませんが
あの子は失敗するたびに、周りの大人に
「なぜ、失敗したのか」みたいな言葉を
幼いころから投げかけられていたのかなと思い
とても、残念に思いました。
(個人の勝手な思いです)
もし、失敗という事実は受け止め
チャレンジした過程を褒めていたら
「うまくいかなかったね、残念。
でも、このチャレンジをしたあなたは
すごいと思うよ」
こう語りかけていたら
きっと、あの子はそんな質問しないだろうな~と
勝手に考えてしまいました。
今日のブログは、その想いから生まれ出たものです。
振り返ってみると、私自身も含め
「それ、アカンやろー」という言葉を発しているなと思い
自戒の念も含めて書いてみました。
前段からは想像もつかない程
ビジネス寄りの内容です。
「もし失敗したらどうしよう」
新しい挑戦を前に足が止まるとき、
あなたの頭に浮かぶのは成功のイメージよりも、
失敗して失うかもしれない時間やお金ではないでしょうか。
これは性格の弱さではなく、人類に共通する心理的傾向です。
行動経済学者ダニエル・カーネマンと
エイモス・トヴェルスキーが提唱した
プロスペクト理論によれば、
人は利益よりも損失を約2~2.5倍強く感じ取ると言われています。
この現象を「損失回避の法則(Loss Aversion)」と呼びます。
ビジネスの世界でも、この法則に則ってしまい
チャンスを逸することが少なくありません。
申し訳ないのですが、行政のやることは
私が見ている限り「ほぼ100%」、この法則にハマります。
「仕方ない」と言えばそれまでですが
あらゆる世界の概念が急速に変わっている今
行政だけが、「以前のまま」でいいわけはありません。
特に、衰退が激しい地方都市の自治体においては
「損失回避の法則」を勇気をもって打ち破らなければ
また、そのような文化を育成しなければ
衰退の速度が増し、手遅れとなると思われます。
(そうです。私の住んでる街「函館」のことを
言っているのです)
では、「何をどうすればいいのか」ですが
ブログを読み進めていってもらえれば
そのヒントが書いてあります。
1. 数字で味わう損失の痛み
あなたに二つの選択肢があるとします。
A:確実に1万円もらえる
B:50%の確率で2万円もらえるが、50%の確率で0円
多くの人はAを選びます。
Bの期待値は1万円で同じにもかかわらず、
「もらえない」リスクを避けたいからです。
ところが場面を「損失」に変えると判断は逆転します。
C:確実に1万円失う
D:50%の確率で2万円失うが、50%の確率で0円
今度はDを選ぶ人が増えます。
確実な損失を避けるために、
ギャンブル的な選択に手を伸ばすのです。
利益と損失で意思決定の軸が入れ替わる典型例と言えます。
2.ビジネス現場に潜む損失回避
損失回避は会議室でもコンビニのレジ前でも姿を現します。
導入決定が遅れる
新しい商品の市場への導入は
導入効果より「売れなかったら大損」という
不安で棚上げされがちです。
もちろん、限界利益など
採算をとるために最低限必要な売上高や売上個数を
事前に把握するためにも「管理会計」の導入は
必要不可欠ですが、
そのような「数字の裏付け」があっても
「予定通りにいかなかった場合」つまりは
「損失」のことが頭の中を支配し
なかなか前に進めないことが少なくありません。
値決め戦略が保守的になる
価格を上げれば利益率向上が見込めても、
「顧客離れ」という損失が怖くて踏み切れない。
これも、多くの中小企業で起きている現象です。
大手と言われるところは、消費者からすると
「問答無用」状態で値上げし
確実に利益を確保しています。
そうしなければ、顧客へのサービスや
商品提供ができなくなるからです。
そうするかどうかは、個別の判断ですが
今は値上げし、原価等が下がったら
値下げをし顧客に喜んでいただく。
こうやって、世の中に合わせ、フレキシブルに
値決めをしていくことが、必要なのかもしれません。
マーケティング的にいうのなら「今だけ」が効く
「本日終了」「残り3席」といった表現は、
得を逃す=損失と感じさせ、購買率を高めます。
昔で言えば、万年「閉店セール」ですね。
(これ知ってる人は、それなりの年齢の方だけですね)
また、日付や席数や個数など
目に見えるものだけではなく
最近では「特別な経験」など
形のないものでも、購買意欲を高める手法が
使われています。
やはり「限定」や「あなただけに」は
心揺さぶられますよね。
「このチャンスを逸しては損だ」という心理を
ついているわけです。
3.損失回避を乗り越える4つのステップ
1.リスクを数字で「見える化」する
感情ではなくデータで判断する癖をつけましょう。
その為にも、やはり「管理会計」の導入は
企業経営には必須です。
例を書きます。
決算書の「損益計算書」を思い浮かべてください。
新商品のお菓子を発売したとしましょう。
今回は、わかりやすいように
今回発売する「お菓子のみ」しか扱っていない会社とします。
売上600万-製造原価300万=利益300万
つい、このように考えてしまいませんか?
製造し、すぐに市場に投入し、一瞬で完売なら
ほぼ、この計算で間違いありません。
では、完売まで3か月かかったらどうなるでしょうか?
実は利益がグッと下がります。
なぜなら、製造していなくても原価が増えるからです。
何が増えるのか?
そうです。人件費です。
たとえ工場が止まっていても、工場で働く人の
給料は、発生し続けます。
これが、損益計算書(P/L)経営の落とし穴なのです。
このような計算ミスを防ぐためにも
会社経営には「管理会計」が必須なのです。
2.スモールスタート
大きな変化ではなく、少しずつ試し
失敗コストを最小化し
心理的ハードルを下げることが大切です。
いきなりの設備投資や人員増強は避け
「失敗しても痛くない」もしくは
「失敗しても会社の経営に支障はない」程度から
スタートしましょう。
では、「痛くない」や「経営に支障がない」投資金額て
どれくらいなのでしょう?
ここでも、「感情」による判断をしてはいけません。
やはり「数字」による判断が必要です。
具体的には、というより論理的には
今度は「貸借対照表」(B/S)の数字で判断します。
どの数字か?
そうです。一番右下の「繰越利益剰余金」です。
この金額の範囲内なら、たとえ新事業が失敗しても
会社が「債務超過」などに陥ることはありません。
(ただし、あくまで会計上のお金ですから
いわゆる「現金」とは違います)
3.損失の上限を設計
「最悪でもここでやめる」という出口戦略を決めましょう。
つまりは「引き際」をはじめから設定しておくのです。
ここでもつい「損したくない」「損を取り返した」
「せめて投資額だけでも、回収したい」という
損失回避の法則が働きます。
しかし、その判断もやはり「感情」による判断と言えます。
やはりここでも「1000万損失を出したら撤退」など
数字による明確な意思決定が大切です。
撤退の金額の目安は、先ほど書いた通りです。
4.学習コストという投資思考
失敗=損ではなく、
次の成功確率を上げるデータ取得と捉えましょう。
この考え方を腹落ちさせると
理論上は世の中から失敗はなくなります。
トライ&エラーを恐れず繰り返し
知識資産を蓄積しましょう。
4.現状維持バイアスとの関係
損失回避は「現状維持が一番安全」
という誤解を強化します。
しかし環境が変わり続ける現代において、
現状維持は実質的な後退です。
短期的な安心と引き換えに、
中長期的な機会損失を抱え込むリスクに
気づく必要があります。
これが冒頭に書いた「行政機関」の陥っている穴の正体です。
民間企業である私たちは、
是非とも「現状維持バイアス」の居心地の良さに打ち勝ち
前進し続けていきましょう。
5.最後に──恐怖の正体を数字で照らす
「失敗したらどうしよう」という声が聞こえたら、
それは損失回避の法則が働いている証拠です。
その声を無視するのではなく、
認識し、分析し、そして活用しましょう。
リスクを数値化し、段階的に進み、
学習機会として捉える。
そして時には、損失回避の力を借りて、
より良い習慣や仕組みを作る。
私たちの脳に組み込まれた
この古代からの警報システムを理解することで、
より賢明な選択ができるようになるのです。
「恐怖に支配されるのではなく、恐怖と共に前進する。」
それが、現代を生きる私たちに求められる知恵なのかもしれません。
「真っ黒だけど、いつもの私です」
みなさん、熱中症には、気を付けて下さいね~
2025.01.27
いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にしたい」
そのために、一生懸命書き続けます。
では、スタート!
前回のブログで「収支分岐点売上高」と「損益分岐点売上高」の
簡単な出し方について書きました。
https://sato-insurance.jp/blog/278/
今回は、計算した数字を、
実際の経営にどのように活かすかについて
書いていこうと思います。
「収支分岐点売上高」と「損益分岐点売上高」の
話の前に、よくある話をします。
「利益」と「現金」の違いです。
わかっている方は、飛ばして下さい。
よく経営者の口から出てくる言葉に
「利益は出ているんだけど、思ったように現金が増えない」
があります。
いわゆる「稼いだ金は、どこに行った?」です。
一言で言えば「利益と現金は違う」となってしまいますが
わかりやすく違いを書きます。
「利益」とは
企業が一定期間(多くは1年間)に得た収入(多くは売上)から、
経費や費用(変動費や固定費)を差し引いた残りの金額です。
これは、企業の経済活動の成果を示す指標であり、
損益計算書に書いてある数字です。
ここで大切なのは、利益は「金額」であり「指標」である
ということです。
言ってみれば「計算上の数字」ということです。
「現金」とは
現金は、企業が手元に持っている実際のお金を指します。
これは、銀行口座にある預金や、手元にある現金など、
すぐに使用できる資産です。
現金は、企業の流動性を示す重要な指標です。
もっと平たく言うと
格闘ゲームでいう「HP」つまり「残りの体力」のことです。
ゲームでも、HPが0になったらゲームオーバーですよね。
それと同じです。
ちなみに、「利益」が0になっても、
一般的な企業は、ゲームオーバーになりませんよね。
もっと言えば赤字になっても、ゲームオーバーとは
ならない方が多いはずです。
それは、実際の体力(HP)ではない証拠です。
ここだけ見ても、利益と現金は違うことがわかると思います。
この概念を踏まえた上で、読んでみてください。
1. 収支分岐点売上高:キャッシュフローの視点
収支分岐点売上高は、
企業の収入と支出が均衡する売上高を示します。
つまり、キャッシュの流入と流出が同額となり、
収支が「トントン」になっている状態を指します。
「トントン」と言えば聞こえはいいですが
実際の会社で言えば「顔が水面ギリギリ」
と言う方が正確だと思います。
すなわち「収支分岐点売上高」を下回った売上しか
上げれなかった場合「溺れる」ことになります。
特徴として
・ キャッシュフローに着目した数字
・ 資金ショートのリスクを把握できる
・ 短期的な経営判断に有効
・売上げ目標数字を立てる時に有効
実務での活用例
1. 経営戦略の策定
収支損益分岐点を把握することで、
企業はどの程度の売上が必要かを明確に理解できます。
これにより、価格設定や販売戦略を見直すことができます。
2. 投資判断
新しいプロジェクトや製品の導入を検討する際、
収支損益分岐点を計算することで、
そのプロジェクトが現金を生むかどうかを判断できます。
3. パフォーマンスのモニタリング
企業や商品のパフォーマンスをモニタリングできます。
原材料などが値上がりしている昨今
「本当の利益」言い換えると「現金」を生み出している
商品かどうかなどを知ることができます。
市場環境やコスト構造が変化が激しい今
この数値を把握することで迅速な対応が可能になります。
4. 価格戦略の見直し
製品やサービスの価格戦略を見直すことができます。
競合他社の価格や市場の需要に応じて、
価格を調整することで、利益を確保することが可能です。
2. 損益分岐点売上高:利益の視点
損益分岐点売上高は、売上高から費用を差し引いた
利益がゼロになる売上高を示します。
つまり、この売上高を超えると利益が生まれ、
下回ると損失が出るという、企業の収益力を示す指標です。
特徴として
・ 利益に着目した数字である
・ 企業の収益構造を把握できる
・ 長期的な経営戦略に有効である
実務での活用例
1. 経営計画の策定
損益分岐点を把握することで、企業は売上目標を設定しやすくなります。
例えば、固定費や変動費を考慮し、
どの程度の売上が必要かを明確にすることで、
現実的な経営計画を立てることができます。
これにより、資金繰りや投資計画も立てやすくなります。
2. 価格設定の戦略
損益分岐点を理解することで、
製品やサービスの価格設定においても
戦略的な判断が可能になります。
例えば、価格を「10円」引き上げるた場合に
どれくらいの利益が生まれるのかや、
競合他社との価格競争の際にも、
どこまでなら下げても「利益」がでるのかなどを
計算できます。
3. コストの管理
損益分岐点を基に、固定費や変動費の管理が行いやすくなります。
コスト削減のための施策を講じる際、
「どの費用を削減」すれば損益分岐点を下げられるかを
シミュレーションすることができます。
これにより、効果的で根拠を持った経費削減が可能になり
企業の成長の妨げになるような経費削減を回避することが可能になります。
4. 売上のシミュレーション
損益分岐点を用いて、異なる売上シナリオを
シミュレーションすることができます。
例えば、売上が10%増加した場合や、逆に5%減少した場合や
仕入れ値を@1円下げた場合、家賃を10%下げたらなど
様々な場面を想定した利益状況を予測が可能になります。
5. 投資判断
新規事業や新製品の導入を検討する際、
損益分岐点を計算することで、
その事業がどの程度の売上を必要とするかを把握できます。
これにより、投資の妥当性を評価し、
投資リスクを最小限に抑えることができます。
6. その他
現在の売上高と損益分岐点売上高を比べることにより
あとどれくらいまで売上が下がっても赤字にならないかや
企業の安全性を示す数値の1つとして「安全余裕率」も
はじき出すことができます。
これらは、企業の営業活動、ようは「売上高」が
赤字になるまでどの程度余裕があるかを示しています。
(利益率を変えない。目標売上高達成のための
値引き販売はしない前提の話です)
また、「目標利益」を達成するための売上高の設定も可能です。
長期の視点で計画を立てる際、
現金の出入りは、不確実性が高いと言えますので
中・長期の計画策定には、こちらの方が適していると言えます。
収支分岐点と損益分岐点を活用した経営戦略
収支分岐点と損益分岐点は、
それぞれ単独で活用するだけでなく、
組み合わせて分析することで、より効果的な経営判断が可能になります。
明確な違いは「現金ベース」か「利益ベース」なのかであり
双方とも、実際の活用方法に大きな差異はみつかりません。
よって例えば、新規事業を立ち上げる場合、
損益分岐点分析で長期的な収益性を評価すると同時に、
収支分岐点分析で短期的な資金繰りの
安全性も確認する必要があります。
また、既存事業においても、
損益分岐点を下げるためのコスト削減や販売価格の見直しを行いながら、
収支分岐点を意識した資金管理を行うことで、
安定した経営基盤を築くことができます。
それぞれの指標の特徴を理解し、
適切に活用することで、企業は収益性と安全性を
両立させた経営を実現することができます。
兄弟(本物の兄弟です)で1つの「目標?」見つめてます