資金繰りの悪化の予兆を見逃さないために大切なことの1つに、「在庫管理」があります。
以下では、在庫増加が引き起こすリスクと、決算書の落とし穴について説明します。
1. 在庫増加のリスク
販売不振による影響
販売が計画通りに進まないと、在庫が積み上がります。これが続くと、デッドストックが増え、いずれ廃棄や値下げが必要になり、損失を生みます。
デッドストックのコスト
売れ残った商品はただの在庫ではありません。管理費や保管スペースのコストがかさみ、結果的に利益を圧迫する要因になります。
資金繰りの悪化
在庫を増やすことで、仕入れ代金の支払いが先行し、現金が減少します。
特に「支払いが先、回収が後」という一般的な商流の中で、現金が気づかぬうちに減っていきます。
2. 在庫管理とキャッシュフローの重要性
運転資金はビジネスの生命線の1つです。
商品が売れなければ、現金が在庫に変わるだけで、資金繰りがどんどん悪化します。
そのため、在庫管理を怠らず、現金と在庫の増減を定期的に確認することが重要です。
3. 決算書だけでは見えないリスク
損益計算書(P/L)や貸借対照表(B/S)は経営状態を表す重要な資料ですが、これだけでは全てのリスクを把握できません。
特に在庫や資金の流れを細かく見ていないと、足元に迫る危機に気づけないことがあります。
なぜか。決算書などの財務諸表の「勘定科目」の並び方が、そうさせるのです。
P/L(損益計算書)の一番上(トップライン)は「売上高」
そこから、仕入れ値や様々な経費が引かれていくかのように書かれています。
勘のいい方なら、もうお気づきですよね。トップラインの時点で、実際の商売とはかけ離れているわけです。
「代金回収が先」「支払いが後」と書いてあるわけです。
B/S(貸借対照表)でいうと、今度は左側の一番下「資産の合計額」
現金が在庫に化けただけですから、科目が現金と商品だけなら、合計額は変わりません。
もちろん、現金と商品在庫の数字を見れば、増減はわかりますが、
「対前年」や「対前月」という見比べ方をしていなければ気づきません。
どうでしょうか。P/LとB/Sだけ見ていると、一見順調に見えても、足元には危険が忍び寄ってる。
「全てのお客様の注文に対応したい」「チャンスを逸したくない」
気持ちは、十分わかります。
ですが、適切な在庫数の管理と商品ラインナップの見直しは常に必要となります。
「在庫」は「財庫」 お金が形を変えただけです。
「在庫」は「罪庫」 これくらいならいいだろうが、後々大変なことになりかねません。
いかがでしたか?
在庫管理の大切さと決算書(財務諸表)を鵜呑みにすることの危うさにお気づきいただけたでしょうか。
現場の状況や資金の動きを把握することは、健全な経営の鍵です。
「現場に任せている」「経理に任せている」「税理士の先生に任せている」
現場も経理の人も、ましてや、税理士の先生も、あなたの会社を管理してくれません。
当然ですが、責任もとってくれません。
社員さんや税理士さんの出してくれた数字の意味を「理解」し「活用する」ことは
経営者にしかできない仕事です。
経営者って、大変なお仕事なんですね(時期ズレですが)