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営業利益は黒字なのに、なぜ銀行の反応は鈍いのか?答えは「経常利益」にあり
2025.11.19
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
「営業利益は黒字なのに、なぜか銀行の反応が鈍い…」
その理由は、銀行が金利上昇時代において「経常利益」を重視しているからです。
経常利益とは? 本業の儲けである「営業利益」に、
借入金の利息など財務活動の結果(営業外損益)を加えた「会社の平時の総合点」です。
なぜ今、重要なのか? 銀行は「利息をきちんと払った後でも利益が残る会社か」を経常利益で判断します。
低金利時代は問題になりませんでしたが、金利が1%上がれば、借入が3億円の会社は年間300万円も利益が吹き飛びます。
この金利への耐性が問われているのです。
経営者がすべきこと
本業を強くする:全ての源泉である「営業利益」を伸ばす。
財務を管理する:「金利が1%上がったら利息はいくら増えるか」を把握し、借入を見直すなどの対策を打つ。
正しく伝える:為替差益など一時的な利益を除いた「実力値」で会社の状況を把握し、銀行に説明することで信頼を高める。
これからの時代、本業の強さに加え、「お金のやりくり」の巧拙が会社の生死を分けます。
まずは自社の借入金から、金利上昇の影響額を計算してみましょう。
本文
「営業利益は、今期もなんとか黒字を確保した」
「EBITDA(体力)も、プラスを維持している」
なのに、銀行の担当者と話をすると、どうも反応が鈍い。
「最近、金利が上がってきているので、御社の『ココ』の数字が気になりまして…」と、決算書の別の場所を指さされた。
そんな経験はありませんか?
こんにちは。財務を勉強したい若手経営者のための超入門シリーズ、第6回です。
第1回:総論
第2回:限界利益(受ける・やめるの判断軸)
第3回:粗利(儲かる仕組みの設計図)
第4回:営業利益(経営力の通信簿 )
第5回:中小企業の体力を測る「EBITDA」(会社の体力測定)
第6回:経常利益 会社全体の「総合評価」
今回は、これまでの「本業の儲け」の話から一歩進んで、「会社全体の平時の総合点」を示す
「経常利益(けいじょうりえき)」について解説します。
特に、これから金利が本格的に上昇していく時代において、
この「経常利益」を見ていない経営者は、静かに会社の体力を奪われることになります。
1. 「経常利益」とは? 「平時の総合点」
まず、EBITDAの回で、「利益と現金は違う」という話をしました。
今回は、「利益」の中でも種類がある、という話です。
「営業利益」は、あくまで「本業(パン屋ならパンを売る)」だけで稼いだ利益でした。
では、「経常利益」とは何か?
それは、「本業の儲け」に「本業以外での儲けや損失」を足し引きした数字です。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
この「営業外」というのがクセモノです。
これは、「会社の財務活動や投資活動の結果」だと考えてください。
営業外収益(プラス要因)
受取利息:銀行にお金を預けて得た利息
受取配当金:他社の株を持っていて得た配当
為替差益:円安になって、ドル建ての売上が円換算で増えた
不動産からの受取賃貸料・地代
営業外費用(マイナス要因)
支払利息:銀行から借りたお金の「利息」
為替差損:円高になって、ドル建ての仕入れが円換算で増えた
なぜ、これが「経常(=常に起こる)」なのでしょうか?
それは、借金があれば「支払利息」は毎年必ず発生するからです。
輸出入があれば「為替」の影響は常に受け続けるからです。
つまり、経常利益とは、
「本業の成績(営業利益)」+「お金のやりくり(財務活動)の成績」
この2つを合計した、「会社が平常時に出すことのできる総合点」となります。
2. なぜ今、「経常利益」が最重要なのか?
「営業利益さえ出ていれば、本業は順調なんだから良いじゃないか」
そう思っていた時代は、終わりつつあります。
なぜなら、「金利がほぼゼロ」という異常な時代が終わったからです。
使いどころ1:銀行(金融機関)との対話
銀行が融資の審査をするとき、どこを見ていると思いますか?
もちろん「営業利益(本業の強さ)」や「EBITDA(返済の体力)」も見ます。
しかし、彼らが最も重視する指標の一つが「経常利益」です。
なぜなら、銀行への「利息」は、「営業外費用」として支払われるからです。
社長の視点:「営業利益が1,000万円出た!すごいぞ!」
銀行の視点:「営業利益は1,000万円か。でも、ウチへの支払利息が年間800万円あるな。
差し引くと経常利益は200万円。これでは、ちょっとしたアクシデントで赤字(経常赤字)になるな」
銀行は、「利息を払った後でも、ちゃんと利益が残る会社か?」を見ています。
経常利益は、銀行にとって「この会社は利息を払う体力があるか」
を見るための、最も直接的な指標なのです。
使いどころ2:金利上昇局面での「耐性チェック」
これまでは「超低金利」だったので、借入が多くても支払利息はたいした額ではありませんでした。
しかし、もし金利が 1% 上がったら?
ここで、社長が絶対に把握すべき「金利感応度」の目安式があります。
金利上昇による影響額(年間) ≒ 有利子負債 × 1%
借入金が 3億円 ある会社
→ 年間の支払利息が 300万円 増えます。(=月25万円)
借入金が 10億円 ある会社
→ 年間の支払利息が 1,000万円 増えます。(=月84万円)
営業利益(本業の儲け)がまったく同じでも、支払利息が増えた分だけ、経常利益はそのまま減ってしまうのです。
これが「金利時代に効く損益管理」の意味です。
これができていないと、気づかぬうちに利益が流出し、ジワジワと経営が苦しくなります。
3. 経常利益の「ワナ」:「実力」と「まぐれ」の見誤り
この「経常利益」は、総合点であるがゆえに、見方を間違えると経営判断を誤ります。
失敗あるある:「偶発的な営業外益」を「実力」と誤解する
今期の決算書が下記だったとします。
営業利益:100万円(本業はギリギリ)
営業外収益:+2,000万円(たまたま円安が進み、莫大な為替差益が出た)
経常利益:2,100万円
これを見て、「今期は絶好調だった!来期もこの調子だ!ボーナスを増やそう!」
と判断したら、どうなるでしょう?
来期、為替が元に戻ったり、円高に振れたりしたら、一気に「経常赤字」に転落します。
これは「実力」ではなく、たまたまの「ラッキー(一時的要因)」です。
「受取配当金」で経常利益が良く見える場合も同じです。
解決策:「調整後経常利益」で見るクセをつける
経営者は、経常利益を見るとき、必ずその中身を分解し、
「実力」と「一時的な要因(まぐれ)」を分けて考える必要があります。
そのための便利な道具が「調整後経常利益」です。
調整後経常利益(平時の実力) ≒ 経常利益 − 一時的な営業外要因
決算書や試算表の「営業外収益」の中身を見たら、
「来期も続くものか?」を自問自答してみて下さい。
4. 社長がすべき「経常利益の磨き方」3ステップ
では、私たちは「経常利益」とどう向き合い、どう改善(磨いて)いけばよいのでしょうか。
やるべきことは3つのステップです。
ステップ1:【土台】営業利益を強くする
当たり前ですが、すべての源泉は「本業の儲け」です。
財務活動(お金のやりくり)がいくら上手くても、本業が赤字では会社は続きません。
まずは営業利益を黒字化し、伸ばし続けることが最優先です。
ステップ2:【揺れ止め】営業外コストを設計する
経常利益が外部環境でブレすぎないよう、「揺れ止め」の対策をします。
金利対策:
まずは「金利が1%上がったら、支払利息がいくら増えるか?(=金利感応度)」を把握します。
その上で、金利上昇に耐えられないなら、借入の「固定金利と変動金利の比率」を見直す、借換えを検討する、などの手を打ちます。
為替対策:
輸出入がある場合、「1円円高(円安)になったら、利益はいくら変動するか?」を把握します。
為替予約、価格転嫁ルールなど、「為替ヘッジの方針」を社内で文書化しておきましょう。
ステップ3:【見せ方】「調整後」の実力値で語る
これが銀行交渉や社内会議で絶大な効果を発揮します。
「経常利益は2,100万円です」と言うだけでなく、中身を説明するのです。
(例:銀行面談での説明)
「今期の経常利益は2,100万円と好調に見えますが、
このうち一時的な為替差益が2,000万円含まれています。
したがって、平時の実力(調整後経常利益)は100万円だと認識しており、
来期は本業の営業利益を改善することに集中します。」
このように「実力値」で語ることで、経営者が数字を正しく把握していると伝わり、銀行からの信頼が格段に上がります。
黙って決算書を提出しても、銀行員は「実力は100万円」とすぐに把握します。
「語るか語らないか」どちらが賢明な判断かは明白ではないでしょうか。
まとめ:利益は「通信簿」、EBITDAは「体力」、経常利益は「平時の総合点」
営業利益 = 本業の通信簿
EBITDA = 本当の体力(キャッシュを生む力)
経常利益 = 平時の総合点(本業+お金のやりくり)
これまでは、本業の「営業利益」さえ見ていれば、なんとかなる時代でした。
しかし、金利が動き出したこれからは、「お金のやりくり」の巧拙が、そのまま会社の利益を左右します。
銀行は、あなたの「営業利益」と「支払利息」を天秤にかけ、あなたの「経常利益」に注目しています。
まずは、今すぐ「借入明細」を開き、もし金利が1%上がったら年間の支払利息がいくら増えるか、計算用紙に書き出してみてください。
そこから、金利時代を生き抜く「耐性づくり」が始まります。
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銀行からの評価を高める『経営計画書』の作り方 ─ 信頼を勝ち取るための実践ポイント
2025.06.27
数あるブログの中から、私のブログへの訪問、有難うございます。
函館はもちろん、「日本中の中小企業を元気にする」
そのために、一生懸命書き続けます。
銀行から「経営計画書の提出をお願いします」
と言われた経験はありませんか?
これは決して珍しいことではなく、
多くの中小企業が融資を受ける際に求められる必須の書類です。
何を隠そう、当社も現在、銀行からの融資を
検討していて、銀行提出用の事業計画書や
資金繰り表の作成をしている最中なのです。
銀行は単に数字を見たいわけではなく、
あなたの会社が今後どう成長していくのか、
その計画の現実性や将来性を確認したいのです。
しかし、実際には多くの中小企業が
経営計画書を作成していないようです。
参考 2 経営計画の策定状況等について
出典元 中小企業庁
裏を返せば、経営計画書をきちんと作成して
銀行に提出するだけで、あなたの会社は銀行から
一歩抜きん出た信頼を得られるチャンスとなるのです。
(実は当社は銀行から、事業計画書や資金繰り表を
求められていません。だからこそあえて提出するのです。
これも、銀行取引を上手く進める手段の1つです。)
経営計画書は「作るだけ」で銀行評価は上がる
自ら作成した経営計画書や資金繰り表を
融資の提案を受ける際に、決算書などと一緒に
相手が求める前に提出しましょう。
融資の審査はスムーズに進み、
条件も良好なものに近づくはずです。
銀行員さんの、反応をみるとわかります。
多くの場合、驚かれます。
経営者自身が自分のビジョンと数字を整理していることが伝わると、
銀行は「この会社は未来に向けて計画的に経営している」
と判断するのです。
「立派なものや見栄えのいいもの」である必要はありません。
ただし、経営計画書は「質」が重要
とはいえ、ただ闇雲に計画書を作って
提出すれば良いわけではありません。
非現実的な計画書は逆効果になることもあります。
よくある失敗例として、
売上も利益も順調に伸びていく
「右肩上がりになる計画」があります。
今現在、もしくは、ここ数年間の売上や利益が
横ばいか下降傾向なのに、
今年度以降は、順調に成長していく計画は
銀行だけでなく誰が見ても
「信じられない」「ありえないな~」と思われてしまいます。
このような計画は、
かえって無計画だと思われてしまい、
銀行からの信頼を損ねてしまうのです。
いくら未来の計画とはいえ、
「未来は現在の延長線上」にしか存在しません。
確かに、売上や利益が右肩下がりの計画書は
提出しづらいと思いますが、
銀行がチェックしているのは「返済能力」ですから
「現在より1割、売上や利益が落ち込んでも返済可能」
であることを示した方が信頼が得られやすいでしょう。
銀行に信頼される経営計画書のポイント
では、銀行にとって信頼できる経営計画書とはどのようなものでしょうか?
現実的な数字に基づいていること
過去の実績や市場の動向、
具体的な営業戦略などを踏まえ、
実現可能な計画を立てることが大切です。
根拠のある計画は銀行に安心感を与えます。
数字の根拠が説明できること
ただ数字を並べるだけではなく、
「なぜこの数字が出せるのか?」を
説明できる内容にすること。
ここで大切なことは、とにかく
「自分の口で」「経営者自身が」話すことです。
「会計事務所に作ってもらった」
「経理の人に作ってもらった」
このような計画がいけないと
言っているのではありません。
誰かに作ってもらった計画であっても
そこに経営者の「想い」や「熱意」がこもっていて
「語る」ことができるようにすることが大切なのです。
無理のない利益計画
「売上増加」=「利益の増加」
となる時代は、遠い昔の話だと考えましょう。
昨今は、原材料、人件費等の値上がりが激しく
恐らく、銀行交渉よりも頭を悩ます
「値上げ交渉」ができなければ
売上が上がったとしても利益が必ず出る時代ではないはずです。
過度に楽観的な利益計画は「夢物語」と受け取られます。
経営計画書を自分で作り、銀行に提出しよう
経営計画書は自分で作成し、
自分の言葉で銀行に説明することが最も効果的です。
「銀行から言われて仕方なく作る」のではなく、
計画を通じて自社の未来を明確に描くことが重要です。
経営計画書があると、銀行との信頼関係が深まるだけでなく、
経営者自身も経営の舵取りに自信を持てるようになります。
経営者の皆さまが、しっかりとした計画で
銀行と良好な関係を築き、
事業の安定と発展を実現されることを心より願っています。
私も、頑張って作ります!
「雨は、大嫌いです!でも頑張ってウ〇チしてきます!」
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【決算期前に考える】銀行からお金を借りるべき5つの理由。自己資金を減らさない経営術を解説!
2025.02.19
いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にしたい」
そのために、一生懸命書き続けます。
本日は、「お金を借りる?借りない?」のお話。
そろそろ決算期を迎え、来期の計画を立てている会社もあると思います。
その際に「新規事業を立ち上げる」や「設備投資をする」など
大きな投資を必要とする計画があった場合
「銀行融資」か「自己資金」かで迷った際に
どちらを選択するかですが、みなさんならどちらにしますか?
「自己資金で払えないこともないけれど・・・」
そう思った社長さん、ちょっと待ってください!
私は、事業規模に関わらず、「銀行融資」の活用をお勧めします。
なぜなら、「自己資金はあなたの会社の生命線」ともいえるものだからです。
1. 何故なぜ自己資金を減らさない方がいいのか?
自己資金は、予想外のピンチを乗り越えるための「最後の砦」です。
ビジネスの世界は、何が起こるかわかりません。
・ 景気の変動
・ 顧客のトレンド(売れ筋)の変化
・ 自然災害や予期せぬ事故 など
このような事態は、突然やってきます。
そうなった時に頼りになるのは、銀行からの融資ではなく、
「自己資金」つまりは、手持ちの自由になるお金なのです。
もし、上記の3つのようなことが起き
会社の資金繰りや売上が傾き始めたのなら
残念ながら、銀行は、一般的に融資を渋る傾向があります。
でもこれ、仕方がないことですよね。
貸したお金を返してもらえないかもしれない会社にお金は貸せません。
貸したお金を返してもらえるかどうかわからない友達に
お金は貸せないのと同じです。
「うちは、いつでもお金を貸すと言ってもらえている」
「メインバンクとは、もう長い付き合いだから大丈夫」
もしかして、「片思い」なんてことありませんか?
「晴れた日に傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」
以前もブログで取り上げました。
https://sato-insurance.jp/blog/82/
2. 一瞬のチャンスを逃さない
ビジネスチャンスは、いつ、どこで訪れるかわかりません。
・ 画期的な新技術との出会い
・ 魅力的なM&Aの話
・ 是非ともほしい「人財」との出会い など
こんな時に、現金があるかどうかで、
チャンスを掴めるかどうかの確率は変わります。
自己資金がなければ、準備に時間を要する銀行融資に頼らざるを得ません。
せっかくのチャンスも、ライバルに先を越されてしまうかもしれません。
3. 精神的な余裕を生み出す「枕を高くして眠る」
自己資金が十分にある状態は、経営者に精神的な余裕を与えてくれます。
心に余裕があると、冷静で的確な判断ができますし、
新しいことにも積極的にチャレンジできます。
なにより、お客様のことを考え、提供する商品やサービスを充実させる
など、様々な「前向きな施策」を考え、実行してみることができます。
反対に、自己資金が減ってしまうと、
精神的に不安定になり、焦って間違った決断をしてしまう可能性も出てきます。
明日の資金繰りをいつも考えなければならない状態で
いい仕事はできませんよね。
4. 投資は「借入」を検討しよう!
「借金は怖い…」そう思っていませんか?
確かに、むやみに借金をするのは危険です。
しかし、上がったとはいえ低金利時代の今、
うまく活用すれば、事業を大きく成長させるための強力な武器になります。
聞いたことあると思います。
「レバレッジを効かす」てやつです。
同じ事業に、「手持ちの1000万円」を投資するのと
「借入の3000万円」を投資するのでは
どちらの方が、打てる手が増え、成功に近いと考えますか?
どちらの方が、利益が多くなりそうですか?
また、仮に手元資金が総額3000万円あったとして
銀行融資で3000万円調達したとしたのなら
実質借入金は「0円」です。
言い方を変えれば、失敗したとしても会社が「即倒産」とはなりません。
しかし、手元資金の全額をつぎ込んで、残念ながら失敗したのなら
会社は非常に危険な状態となります。
「利息がかかるじゃないか」
確かにかかります。
しかし、利息は経費ですから節税効果があります。
つまりは、法人税分は実質負担金利が0円となります。
税率が30%としたら「金利3割引き」ということです。
5. 自己資金は「会社経営」の要
「攻撃は最大の防御」という言葉がありますが、
経営においては「守りを固めること」は、非常に大切です。
自己資金は、まさに会社経営の要となるものです。
自己資金を減らさずに事業を拡大する方法を常に意識し、
ビジネスを安定成長に導きましょう!
枕はないけど「ぐっすり」
2025.11.19
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
「営業利益は黒字なのに、なぜか銀行の反応が鈍い…」
その理由は、銀行が金利上昇時代において「経常利益」を重視しているからです。
経常利益とは? 本業の儲けである「営業利益」に、
借入金の利息など財務活動の結果(営業外損益)を加えた「会社の平時の総合点」です。
なぜ今、重要なのか? 銀行は「利息をきちんと払った後でも利益が残る会社か」を経常利益で判断します。
低金利時代は問題になりませんでしたが、金利が1%上がれば、借入が3億円の会社は年間300万円も利益が吹き飛びます。
この金利への耐性が問われているのです。
経営者がすべきこと
本業を強くする:全ての源泉である「営業利益」を伸ばす。
財務を管理する:「金利が1%上がったら利息はいくら増えるか」を把握し、借入を見直すなどの対策を打つ。
正しく伝える:為替差益など一時的な利益を除いた「実力値」で会社の状況を把握し、銀行に説明することで信頼を高める。
これからの時代、本業の強さに加え、「お金のやりくり」の巧拙が会社の生死を分けます。
まずは自社の借入金から、金利上昇の影響額を計算してみましょう。
本文
「営業利益は、今期もなんとか黒字を確保した」
「EBITDA(体力)も、プラスを維持している」
なのに、銀行の担当者と話をすると、どうも反応が鈍い。
「最近、金利が上がってきているので、御社の『ココ』の数字が気になりまして…」と、決算書の別の場所を指さされた。
そんな経験はありませんか?
こんにちは。財務を勉強したい若手経営者のための超入門シリーズ、第6回です。
第1回:総論
第2回:限界利益(受ける・やめるの判断軸)
第3回:粗利(儲かる仕組みの設計図)
第4回:営業利益(経営力の通信簿 )
第5回:中小企業の体力を測る「EBITDA」(会社の体力測定)
第6回:経常利益 会社全体の「総合評価」
今回は、これまでの「本業の儲け」の話から一歩進んで、「会社全体の平時の総合点」を示す
「経常利益(けいじょうりえき)」について解説します。
特に、これから金利が本格的に上昇していく時代において、
この「経常利益」を見ていない経営者は、静かに会社の体力を奪われることになります。
1. 「経常利益」とは? 「平時の総合点」
まず、EBITDAの回で、「利益と現金は違う」という話をしました。
今回は、「利益」の中でも種類がある、という話です。
「営業利益」は、あくまで「本業(パン屋ならパンを売る)」だけで稼いだ利益でした。
では、「経常利益」とは何か?
それは、「本業の儲け」に「本業以外での儲けや損失」を足し引きした数字です。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
この「営業外」というのがクセモノです。
これは、「会社の財務活動や投資活動の結果」だと考えてください。
営業外収益(プラス要因)
受取利息:銀行にお金を預けて得た利息
受取配当金:他社の株を持っていて得た配当
為替差益:円安になって、ドル建ての売上が円換算で増えた
不動産からの受取賃貸料・地代
営業外費用(マイナス要因)
支払利息:銀行から借りたお金の「利息」
為替差損:円高になって、ドル建ての仕入れが円換算で増えた
なぜ、これが「経常(=常に起こる)」なのでしょうか?
それは、借金があれば「支払利息」は毎年必ず発生するからです。
輸出入があれば「為替」の影響は常に受け続けるからです。
つまり、経常利益とは、
「本業の成績(営業利益)」+「お金のやりくり(財務活動)の成績」
この2つを合計した、「会社が平常時に出すことのできる総合点」となります。
2. なぜ今、「経常利益」が最重要なのか?
「営業利益さえ出ていれば、本業は順調なんだから良いじゃないか」
そう思っていた時代は、終わりつつあります。
なぜなら、「金利がほぼゼロ」という異常な時代が終わったからです。
使いどころ1:銀行(金融機関)との対話
銀行が融資の審査をするとき、どこを見ていると思いますか?
もちろん「営業利益(本業の強さ)」や「EBITDA(返済の体力)」も見ます。
しかし、彼らが最も重視する指標の一つが「経常利益」です。
なぜなら、銀行への「利息」は、「営業外費用」として支払われるからです。
社長の視点:「営業利益が1,000万円出た!すごいぞ!」
銀行の視点:「営業利益は1,000万円か。でも、ウチへの支払利息が年間800万円あるな。
差し引くと経常利益は200万円。これでは、ちょっとしたアクシデントで赤字(経常赤字)になるな」
銀行は、「利息を払った後でも、ちゃんと利益が残る会社か?」を見ています。
経常利益は、銀行にとって「この会社は利息を払う体力があるか」
を見るための、最も直接的な指標なのです。
使いどころ2:金利上昇局面での「耐性チェック」
これまでは「超低金利」だったので、借入が多くても支払利息はたいした額ではありませんでした。
しかし、もし金利が 1% 上がったら?
ここで、社長が絶対に把握すべき「金利感応度」の目安式があります。
金利上昇による影響額(年間) ≒ 有利子負債 × 1%
借入金が 3億円 ある会社
→ 年間の支払利息が 300万円 増えます。(=月25万円)
借入金が 10億円 ある会社
→ 年間の支払利息が 1,000万円 増えます。(=月84万円)
営業利益(本業の儲け)がまったく同じでも、支払利息が増えた分だけ、経常利益はそのまま減ってしまうのです。
これが「金利時代に効く損益管理」の意味です。
これができていないと、気づかぬうちに利益が流出し、ジワジワと経営が苦しくなります。
3. 経常利益の「ワナ」:「実力」と「まぐれ」の見誤り
この「経常利益」は、総合点であるがゆえに、見方を間違えると経営判断を誤ります。
失敗あるある:「偶発的な営業外益」を「実力」と誤解する
今期の決算書が下記だったとします。
営業利益:100万円(本業はギリギリ)
営業外収益:+2,000万円(たまたま円安が進み、莫大な為替差益が出た)
経常利益:2,100万円
これを見て、「今期は絶好調だった!来期もこの調子だ!ボーナスを増やそう!」
と判断したら、どうなるでしょう?
来期、為替が元に戻ったり、円高に振れたりしたら、一気に「経常赤字」に転落します。
これは「実力」ではなく、たまたまの「ラッキー(一時的要因)」です。
「受取配当金」で経常利益が良く見える場合も同じです。
解決策:「調整後経常利益」で見るクセをつける
経営者は、経常利益を見るとき、必ずその中身を分解し、
「実力」と「一時的な要因(まぐれ)」を分けて考える必要があります。
そのための便利な道具が「調整後経常利益」です。
調整後経常利益(平時の実力) ≒ 経常利益 − 一時的な営業外要因
決算書や試算表の「営業外収益」の中身を見たら、
「来期も続くものか?」を自問自答してみて下さい。
4. 社長がすべき「経常利益の磨き方」3ステップ
では、私たちは「経常利益」とどう向き合い、どう改善(磨いて)いけばよいのでしょうか。
やるべきことは3つのステップです。
ステップ1:【土台】営業利益を強くする
当たり前ですが、すべての源泉は「本業の儲け」です。
財務活動(お金のやりくり)がいくら上手くても、本業が赤字では会社は続きません。
まずは営業利益を黒字化し、伸ばし続けることが最優先です。
ステップ2:【揺れ止め】営業外コストを設計する
経常利益が外部環境でブレすぎないよう、「揺れ止め」の対策をします。
金利対策:
まずは「金利が1%上がったら、支払利息がいくら増えるか?(=金利感応度)」を把握します。
その上で、金利上昇に耐えられないなら、借入の「固定金利と変動金利の比率」を見直す、借換えを検討する、などの手を打ちます。
為替対策:
輸出入がある場合、「1円円高(円安)になったら、利益はいくら変動するか?」を把握します。
為替予約、価格転嫁ルールなど、「為替ヘッジの方針」を社内で文書化しておきましょう。
ステップ3:【見せ方】「調整後」の実力値で語る
これが銀行交渉や社内会議で絶大な効果を発揮します。
「経常利益は2,100万円です」と言うだけでなく、中身を説明するのです。
(例:銀行面談での説明)
「今期の経常利益は2,100万円と好調に見えますが、
このうち一時的な為替差益が2,000万円含まれています。
したがって、平時の実力(調整後経常利益)は100万円だと認識しており、
来期は本業の営業利益を改善することに集中します。」
このように「実力値」で語ることで、経営者が数字を正しく把握していると伝わり、銀行からの信頼が格段に上がります。
黙って決算書を提出しても、銀行員は「実力は100万円」とすぐに把握します。
「語るか語らないか」どちらが賢明な判断かは明白ではないでしょうか。
まとめ:利益は「通信簿」、EBITDAは「体力」、経常利益は「平時の総合点」
営業利益 = 本業の通信簿
EBITDA = 本当の体力(キャッシュを生む力)
経常利益 = 平時の総合点(本業+お金のやりくり)
これまでは、本業の「営業利益」さえ見ていれば、なんとかなる時代でした。
しかし、金利が動き出したこれからは、「お金のやりくり」の巧拙が、そのまま会社の利益を左右します。
銀行は、あなたの「営業利益」と「支払利息」を天秤にかけ、あなたの「経常利益」に注目しています。
まずは、今すぐ「借入明細」を開き、もし金利が1%上がったら年間の支払利息がいくら増えるか、計算用紙に書き出してみてください。
そこから、金利時代を生き抜く「耐性づくり」が始まります。
2025.06.27
数あるブログの中から、私のブログへの訪問、有難うございます。
函館はもちろん、「日本中の中小企業を元気にする」
そのために、一生懸命書き続けます。
銀行から「経営計画書の提出をお願いします」
と言われた経験はありませんか?
これは決して珍しいことではなく、
多くの中小企業が融資を受ける際に求められる必須の書類です。
何を隠そう、当社も現在、銀行からの融資を
検討していて、銀行提出用の事業計画書や
資金繰り表の作成をしている最中なのです。
銀行は単に数字を見たいわけではなく、
あなたの会社が今後どう成長していくのか、
その計画の現実性や将来性を確認したいのです。
しかし、実際には多くの中小企業が
経営計画書を作成していないようです。
参考 2 経営計画の策定状況等について
出典元 中小企業庁
裏を返せば、経営計画書をきちんと作成して
銀行に提出するだけで、あなたの会社は銀行から
一歩抜きん出た信頼を得られるチャンスとなるのです。
(実は当社は銀行から、事業計画書や資金繰り表を
求められていません。だからこそあえて提出するのです。
これも、銀行取引を上手く進める手段の1つです。)
経営計画書は「作るだけ」で銀行評価は上がる
自ら作成した経営計画書や資金繰り表を
融資の提案を受ける際に、決算書などと一緒に
相手が求める前に提出しましょう。
融資の審査はスムーズに進み、
条件も良好なものに近づくはずです。
銀行員さんの、反応をみるとわかります。
多くの場合、驚かれます。
経営者自身が自分のビジョンと数字を整理していることが伝わると、
銀行は「この会社は未来に向けて計画的に経営している」
と判断するのです。
「立派なものや見栄えのいいもの」である必要はありません。
ただし、経営計画書は「質」が重要
とはいえ、ただ闇雲に計画書を作って
提出すれば良いわけではありません。
非現実的な計画書は逆効果になることもあります。
よくある失敗例として、
売上も利益も順調に伸びていく
「右肩上がりになる計画」があります。
今現在、もしくは、ここ数年間の売上や利益が
横ばいか下降傾向なのに、
今年度以降は、順調に成長していく計画は
銀行だけでなく誰が見ても
「信じられない」「ありえないな~」と思われてしまいます。
このような計画は、
かえって無計画だと思われてしまい、
銀行からの信頼を損ねてしまうのです。
いくら未来の計画とはいえ、
「未来は現在の延長線上」にしか存在しません。
確かに、売上や利益が右肩下がりの計画書は
提出しづらいと思いますが、
銀行がチェックしているのは「返済能力」ですから
「現在より1割、売上や利益が落ち込んでも返済可能」
であることを示した方が信頼が得られやすいでしょう。
銀行に信頼される経営計画書のポイント
では、銀行にとって信頼できる経営計画書とはどのようなものでしょうか?
現実的な数字に基づいていること
過去の実績や市場の動向、
具体的な営業戦略などを踏まえ、
実現可能な計画を立てることが大切です。
根拠のある計画は銀行に安心感を与えます。
数字の根拠が説明できること
ただ数字を並べるだけではなく、
「なぜこの数字が出せるのか?」を
説明できる内容にすること。
ここで大切なことは、とにかく
「自分の口で」「経営者自身が」話すことです。
「会計事務所に作ってもらった」
「経理の人に作ってもらった」
このような計画がいけないと
言っているのではありません。
誰かに作ってもらった計画であっても
そこに経営者の「想い」や「熱意」がこもっていて
「語る」ことができるようにすることが大切なのです。
無理のない利益計画
「売上増加」=「利益の増加」
となる時代は、遠い昔の話だと考えましょう。
昨今は、原材料、人件費等の値上がりが激しく
恐らく、銀行交渉よりも頭を悩ます
「値上げ交渉」ができなければ
売上が上がったとしても利益が必ず出る時代ではないはずです。
過度に楽観的な利益計画は「夢物語」と受け取られます。
経営計画書を自分で作り、銀行に提出しよう
経営計画書は自分で作成し、
自分の言葉で銀行に説明することが最も効果的です。
「銀行から言われて仕方なく作る」のではなく、
計画を通じて自社の未来を明確に描くことが重要です。
経営計画書があると、銀行との信頼関係が深まるだけでなく、
経営者自身も経営の舵取りに自信を持てるようになります。
経営者の皆さまが、しっかりとした計画で
銀行と良好な関係を築き、
事業の安定と発展を実現されることを心より願っています。
私も、頑張って作ります!
「雨は、大嫌いです!でも頑張ってウ〇チしてきます!」
2025.02.19
いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にしたい」
そのために、一生懸命書き続けます。
本日は、「お金を借りる?借りない?」のお話。
そろそろ決算期を迎え、来期の計画を立てている会社もあると思います。
その際に「新規事業を立ち上げる」や「設備投資をする」など
大きな投資を必要とする計画があった場合
「銀行融資」か「自己資金」かで迷った際に
どちらを選択するかですが、みなさんならどちらにしますか?
「自己資金で払えないこともないけれど・・・」
そう思った社長さん、ちょっと待ってください!
私は、事業規模に関わらず、「銀行融資」の活用をお勧めします。
なぜなら、「自己資金はあなたの会社の生命線」ともいえるものだからです。
1. 何故なぜ自己資金を減らさない方がいいのか?
自己資金は、予想外のピンチを乗り越えるための「最後の砦」です。
ビジネスの世界は、何が起こるかわかりません。
・ 景気の変動
・ 顧客のトレンド(売れ筋)の変化
・ 自然災害や予期せぬ事故 など
このような事態は、突然やってきます。
そうなった時に頼りになるのは、銀行からの融資ではなく、
「自己資金」つまりは、手持ちの自由になるお金なのです。
もし、上記の3つのようなことが起き
会社の資金繰りや売上が傾き始めたのなら
残念ながら、銀行は、一般的に融資を渋る傾向があります。
でもこれ、仕方がないことですよね。
貸したお金を返してもらえないかもしれない会社にお金は貸せません。
貸したお金を返してもらえるかどうかわからない友達に
お金は貸せないのと同じです。
「うちは、いつでもお金を貸すと言ってもらえている」
「メインバンクとは、もう長い付き合いだから大丈夫」
もしかして、「片思い」なんてことありませんか?
「晴れた日に傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」
以前もブログで取り上げました。
https://sato-insurance.jp/blog/82/
2. 一瞬のチャンスを逃さない
ビジネスチャンスは、いつ、どこで訪れるかわかりません。
・ 画期的な新技術との出会い
・ 魅力的なM&Aの話
・ 是非ともほしい「人財」との出会い など
こんな時に、現金があるかどうかで、
チャンスを掴めるかどうかの確率は変わります。
自己資金がなければ、準備に時間を要する銀行融資に頼らざるを得ません。
せっかくのチャンスも、ライバルに先を越されてしまうかもしれません。
3. 精神的な余裕を生み出す「枕を高くして眠る」
自己資金が十分にある状態は、経営者に精神的な余裕を与えてくれます。
心に余裕があると、冷静で的確な判断ができますし、
新しいことにも積極的にチャレンジできます。
なにより、お客様のことを考え、提供する商品やサービスを充実させる
など、様々な「前向きな施策」を考え、実行してみることができます。
反対に、自己資金が減ってしまうと、
精神的に不安定になり、焦って間違った決断をしてしまう可能性も出てきます。
明日の資金繰りをいつも考えなければならない状態で
いい仕事はできませんよね。
4. 投資は「借入」を検討しよう!
「借金は怖い…」そう思っていませんか?
確かに、むやみに借金をするのは危険です。
しかし、上がったとはいえ低金利時代の今、
うまく活用すれば、事業を大きく成長させるための強力な武器になります。
聞いたことあると思います。
「レバレッジを効かす」てやつです。
同じ事業に、「手持ちの1000万円」を投資するのと
「借入の3000万円」を投資するのでは
どちらの方が、打てる手が増え、成功に近いと考えますか?
どちらの方が、利益が多くなりそうですか?
また、仮に手元資金が総額3000万円あったとして
銀行融資で3000万円調達したとしたのなら
実質借入金は「0円」です。
言い方を変えれば、失敗したとしても会社が「即倒産」とはなりません。
しかし、手元資金の全額をつぎ込んで、残念ながら失敗したのなら
会社は非常に危険な状態となります。
「利息がかかるじゃないか」
確かにかかります。
しかし、利息は経費ですから節税効果があります。
つまりは、法人税分は実質負担金利が0円となります。
税率が30%としたら「金利3割引き」ということです。
5. 自己資金は「会社経営」の要
「攻撃は最大の防御」という言葉がありますが、
経営においては「守りを固めること」は、非常に大切です。
自己資金は、まさに会社経営の要となるものです。
自己資金を減らさずに事業を拡大する方法を常に意識し、
ビジネスを安定成長に導きましょう!
枕はないけど「ぐっすり」