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2026.02.16ブログ

「自分」を励ます番が来た――オリンピックの氷上で五輪の魔物が教える、自分を信じる技術

2026年ミラノ・コルティナ五輪、フィギュアスケート団体戦。競技を前に、

ペアの木原龍一選手がチームメイトにかけた言葉は、魂が震えるような「ゴールペップトーク」でした。

  「俺は本当に史上最強のメンバーだと思ってる。

13年前に団体が始まったとき、日本がこういう立場になるなんて思えなかった。

でも、みんなが積み重ねてきて、今、挑戦できるチャンスを持っている。

だから、自分たちが積み重ねた練習を信じて、絶対ポジティブにいけば、

最後の最後で、みんなが積み上げてきたものは絶対に出る。

みんなで、ぶっちぎって行こう!

絶対挑戦できる。絶対いける」

この力強い言葉に導かれるように、日本チームは一丸となり、見事「銀メダル」を掴み取りました。

言葉が持つ力が、最高の成果を引き寄せた瞬間でした。

「言葉」が牙をむくとき

しかし、オリンピックの魔物は、その後に行われた個人戦で魔物のような姿を見せます。

2年間負けなし、世界が「4回転の神」と恐れたアメリカのマリニン選手。

ショートプログラムで完璧な演技を見せながら、フリーではまさかの失速で8位に沈みました。

演技後のインタビューで、彼はこう漏らしました。

「人生で経験した思い出したくない出来事が頭の中を駆け巡り、ネガティブな思考が押し寄せた」

どんな記憶が彼を襲ったのかは分かりません。それでも、たった一つの言葉や記憶が、

トップアスリートをも一気に「ネガティブループ」へ引きずり込んでしまう。

私たちは言葉や記憶の「怖さ」を、その背中に見せつけられたのです。

「自分」を励ます番が来た

そして、あの感動的な言葉を仲間に届けた木原選手自身にも、過酷な試練が訪れます。

メダルをかけたペア競技。ショートプログラムでミスが重なり、5位発進。

演技後の氷上やキス&クライで、うつむき、自分に失望しているような彼の姿が画面に映し出されました。

私は心の中で、強くつぶやかずにはいられませんでした。

「木原選手。あなたは団体戦の前に、あんなに素敵な言葉をみんなに届けていたじゃないか。

今度は、その言葉を自分自身にかけてあげる番だよ!」

「ここまで積み重ねてきた練習は、ミス一つで消えたりしない。

あなたなら、ここからもう一度、ぶっちぎっていけるはずだ!」と。

誰もが経験している「自分いじめ」

これは木原選手だけに向けた言葉ではありません。

失敗した自分を責め、下を向いてしまう私たち一人ひとりにとって必要な「セルフペップトーク」です。

私たちは、仲間のピンチにはあんなに温かく、前向きな言葉をかけられるのに、

いざ自分がミスをした瞬間、とたんに自分を全否定し、厳しい言葉を浴びせてしまいます。

そんなときこそ、「さっきまで仲間にかけていた言葉」を、自分にもかけ直してほしいのです。

「積み上げてきたもの」を信じるという心の矢印を、もう一度自分自身に向け直すこと。

自分を突き放すのではなく、自分自身の「最強の味方」になる。

その一歩が、再び前を向いて「ぶっちぎる」ためのエネルギーになるはずです。


自分のいちばん近くにいる「応援団長」は誰か

失敗した自分を突き放すのではなく、
「一番の理解者」として、もう一度自分のそばに立ってあげる。

それは、トップアスリートだけでなく、
日々プレッシャーの中で戦う、私たち一人ひとりにとっても、明日を切り拓くための大事な技術です。

  • 仲間にかけたあの言葉を、自分にもかけ直してみる

  • 「ここまで積み重ねてきた自分」を、ちゃんと認めてあげる

  • そして、小さくてもいいから「ここからもう一度、行こう」と自分に言ってあげる

木原選手のゴールペップトークと、その後の試練は、

「誰かを励ます言葉」と「自分を励ます言葉」が、本当は同じ根っこから生まれている

そんなことを静かに教えてくれているように思います。

「やれるぞ!日本!  やれるぞ! 自分!」


追記:りくりゅうペアが見せてくれた「ぶっちぎる力」

りくりゅうペア(三浦璃来選手・木原龍一選手)、悲願の金メダル、本当におめでとうございます。

ショートプログラムを終えた時点では5位発進。
誰が見ても「ここから逆転優勝はさすがに厳しいだろう」と思うような状況から、

あのフリーの完璧な演技で頂点まで駆け上がった大逆転劇は、日本フィギュアの歴史に刻まれる瞬間でした。

試合後、木原選手はこんな趣旨の言葉を口にしています。

昨日のショートが終わった時点で、
 正直「ああ、もう終わったな」と思ったんですけど、
 (三浦)璃来がずっと支えてくれたんです」

ショートの悔しさで「終わった」と感じるほど追い込まれていた心を、
となりにいる三浦選手が、言葉や態度で支え続けていた。

そう思ってあらためてフリーの演技を見返すと、
ただの技術のすごさではなく、「二人の言葉と信頼」が氷の上に立ち上がっていたように感じられます。

もしかすると三浦選手は、こんなペップトークをかけたのかもしれません。

「大丈夫。ショートはもう終わった。
 二人で積み重ねてきたものは、あれっぽっちじゃ消えないよ」
「りくりゅうなら、ここからまだぶっちぎれる。
 一緒にやろう」

団体戦の前に、木原選手がチームに向けて放ったゴールペップトーク
それを今度は三浦選手が、パートナーである木原選手に向けて
「ペアペップトーク」(私の造語です)として返し、
二人で自分たちにもセルフペップトークをかけ直していった。

「ショートは上手くいかなかった。
 でも、ここまで積み重ねてきた練習は、あれでは消えない」
「ここからぶっちぎって行こう。二人なら、まだやれる」

ゴールペップトーク(仲間への言葉)
+ ペアペップトーク(目の前の大切な人への言葉)
+ セルフペップトーク(自分自身への言葉)。

その三つが重なったときに、「逆転の金メダル」という結果が
氷上に引き寄せられたのかもしれません。

そして、このシーンは私たちにも問いかけてきます。

  • 誰かを励ましたあの言葉を、そのまま自分に向けてい話せているだろうか
  • 目の前でうつむいている大切な人に、どんな一言をかけられるだろうか

「やれるぞ、日本!」

「やれるぞ、私たち」

「やれるぞ、自分!」

オリンピックの氷上で起きたこのドラマは、
そんな「小さくて、短い」言葉の力が、
結果を、そして未来を変えていくことを、静かに、でも力強く教えてくれているように思います。

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