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「営業利益は社長の通信簿」~社長が握る利益の源泉~
2025.11.04
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
「売上はあるのに、なぜか手元にお金が残らない」 そんな悩みを抱える経営者の方へ。
その原因は、本業の最終的な儲けを示す「営業利益」にあるかもしれません。
営業利益は、商品力(粗利)だけでなく、経費の使い方といった社長の「経営力」を映す「通信簿」です。
この数値が低いと、いくら稼いでも利益が残らない「メタボ体質」の会社になってしまいます。
改善のポイントは3つ。 ① 粗利を増やす ② 販管費(固定費)を減らす ③ お金の使い方の「質」を上げる
まずは自社の営業利益率を計算し、会社の健康状態を把握することから始めましょう。
売上を変えずに、利益を倍増させることも可能です。
本文
「今月も売上は目標達成!」「粗利も出てる!」
なのに、なぜか手元にお金が残らない。
社員の給料を払い、オフィスの家賃を払うと、自分の役員報酬すらキツい。
そんなモヤモヤを感じている経営者・次期経営者の方へ。
それはもしかすると、営業利益に原因があるかもしれません。
このシリーズでは、財務が苦手な方でも本質を理解できるよう、会計の基礎を順を追って解説しています。
第1回:総論
第2回:限界利益(受ける・やめるの判断軸)
第3回:粗利(儲かる仕組みの設計図)
第4回:営業利益(経営力の“通信簿” ←今回)
営業利益とは?「本業でいくら残ったか」を示す数字
営業利益とは、粗利から販管費を引いた残りのこと
営業利益 = 粗利(売上 − 原価) − 販管費(人件費・家賃・広告など)
「粗利」は商品やサービスの強さ
その粗利から、会社を回すための費用を全部払っても黒字が残るか?
これを示すのが営業利益です。
販管費の主な内訳は以下のようなもの:
給料や社会保険料(役員報酬・社員給与)
オフィス賃料、光熱費、通信費
広告宣伝費、交通費、外注費
つまり営業利益は、本業で稼いだ利益の「最終着地」
ここが赤字なら、売上や粗利がいくらあっても、会社としては「本業で赤字」ということです。
営業利益は「社長の通信簿」
営業利益が注目されるのは、その中身が「社長の意思決定の結果」だからです
人を何人雇うか
どこにどんなオフィスを借りるか
どれだけ広告を打つか
社長自身の給料をいくらにするか
これらの支出=販管費は、すべて社長がコントロールしているものです。
だから営業利益は、「商品力」ではなく、社長の「経営力」を表すスコアだと言われます。
粗利が出ていても、営業利益が出ていなければ、「稼ぐ力はあるが使いすぎている」=メタボ体質
数字に現れるのは、社長の「経営設計図の良し悪し」です。
あなたの会社の健康状態は?営業利益「率」でチェック
普段私は「率」より「額」を主に重視しますが
同業他社等と比較し自社のポジションを確認したいのならば「率」が便利です。
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上 × 100
これは、売上のうち何%が「本業のもうけ」として残っているかを示します。
【業種別の目安】
業種
営業利益率の平均
卸売業
約1〜3%
小売業
約2〜5%
製造業
約3〜7%
建設業
約4〜8%
サービス業など
約5〜10%以上
たとえば、売上1,000万円で営業利益が10万円なら、営業利益率は1%
これは、少しのトラブルで一気に赤字に転落する脆弱な体質です。
まずは営業利益率5%以上、目標としては10%以上を目指したいところです。
営業利益を高めるための「3つの社長の仕事」
営業利益を増やすには、たった3つの方法しかありません。
① 粗利を増やす(=稼ぐ力を強くする)
単価を上げる(値上げ・高付加価値化)
原価を下げる(仕入れ見直し・ロス削減)
儲かる商品を増やす(商品構成の見直し)
まずは「粗利率の改善」が基本。ここが営業利益の「源泉」になります。
② 販管費を軽くする(=固定費の見直し)
粗利があっても、使いすぎれば意味がありません。
ただし、闇雲なコストカットは逆効果なので、まずは販管費を「浪費」と「投資」に分けることが大事です。
浪費の例:
使っていないサブスクリプション
効果測定していない広告
過剰なオフィス・交際費
生命保険料
投資の例:
採用費(優秀な人材)
教育研修費(社員育成)
効果の高い広告費
浪費は削る。投資は生かす。このバランスが営業利益のカギを握ります。
③ 費用の「質」を上げる(=お金の使い方を見直す)
たとえば広告なら、
年間、何人の人が広告を見て、来店や購入しているかを把握していますか?
複数の広告手段を使っている場合、「手段ごと」の来客数などを把握していますか?
人件費なら、「採用にかかる費用」や「戦力化までの費用」を計算していますか?
お金を「使う」のではなく、「活かす」視点を持ちましょう。
今の1万円が、将来1万円以上の粗利を生むか? それが判断基準です。
売上を変えずに営業利益を2倍にしてみよう
■売上:5,000万円
■粗利率:30% → 粗利=1,500万円
■販管費:1,200万円 → 営業利益=300万円(6%)
結構、優秀な会社です。この会社が
① 粗利率を+5pt(30%→35%)
② 販管費を▲100万円
にすると
■粗利:1,750万円(5,000万円×35%=1,750万円 粗利5%増)
■販管費:1,100万円(▲100万円)
1,750万円―1,100万円
→ 営業利益:650万円(13%)
売上は1円も増えていないのに、営業利益は2倍以上になりました!
これが社長の「設計力」です。
「こんなの机上の空論」と失笑された方、「その通り」です。
ただの「計算式」ですから。
ただし、一つだけ真実があります。
「空論」に近づこうとした者だけが「目指す姿」になる権利を得ます。
よく聞く『そうは言っても、うちの会社では無理だ』と感じるかもしれません。
しかし、諦める前に、まずは『粗利率を1%だけ上げる』『販管費を月5万円だけ見直す』
といった小さな一歩から始めてみませんか?
「粗利1%増も無理」ならば、強い会社・潰れにくい会社へのチャレンジは、ここでやめましょう。
「チャレンジする」と考えたみなさん!
「粗利率を2%」「販管費を30万円」これだけでも、社長の「通信簿」は大きく変わります。
チャレンジするのに、お金もかかりませんし、失うこともありません。
まとめ|営業利益は「会社の体力」を示すスコア
粗利は「商品力」
営業利益は「経営力」
売上や粗利だけではわからない、「会社の本当の健康状態」を映すのが営業利益です。
ぜひこの機会に、自社の営業利益と営業利益率をチェックしてみてください。
「利益は出てる?」ではなく、「ちゃんと体力はある?」という視点で、事業の設計を見直していきましょう。
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社長が今すぐ確認すべき”たった1つ”の数字「粗利率が通知表」:中小企業の儲かる仕組みを再設計「粗利編」
2025.10.30
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
売上が伸びているのに利益が残らない原因は、「売上」だけを見て「粗利(あらり)」を管理していないからです。
粗利とは「売上高から商品の仕入れや製造にかかった原価を引いたもの」で、会社の儲けの源泉です。
家賃や人件費といった経費は、すべてこの粗利から支払われます。
そのため、粗利が不足すれば会社は絶対に儲かりません。
まず、自社の「粗利率(粗利 ÷ 売上)」を把握し、業界平均と比べてみましょう。
これが自社の「儲ける力」を知る第一歩です。
その上で、利益を増やすには以下の3つの視点が重要です。
安易な値引きはしない:たった数パーセントの値引きが、利益を大幅に削ってしまいます。
「率」と「回転」で考える:粗利率が低くても、たくさん売れる商品の方が会社に貢献していることがあります。
粗利率自体を改善する:「単価アップ」「原価ダウン」「儲かる商品の販売比率アップ」は、無理に売上を伸ばすより効果的です。
ドンブリ勘定から抜け出すには、経営者が「粗利」に注目し、儲かる仕組みを設計することが大切です。
本文
売上は伸びているのに、口座にお金が残らない。
原因は「売上」だけを見て「粗利(売上総利益)」を管理していないことにあります。
粗利は販管費と利益の「源泉」です。ここが不足すれば、会社は絶対に儲かりません。
今回は、あなたの会社の「儲かる力」の設計図の書き方の話です。
財務諸表(P/L)が読めなくても大丈夫。
この記事を読み終える頃には、「ドンブリ勘定」から抜け出すヒントが必ず見つかります。
1. ズバリ、「粗利」とは「儲けの設計図」
まず、粗利とは何か。
正式名称は「売上総利益」と言います。
「利益を残す」という観点から見れば、最も重要な利益です。
計算式はシンプル
粗利(売上総利益) = 売上高 − 売上原価
「売上原価」とは、「その商品を売るために、「直接かかったコスト」のこと。
業種ごとに少し中身が違います。
小売業・卸売業(モノを仕入れて売る)
「売上原価」= 商品の仕入れ代
製造業(モノを作って売る)
「売上原価」= 材料費 + 工場でかかったお金(製造ラインの人の給料、工場の電気代、機械の減価償却費など)
サービス業(技術・労働力を売る)
「売上原価」= 外注費 や プロジェクトに直接関わった人(エンジニアやデザイナー)の人件費 など
※サービス業は会社によって定義が異なります。
なぜ、この「粗利」が重要なのでしょうか?
それは、粗利こそが「すべての利益の源泉」であり、
会社が「販管費」を支払うための唯一の原資だからです。
「販管費」とは、家賃、給料、役員報酬、広告宣伝費、交通費など、
「商品を売るために「間接的」にかかった費用」のことです。
(会社の儲けの構造イメージ)
売上 1,000万円
↓
売上原価 600万円(仕入や製造コスト)
↓
粗利 400万円 ← ココが会社の「支払いの原資」
↓
販管費 300万円(家賃・給料・広告費など)
↓
営業利益 100万円(本業での最終的な儲け)
上記の場合、粗利が300万円以下なら赤字。
それ以上なら、黒字。
つまり、粗利が足りなければ、会社は絶対に儲からないのです。
2. 要注意!「限界利益」と「粗利」の違い
ここで、多くの経営者が混乱するポイントを整理します。
前回学んだ「限界利益」と、今回学んでいる「粗利」。
どちらも大事ですが、使う目的がまったく違います。
(例)あなたは、パン屋さんです
限界利益(=現場の「GO/STOP」判断)
目的:この「特注パン100個」の注文、受ける?やめる?
計算:(パンの売値)−(変動費)
変動費:小麦粉代、卵代、パンを入れる袋代など(=売れたら増えるお金)
使い方:限界利益がプラスなら、固定費(家賃など)の回収に貢献するから「受ける」。マイナス(赤字)なら「断る」。
粗利(=経営の「儲かる仕組み」診断)
目的:ウチのパン屋、そもそもビジネスとして儲かる設計になってる?
計算:(パン屋全体の売上)−(売上原価)
売上原価:変動費(小麦粉・卵・袋)+ 製造にかかる固定費(パン職人の給料、工場の減価償却費、工場の家賃など)
使い方:粗利がカツカツなら、「パンの値段が安すぎる」か「原価が高すぎる」ということ。ビジネスモデル自体の見直しが必要
一番の違いは、「粗利」を計算するときの「売上原価」には、
固定費の一部(製造にかかる人件費や家賃など)が含まれる点です。
「限界利益」は、現場の営業マンが「この案件、受ける?」を判断するための「戦闘用」の数字。
「粗利」は、経営者が「ウチの会社、儲かる体質?」を診断するための「戦略用」の数字。
まずはこの違いをしっかり押さえてください。
3. 自社の「粗利率」を知らないのは「危険信号」
粗利は「金額」も大事ですが、経営者はそれ以上に「率」に注目しなければなりません。
粗利率(売上総利益率) = 粗利 ÷ 売上高 × 100
粗利率は、あなたの会社の「商品力」「価格設定」「仕入れ交渉力」がすべて詰まった「通知表」です。
では、自社の粗利率は高いのか、低いのか。
ここで、業種別の「粗利率」の平均目安を見てみましょう。(※中小企業実態基本調査 令和4年度実績より)
業種
平均粗利率
卸売業
約 15.1%
製造業
約 20.7%
運輸業
約 23.4%
小売業
約 30.4%
不動産業
約 46.3%
情報通信業
約 47.5%
専門サービス業
約 56.8%
宿泊業・飲食業
約 63.3%
いかがでしょうか?
あなたの会社の決算書と比べてみてください。
もし自社が小売業なのに粗利率が20%しかなければ、同業他社より「安く売りすぎている」か「高く仕入れすぎている」可能性が高い、という危険信号です。
4. 経営者が知るべき「粗利」3つの実務テクニック
粗利率の重要性がわかったら、次はこの数字を使って経営を「見える化」します。
テクニック1:「値引き」は「悪魔のささやき」
「売上がほしい。5%くらいなら」と安易な値引きをしていませんか?
その5%が、利益にどれだけインパクトを与えるか計算してみます。
「値引きの本当の恐ろしさ」がわかる魔法の計算式があります。
粗利の減少率 ≒ 値引き率 ÷ 粗利率
(例)あなたの会社の商品が、粗利率40%だったとします
この商品を5%値引きしたら、粗利(儲け)は何%減るでしょうか?
5%(値引き率) ÷ 40%(粗利率) = 12.5%
驚くことに、たった5%の値引きが、会社の「粗利」を12.5%も吹き飛ばしてしまうのです。
「5%値引き」は「ちょっと」ではなく、粗利を1/8消す行為だと知ってください。
値引くなら、その分の数量を「おまけ」するや、
前金入金、入金サイトの前倒しなどで取り返すのが鉄則です。
テクニック2:「率」と「回転」の掛け算で見る
粗利率が高い商品=良い商品、と決めつけてはいけません。
大事なのは「粗利率」と「販売数(回転)」をセットで見ることです。
商品A(高利益)
商品B(薄利多売)
単価
10,000円
5,000円
原価
6,000円
4,000円
粗利率
40%
20%
月の販売数(回転)
10個
100個
月間粗利額
40,000円
100,000円
一見、商品Aの方が粗利率が高くて優秀そうですが、
数が売れる商品Bの方が、会社に2.5倍の粗利(儲け)をもたらしています。
「粗利率は低くても、数が回る」そんな商品を見つけるのが、経営のツボです。
テクニック3:「商品×顧客」で“儲けの地図”を描く
「どの商品が儲かっているか」だけでなく、「どのお客様が儲けさせてくれているか」を把握していますか?
これを「見える化」するのが「粗利マトリクス」です。
顧客\商品
商品A(高単価)
商品B(中単価)
商品C(低単価)
顧客X
▲(赤字)
◯(そこそこ)
◎(主力)
顧客Y
◎(高粗利)
△(低回転)
▲(値引き多)
顧客Z
◯(そこそこ)
◎(主力)
◯(そこそこ)
こういう表をつくることで、「売上は大きいけど、実は赤字の顧客Yには商品Cを売るのをやめよう」とか、
「優良顧客の顧客Zには、新商品の提案を強化しよう」といった、感覚ではない「戦略」が立てられるようになります。
5. 粗利を増やす3つの処方箋
「売上を上げろ!」と号令をかける前に、社長がやるべきは「粗利率の改善」です。
売上はそのままでも、設計次第で利益は増えます。
(現状)売上5,000万円、粗利率30% → 粗利1,500万円
ここから、3つの処方箋を実行します。
価格を3%だけ是正する(単価アップ)「値上げは怖い」と思わず、チラシや見積もりの“端数”を整えるだけでも効果があります。→ これで粗利率が +3pt(33%に)
原価を2%だけ下げる(原価ダウン)仕入先の見直し、送料のまとめ交渉、決済手数料の区分け見直しなどで達成します。→ これで粗利率がさらに +2pt(35%に)
「儲かる商品の比率を増やす」(構成見直し)テクニック3の地図を見て、粗利率の高い商品を優先的に提案するよう営業トークを変えます。→ これで粗利率がさらに +2pt(37%に)
(結果)
粗利率 30% → 37%(+7pt改善)
→ 同じ売上5,000万円でも、粗利は1,850万円(+350万円)
粗利を350万円増やすために必要な売上は
350万円 ÷ 0.3 = 1,166万7千円(約1,167万円)
「粗利率の設計見直し」と「売上アップ」
どちらが現実的か、ここが「社長の決断」となります。
まとめ:社長の仕事は「粗利」を見ること
「売上」だけを追いかける経営は、アクセルだけを踏んで、燃料計を見ていない車と同じです。
いつガス欠(=資金ショート)になってもおかしくありません。
財務が苦手な経営者こそ、「売上」よりも「粗利(売上総利益)」の数字に注目してください。
まず、自社の決算書で「粗利額」と「粗利率」を確認する
同業他社の平均と比べて、自社の「儲ける力」がどの位置にあるか知る
「値引きの恐ろしさ」「率×回転」「商品×顧客」で、儲けの地図を確認
「単価」「原価」「商品構成」の3つにメスを入れ、粗利率を改善する
これが、「ドンブリ勘定」から抜け出し、「儲かる仕組み」を作るための、経営者としての一番確実な第一歩です。
2025.11.04
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
「売上はあるのに、なぜか手元にお金が残らない」 そんな悩みを抱える経営者の方へ。
その原因は、本業の最終的な儲けを示す「営業利益」にあるかもしれません。
営業利益は、商品力(粗利)だけでなく、経費の使い方といった社長の「経営力」を映す「通信簿」です。
この数値が低いと、いくら稼いでも利益が残らない「メタボ体質」の会社になってしまいます。
改善のポイントは3つ。 ① 粗利を増やす ② 販管費(固定費)を減らす ③ お金の使い方の「質」を上げる
まずは自社の営業利益率を計算し、会社の健康状態を把握することから始めましょう。
売上を変えずに、利益を倍増させることも可能です。
本文
「今月も売上は目標達成!」「粗利も出てる!」
なのに、なぜか手元にお金が残らない。
社員の給料を払い、オフィスの家賃を払うと、自分の役員報酬すらキツい。
そんなモヤモヤを感じている経営者・次期経営者の方へ。
それはもしかすると、営業利益に原因があるかもしれません。
このシリーズでは、財務が苦手な方でも本質を理解できるよう、会計の基礎を順を追って解説しています。
第1回:総論
第2回:限界利益(受ける・やめるの判断軸)
第3回:粗利(儲かる仕組みの設計図)
第4回:営業利益(経営力の“通信簿” ←今回)
営業利益とは?「本業でいくら残ったか」を示す数字
営業利益とは、粗利から販管費を引いた残りのこと
営業利益 = 粗利(売上 − 原価) − 販管費(人件費・家賃・広告など)
「粗利」は商品やサービスの強さ
その粗利から、会社を回すための費用を全部払っても黒字が残るか?
これを示すのが営業利益です。
販管費の主な内訳は以下のようなもの:
給料や社会保険料(役員報酬・社員給与)
オフィス賃料、光熱費、通信費
広告宣伝費、交通費、外注費
つまり営業利益は、本業で稼いだ利益の「最終着地」
ここが赤字なら、売上や粗利がいくらあっても、会社としては「本業で赤字」ということです。
営業利益は「社長の通信簿」
営業利益が注目されるのは、その中身が「社長の意思決定の結果」だからです
人を何人雇うか
どこにどんなオフィスを借りるか
どれだけ広告を打つか
社長自身の給料をいくらにするか
これらの支出=販管費は、すべて社長がコントロールしているものです。
だから営業利益は、「商品力」ではなく、社長の「経営力」を表すスコアだと言われます。
粗利が出ていても、営業利益が出ていなければ、「稼ぐ力はあるが使いすぎている」=メタボ体質
数字に現れるのは、社長の「経営設計図の良し悪し」です。
あなたの会社の健康状態は?営業利益「率」でチェック
普段私は「率」より「額」を主に重視しますが
同業他社等と比較し自社のポジションを確認したいのならば「率」が便利です。
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上 × 100
これは、売上のうち何%が「本業のもうけ」として残っているかを示します。
【業種別の目安】
業種
営業利益率の平均
卸売業
約1〜3%
小売業
約2〜5%
製造業
約3〜7%
建設業
約4〜8%
サービス業など
約5〜10%以上
たとえば、売上1,000万円で営業利益が10万円なら、営業利益率は1%
これは、少しのトラブルで一気に赤字に転落する脆弱な体質です。
まずは営業利益率5%以上、目標としては10%以上を目指したいところです。
営業利益を高めるための「3つの社長の仕事」
営業利益を増やすには、たった3つの方法しかありません。
① 粗利を増やす(=稼ぐ力を強くする)
単価を上げる(値上げ・高付加価値化)
原価を下げる(仕入れ見直し・ロス削減)
儲かる商品を増やす(商品構成の見直し)
まずは「粗利率の改善」が基本。ここが営業利益の「源泉」になります。
② 販管費を軽くする(=固定費の見直し)
粗利があっても、使いすぎれば意味がありません。
ただし、闇雲なコストカットは逆効果なので、まずは販管費を「浪費」と「投資」に分けることが大事です。
浪費の例:
使っていないサブスクリプション
効果測定していない広告
過剰なオフィス・交際費
生命保険料
投資の例:
採用費(優秀な人材)
教育研修費(社員育成)
効果の高い広告費
浪費は削る。投資は生かす。このバランスが営業利益のカギを握ります。
③ 費用の「質」を上げる(=お金の使い方を見直す)
たとえば広告なら、
年間、何人の人が広告を見て、来店や購入しているかを把握していますか?
複数の広告手段を使っている場合、「手段ごと」の来客数などを把握していますか?
人件費なら、「採用にかかる費用」や「戦力化までの費用」を計算していますか?
お金を「使う」のではなく、「活かす」視点を持ちましょう。
今の1万円が、将来1万円以上の粗利を生むか? それが判断基準です。
売上を変えずに営業利益を2倍にしてみよう
■売上:5,000万円
■粗利率:30% → 粗利=1,500万円
■販管費:1,200万円 → 営業利益=300万円(6%)
結構、優秀な会社です。この会社が
① 粗利率を+5pt(30%→35%)
② 販管費を▲100万円
にすると
■粗利:1,750万円(5,000万円×35%=1,750万円 粗利5%増)
■販管費:1,100万円(▲100万円)
1,750万円―1,100万円
→ 営業利益:650万円(13%)
売上は1円も増えていないのに、営業利益は2倍以上になりました!
これが社長の「設計力」です。
「こんなの机上の空論」と失笑された方、「その通り」です。
ただの「計算式」ですから。
ただし、一つだけ真実があります。
「空論」に近づこうとした者だけが「目指す姿」になる権利を得ます。
よく聞く『そうは言っても、うちの会社では無理だ』と感じるかもしれません。
しかし、諦める前に、まずは『粗利率を1%だけ上げる』『販管費を月5万円だけ見直す』
といった小さな一歩から始めてみませんか?
「粗利1%増も無理」ならば、強い会社・潰れにくい会社へのチャレンジは、ここでやめましょう。
「チャレンジする」と考えたみなさん!
「粗利率を2%」「販管費を30万円」これだけでも、社長の「通信簿」は大きく変わります。
チャレンジするのに、お金もかかりませんし、失うこともありません。
まとめ|営業利益は「会社の体力」を示すスコア
粗利は「商品力」
営業利益は「経営力」
売上や粗利だけではわからない、「会社の本当の健康状態」を映すのが営業利益です。
ぜひこの機会に、自社の営業利益と営業利益率をチェックしてみてください。
「利益は出てる?」ではなく、「ちゃんと体力はある?」という視点で、事業の設計を見直していきましょう。
2025.10.30
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
売上が伸びているのに利益が残らない原因は、「売上」だけを見て「粗利(あらり)」を管理していないからです。
粗利とは「売上高から商品の仕入れや製造にかかった原価を引いたもの」で、会社の儲けの源泉です。
家賃や人件費といった経費は、すべてこの粗利から支払われます。
そのため、粗利が不足すれば会社は絶対に儲かりません。
まず、自社の「粗利率(粗利 ÷ 売上)」を把握し、業界平均と比べてみましょう。
これが自社の「儲ける力」を知る第一歩です。
その上で、利益を増やすには以下の3つの視点が重要です。
安易な値引きはしない:たった数パーセントの値引きが、利益を大幅に削ってしまいます。
「率」と「回転」で考える:粗利率が低くても、たくさん売れる商品の方が会社に貢献していることがあります。
粗利率自体を改善する:「単価アップ」「原価ダウン」「儲かる商品の販売比率アップ」は、無理に売上を伸ばすより効果的です。
ドンブリ勘定から抜け出すには、経営者が「粗利」に注目し、儲かる仕組みを設計することが大切です。
本文
売上は伸びているのに、口座にお金が残らない。
原因は「売上」だけを見て「粗利(売上総利益)」を管理していないことにあります。
粗利は販管費と利益の「源泉」です。ここが不足すれば、会社は絶対に儲かりません。
今回は、あなたの会社の「儲かる力」の設計図の書き方の話です。
財務諸表(P/L)が読めなくても大丈夫。
この記事を読み終える頃には、「ドンブリ勘定」から抜け出すヒントが必ず見つかります。
1. ズバリ、「粗利」とは「儲けの設計図」
まず、粗利とは何か。
正式名称は「売上総利益」と言います。
「利益を残す」という観点から見れば、最も重要な利益です。
計算式はシンプル
粗利(売上総利益) = 売上高 − 売上原価
「売上原価」とは、「その商品を売るために、「直接かかったコスト」のこと。
業種ごとに少し中身が違います。
小売業・卸売業(モノを仕入れて売る)
「売上原価」= 商品の仕入れ代
製造業(モノを作って売る)
「売上原価」= 材料費 + 工場でかかったお金(製造ラインの人の給料、工場の電気代、機械の減価償却費など)
サービス業(技術・労働力を売る)
「売上原価」= 外注費 や プロジェクトに直接関わった人(エンジニアやデザイナー)の人件費 など
※サービス業は会社によって定義が異なります。
なぜ、この「粗利」が重要なのでしょうか?
それは、粗利こそが「すべての利益の源泉」であり、
会社が「販管費」を支払うための唯一の原資だからです。
「販管費」とは、家賃、給料、役員報酬、広告宣伝費、交通費など、
「商品を売るために「間接的」にかかった費用」のことです。
(会社の儲けの構造イメージ)
売上 1,000万円
↓
売上原価 600万円(仕入や製造コスト)
↓
粗利 400万円 ← ココが会社の「支払いの原資」
↓
販管費 300万円(家賃・給料・広告費など)
↓
営業利益 100万円(本業での最終的な儲け)
上記の場合、粗利が300万円以下なら赤字。
それ以上なら、黒字。
つまり、粗利が足りなければ、会社は絶対に儲からないのです。
2. 要注意!「限界利益」と「粗利」の違い
ここで、多くの経営者が混乱するポイントを整理します。
前回学んだ「限界利益」と、今回学んでいる「粗利」。
どちらも大事ですが、使う目的がまったく違います。
(例)あなたは、パン屋さんです
限界利益(=現場の「GO/STOP」判断)
目的:この「特注パン100個」の注文、受ける?やめる?
計算:(パンの売値)−(変動費)
変動費:小麦粉代、卵代、パンを入れる袋代など(=売れたら増えるお金)
使い方:限界利益がプラスなら、固定費(家賃など)の回収に貢献するから「受ける」。マイナス(赤字)なら「断る」。
粗利(=経営の「儲かる仕組み」診断)
目的:ウチのパン屋、そもそもビジネスとして儲かる設計になってる?
計算:(パン屋全体の売上)−(売上原価)
売上原価:変動費(小麦粉・卵・袋)+ 製造にかかる固定費(パン職人の給料、工場の減価償却費、工場の家賃など)
使い方:粗利がカツカツなら、「パンの値段が安すぎる」か「原価が高すぎる」ということ。ビジネスモデル自体の見直しが必要
一番の違いは、「粗利」を計算するときの「売上原価」には、
固定費の一部(製造にかかる人件費や家賃など)が含まれる点です。
「限界利益」は、現場の営業マンが「この案件、受ける?」を判断するための「戦闘用」の数字。
「粗利」は、経営者が「ウチの会社、儲かる体質?」を診断するための「戦略用」の数字。
まずはこの違いをしっかり押さえてください。
3. 自社の「粗利率」を知らないのは「危険信号」
粗利は「金額」も大事ですが、経営者はそれ以上に「率」に注目しなければなりません。
粗利率(売上総利益率) = 粗利 ÷ 売上高 × 100
粗利率は、あなたの会社の「商品力」「価格設定」「仕入れ交渉力」がすべて詰まった「通知表」です。
では、自社の粗利率は高いのか、低いのか。
ここで、業種別の「粗利率」の平均目安を見てみましょう。(※中小企業実態基本調査 令和4年度実績より)
業種
平均粗利率
卸売業
約 15.1%
製造業
約 20.7%
運輸業
約 23.4%
小売業
約 30.4%
不動産業
約 46.3%
情報通信業
約 47.5%
専門サービス業
約 56.8%
宿泊業・飲食業
約 63.3%
いかがでしょうか?
あなたの会社の決算書と比べてみてください。
もし自社が小売業なのに粗利率が20%しかなければ、同業他社より「安く売りすぎている」か「高く仕入れすぎている」可能性が高い、という危険信号です。
4. 経営者が知るべき「粗利」3つの実務テクニック
粗利率の重要性がわかったら、次はこの数字を使って経営を「見える化」します。
テクニック1:「値引き」は「悪魔のささやき」
「売上がほしい。5%くらいなら」と安易な値引きをしていませんか?
その5%が、利益にどれだけインパクトを与えるか計算してみます。
「値引きの本当の恐ろしさ」がわかる魔法の計算式があります。
粗利の減少率 ≒ 値引き率 ÷ 粗利率
(例)あなたの会社の商品が、粗利率40%だったとします
この商品を5%値引きしたら、粗利(儲け)は何%減るでしょうか?
5%(値引き率) ÷ 40%(粗利率) = 12.5%
驚くことに、たった5%の値引きが、会社の「粗利」を12.5%も吹き飛ばしてしまうのです。
「5%値引き」は「ちょっと」ではなく、粗利を1/8消す行為だと知ってください。
値引くなら、その分の数量を「おまけ」するや、
前金入金、入金サイトの前倒しなどで取り返すのが鉄則です。
テクニック2:「率」と「回転」の掛け算で見る
粗利率が高い商品=良い商品、と決めつけてはいけません。
大事なのは「粗利率」と「販売数(回転)」をセットで見ることです。
商品A(高利益)
商品B(薄利多売)
単価
10,000円
5,000円
原価
6,000円
4,000円
粗利率
40%
20%
月の販売数(回転)
10個
100個
月間粗利額
40,000円
100,000円
一見、商品Aの方が粗利率が高くて優秀そうですが、
数が売れる商品Bの方が、会社に2.5倍の粗利(儲け)をもたらしています。
「粗利率は低くても、数が回る」そんな商品を見つけるのが、経営のツボです。
テクニック3:「商品×顧客」で“儲けの地図”を描く
「どの商品が儲かっているか」だけでなく、「どのお客様が儲けさせてくれているか」を把握していますか?
これを「見える化」するのが「粗利マトリクス」です。
顧客\商品
商品A(高単価)
商品B(中単価)
商品C(低単価)
顧客X
▲(赤字)
◯(そこそこ)
◎(主力)
顧客Y
◎(高粗利)
△(低回転)
▲(値引き多)
顧客Z
◯(そこそこ)
◎(主力)
◯(そこそこ)
こういう表をつくることで、「売上は大きいけど、実は赤字の顧客Yには商品Cを売るのをやめよう」とか、
「優良顧客の顧客Zには、新商品の提案を強化しよう」といった、感覚ではない「戦略」が立てられるようになります。
5. 粗利を増やす3つの処方箋
「売上を上げろ!」と号令をかける前に、社長がやるべきは「粗利率の改善」です。
売上はそのままでも、設計次第で利益は増えます。
(現状)売上5,000万円、粗利率30% → 粗利1,500万円
ここから、3つの処方箋を実行します。
価格を3%だけ是正する(単価アップ)「値上げは怖い」と思わず、チラシや見積もりの“端数”を整えるだけでも効果があります。→ これで粗利率が +3pt(33%に)
原価を2%だけ下げる(原価ダウン)仕入先の見直し、送料のまとめ交渉、決済手数料の区分け見直しなどで達成します。→ これで粗利率がさらに +2pt(35%に)
「儲かる商品の比率を増やす」(構成見直し)テクニック3の地図を見て、粗利率の高い商品を優先的に提案するよう営業トークを変えます。→ これで粗利率がさらに +2pt(37%に)
(結果)
粗利率 30% → 37%(+7pt改善)
→ 同じ売上5,000万円でも、粗利は1,850万円(+350万円)
粗利を350万円増やすために必要な売上は
350万円 ÷ 0.3 = 1,166万7千円(約1,167万円)
「粗利率の設計見直し」と「売上アップ」
どちらが現実的か、ここが「社長の決断」となります。
まとめ:社長の仕事は「粗利」を見ること
「売上」だけを追いかける経営は、アクセルだけを踏んで、燃料計を見ていない車と同じです。
いつガス欠(=資金ショート)になってもおかしくありません。
財務が苦手な経営者こそ、「売上」よりも「粗利(売上総利益)」の数字に注目してください。
まず、自社の決算書で「粗利額」と「粗利率」を確認する
同業他社の平均と比べて、自社の「儲ける力」がどの位置にあるか知る
「値引きの恐ろしさ」「率×回転」「商品×顧客」で、儲けの地図を確認
「単価」「原価」「商品構成」の3つにメスを入れ、粗利率を改善する
これが、「ドンブリ勘定」から抜け出し、「儲かる仕組み」を作るための、経営者としての一番確実な第一歩です。