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2025.11.28ブログ

「税金を払いたくない」が会社を殺す? 銀行員が見ている「当期純利益」の本当の意味

忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」

多くの経営者は「税金を払うくらいなら経費で使う」と考えがちですが、財務に強い経営者は違います。

当期純利益は単なる「今年の成果」ではなく、貸借対照表の自己資本となり、会社を守る「筋肉」になるからです。

過度な節税は自己資本を削り、銀行からの信用も失います。

銀行は「当期純利益+減価償却費」で返済能力を判断するため、

利益ゼロの会社は「借金を返せない会社」と見なされます。

ただし、当期純利益には2つの罠があります。

①土地売却益などの特別利益で実力を見誤る ②利益はあるのに現金がない状態。

経営者は「調整後当期純利益(特別損益を除いた実力値)」で判断すべきです。

税金は「国へのお金」ではなく「財務基盤強化と資金調達力向上のための投資」です。

目先の節税より、10年20年続く「潰れない会社」を目指しましょう。

 

 

本文

「一生懸命働いて利益が出たのに、最後にガッポリ税金で持っていかれた」

「税金を払うくらいなら、経費を使ってしまえ!」

決算の時期、そんな「節税」の誘惑に駆られることはありませんか?

お気持ちは痛いほどわかります。

しかし、財務に強い経営者は、あえて「しっかりと税金を払い、当期純利益を残す」

という選択をする場合があります。

なぜなら、この「当期純利益」こそが、銀行に頼らず会社を守る「最強の盾(自己資本)」になるからです。

こんにちは。財務が苦手な社長や次期経営者のための超入門シリーズ、いよいよ損益計算書(P/L)の最終行です。

今回は、会社の寿命を決める最終成果、「当期純利益(とうきじゅんりえき)」について解説します。

「最後の一行」を見る目が変われば、あなたの経営判断は劇的に変わります。

1. 当期純利益とは? ——「ゴール」であり「スタート」

 

これまで見てきた「経常利益(平時の総合点)」に、最後の仕上げをしたものが当期純利益です。

当期純利益 = 経常利益 ± 特別損益 − 法人税等

ここで登場する要素は2つです。

  1. 特別損益:「今年だけ」「異常な」出来事

    • (例:土地を売った利益、災害による損失、中小企業の役員の退職金など)

  2. 法人税等:利益に応じて国に払う「場所代」や「会費」のようなもの

これらをすべて精算し、最後に会社の手元に残った「完全な手取り」

それが当期純利益です。

2. なぜ「税金を払ってでも」利益を残すべきか?

まず、はじめに言っておきます。

私は「節税なんて絶対ダメだ」と言っているわけではありません。

「節税すべき会社」と「節税してる場合ではない会社」があるということです。

そして、中小企業の多くは経験上「後者」であると思います。

また、意識というか考え方として「節税」ではなく「利益の繰り越し」

という観点から「やる・やらない」を決めれなければなりません。

私が考える「節税している場合ではない会社」については

後日、書いてみたいなと思います。

 

では、本題へ。

多くの経営者が「当期純利益=単なる今年の結果」だと思っています。

しかし、財務の視点は違います。

「当期純利益は、貸借対照表(B/S)へ移動し、会社の「肉体」になる」

どういうことでしょうか?

実は、P/L(成績表)とB/S(財産目録)は、この「当期純利益」という一本のパイプでつながっています

あなたが稼ぎ出し、税金を払った後の利益は、B/Sの「利益剰余金(内部留保)」という場所に貯金されます。

これは「自己資本」の一部となり、誰にも返す必要のない、会社自身の純粋な体力となります。

  • 黒字(納税) = 会社の筋肉(自己資本)が増える

  • 赤字(過度な節税) = 会社の筋肉を削って痩せ細る

「税金を払いたくないから利益を消す」というのは、

「自ら会社の肉体を削り、防御力を下げている」のと同じことなのです。

また、多くの経営者が憧れる「無借金経営」

節税という行為は、無借金経営と逆行する行為と言えます。

当たり前といえば当たり前ですよね。

キャッシュの源である「利益」を減らす行為が「節税」なのですから。

3. 「見かけの数字」に騙されるな! 2つのワナ

 

ただし、この当期純利益には、経営判断を誤らせる「ワナ」があります。

数字の大小だけで一喜一憂せず、必ず中身を確認してください。

ワナ①:「特別利益」で実力を見誤る

 

「今年は当期純利益が5,000万円も出た! 絶好調だ!」

よく見ると、本業(営業利益)は赤字で、昔買った「土地の売却益」が乗っているだけだった。

これは一番危険なパターンです。

土地は一度売ったら終わり。来期は同じ利益は出ません。

経営者は必ず、以下の「調整後」の数字を頭の中で計算してください。

調整後当期純利益(実力値) = 当期純利益 − 一時的な特別利益

銀行との面談でも、「当期純利益は多いですが、土地の売却益を除いた『実力値』はこれくらいと認識しています」

と説明できれば、「数字が見えている社長だ」と信用が急上昇します。

上記の話は、社長が口にしなくても銀行員なら誰でも即座に計算しています。

万が一「当期純利益5000万て、すごいですね~」と言っている銀行員がいたら

担当替えをお願いしましょう。

だからこそ、銀行員が頭の中で計算するより先に社長から発言することが大切です。

ワナ②:「利益はあるのに、お金がない」

 

当期純利益はあくまで「計算上の利益」です。

本当に大切なのは、ここから「借金の元本返済」を行わなければないということです。

ここでも、銀行員の頭の中をご紹介すると

返済能力 ≒ 当期純利益 + 減価償却費となります。

もし、「節税対策で利益はトントン(0円)です」とした場合、

減価償却費が少なければ、銀行からは「借金を返す原資がない会社」とみなされます。

「税金を払う」とは、国にお金をあげることではなく、

「財務基盤を強くし、銀行からの信用(資金調達力)を買うためのコスト」なのです。

4. 社長のための「当期純利益」活用チェック

 

では、具体的にこの数字をどう経営に活かすか。

毎回の決算で、この3ステップを確認してください。

  1. 「調整後当期純利益(実力値)」はいくらか?

    • 特別損益(まぐれや事故)を除外した、本当の実力を把握する

  2. 「自己資本」は積み上がったか?

    • 今回の利益で、自己資本比率は改善したか?(目指せ20〜30%以上)

  3. 「返済・配当・投資」のバランスは適正か?

    • 残った利益の範囲内で、借金を返し、株主(自分)へ配当し、未来へ投資できているか?

まとめ:P/Lの終わりは、B/Sの始まり

 

当期純利益は、ゴールではありません。

来期のB/S(会社の体力)へのスタート地点です。

  • 営業利益で「今、稼ぐ力」を示し

  • 経常利益で「平時の実力」を示し

  • 当期純利益で「未来への蓄積」を残す

「今年はこれだけ利益が出たから、半分は税金を払って、残りを会社の筋肉(自己資本)にしよう」

そう胸を張って言えるようになった時、あなたは「節税」という目先のテクニックを卒業し、

10年、20年と続く「潰れない会社」の設計者になっています。

 

さあ、改めて直近の決算書を見てみてください。

一番下の行にある「当期純利益」

その数字は、あなたの会社のB/Sに積み重なり、未来のあなたの会社を守る盾になっていますか?

 

 

 

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