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有限会社佐藤保険事務所

2025.11.11ブログ

中小企業の体力を測る「EBITDA」:運転資金・返済・投資まで一気通貫で理解する

 

忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」

「黒字なのにお金がない」という経営者の悩みは、利益と現金の違いを理解していないことが原因です。

その解決策がEBITDA(営業利益+減価償却費)で、これは実際に生み出せるキャッシュの力を示す「体力ゲージ」です。

EBITDAは、本業の真の稼ぐ力を比較したり、銀行融資の可能性を判断したり、設備投資の判断基準として活用できます。

ただし、運転資金の膨張、設備投資、借金返済、税金など、EBITDAが高くても現金が減るワナがあるため、

EBITDAの把握とキャッシュフロー表の管理を組み合わせることが重要です。

 

本文

財務が苦手な経営者や、これから勉強するという若手経営者に贈る

「やさしい財務入門 第5回」スタートです。

 

「決算は黒字。でも通帳はいつもギリギリ」

そんなモヤモヤを感じたことはありませんか?

その原因はシンプルで、

利益と現金(キャッシュ)は別物

だからです。

このズレを埋めて、「うちの会社は本当はどれくらいお金を生む力があるのか?」

を教えてくれるのが、今回の主役 EBITDA(イービットダー) です。

横文字アレルギー、出さないでくださいね。

今から、「EBITDA(イービットダー)」について、世界一やさしく解説します。

これがわかれば、「なぜ黒字なのにお金がない?」という最大の疑問が解け

銀行との交渉や、次の設備投資の判断に自信が持てるようになります。

まず、大前提からいきます。

 

 なぜ「利益」と「現金」はズレるのか?

 

まずは、「利益」と「現金」はまったくの別物だということを知ってください。

なぜなら、会計(決算書)には、「実際のお金の動きとは関係なく、数字上だけで処理する費用」が存在するからです。

その代表格であり、経営者が絶対に理解すべき項目が「減価償却費(げんかしょうきゃくひ)」です。

たとえば、500万円のトラックを現金で買っても、会計上は「5年に分けて毎年100万円ずつ費用」にします。

「5年で償却」とは、このことです。

そして、2年目・3年目は、現金は出ていないのに利益だけが100万円減る

これが「利益とお金のズレ」の代表的な正体です。

 

1|EBITDAって、ざっくり何者なの?

難しく考えなくて大丈夫です。式はこれだけ。

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

営業利益:本業のもうけ

減価償却費:実際にはお金が出ていない「分割経費」

※(厳密には支払利息や税金なども考慮しますが、まずはこれで十分です)

 

決算書に出ている「営業利益」に

  • 「見せかけの費用」である減価償却費を足し戻して
  • 「本業でどれだけキャッシュを生んでいるか?」

を見よう、というのが EBITDA です。

利益は「採点」  EBITDAは「体力」

と言われることもあります。

 

2  EBITDAをどう使う?(社長のための3つの使い方)

EBITDAは、ただ計算するだけでなく、「使う」ことで真価を発揮します。

 

使い方1:「本当の儲け」を比較する

 

同じ「営業利益500万円」の会社が2社あっても、中身がまったく違うことがあります。

  • A社(古い機械を使い続けている)
    • 営業利益:500万円
    • 減価償却費:200万円(もうあまり償却するものがない)
    • EBITDA(稼ぐ力):700万円
  • B社(積極的な投資・新しい機械を導入)
    • 営業利益:500万円
    • 減価償却費:1,500万円(最新設備をどんどん導入)
    • EBITDA(稼ぐ力):2,000万円

決算書上の営業利益は同じ500万円でも、B社の方がA社の約3倍もキャッシュを生み出す力が強いことがわかります。

 

使い方2:「借金」をどれだけ返せるか測る(銀行との交渉)

 

銀行がお金を貸すとき、何を見ていると思いますか?

もちろん「営業利益」も見ますが、それ以上に「EBITDA」を最重要視しています。

なぜなら、銀行への返済は「利益」ではなく「現金(キャッシュ)」で行われるからです。

銀行は、「この会社は、年間にどれだけ「返済の原資」となるキャッシュを生み出せるのか?」

(=EBITDAはいくらか?)を知りたいのです。

ここで使える簡単な指標があります。

有利子負債倍率 = 借入金の合計 ÷ EBITDA

これは、「今の借金を、何年分の「稼ぐ力」で返せるか?」を示す数字です。

一般に10倍以内、つまりは「10年間で返済できる」が目安などと言われます。

 

EBITDAを把握していれば、

「我が社のEBITDAは年間2,000万円あります。だから、あと5,000万円の融資を受けても、十分に返済可能です」

と、根拠のある交渉ができます。

 

使い方3:「次の設備投資」の判断に使う

 

「新しい機械を1,000万円で買いたいが、本当に大丈夫か?」 こんなときもEBITDAが役立ちます。

EBITDAは、あなたの会社が「どれくらいの投資規模に耐えられるか」を示す体力ゲージなのです。

その投資によってEBITDAがいくら増えるのかを計算し、

「何ヶ月で回収できるか?」という社内ルール(例:36ヶ月以内に回収)を決める判断基準になります。

 

3 【最重要】EBITDAが良くても「お金が残らない」4つのワナ

 

「よし、EBITDAはプラスだ!これで安心だ!」 と思った社長、まだ半分です

EBITDAは「本業でキャッシュを稼ぐ力(体力)」を示しますが、

それ以外にもお金がなくなる「黒字倒産」のワナがあります。

 

EBITDAが高い = 必ずしもお金(現金)が増える、ではないのです。

    1.ワナ1:運転資金の膨張(売掛金・在庫)

  •  「売ったけど、未入金(売掛金)」が増える。(業績好調時に発生)
  • 「仕入れたけど、未販売(在庫)」が増える。(業績好調・判断ミス時に発生)

これらはEBITDAの計算に含まれませんが、「現金が社外に出ていく」か、

会社の中で「寝ている」状態です。「在庫」は「罪庫」にもなるのです。

 

  2.ワナ2:設備投資

  • EBITDAは投資「前」の体力です。トラックや機械を買えば、一括で現金が出ていきます。

 

     3.ワナ3:借入元金の返済

  • これが最大のワナです。借金の「元本」の返済は、会計上「費用」になりません(P/Lに出てこない)。
  • EBITDAで稼いだキャッシュの中から、税引き後利益で返済する必要があります。

 

    4.ワナ4:税金・賞与・生命保険資産計上分など

  • 利益が出れば当然「法人税」を払います。賞与もまとまった現金支出です。これらもEBITDAから支払われます。

 

 

4 EBITDAを「生きた数字」にする実務5つ

1.まずは自社のEBITDAを出す

決算書の「営業利益」に「減価償却費」を足すだけ。

できれば直近12か月の推移も見てみましょう。

2.運転資金の動きをチェック

売掛・在庫・買掛の増減を月次で眺めるだけでも、

「どこにお金が詰まっているか」が見えてきます。

3.投資は「何か月で回収?」で判断

その投資で増える見込みの EBITDA で、

何か月で元が取れるかをざっくり計算するクセをつける。

4.返済計画は“体力”に合わせる

原則として、年間返済額 ≦ EBITDAをひとつの目安に。

これを超えるようなら返済期間や借入の組み方を要相談です。

5.キャッシュフロー表を週1で更新

「今から3か月先までの入出金予定」を表にして、週に1回、15分だけでも見直す。

会議では「前週からの差分」だけ確認するのが続けるコツです。

とはいえ、「週1点検」は、かなりハードルが高いと思われますので

「月1」もしくは前月や前年との「現金の増減」の確認からはじめてみましょう。


まとめ:EBITDA(体力)+キャッシュフロー表の二刀流へ

  • 利益は採点
  • EBITDAは体力
  • 現金は生存

黒字なのにお金が残らない本当の理由は、

「体力(EBITDA)」と「現金の出入り(運転資金・投資・返済・税金)」を

バラバラに見ているからです。

まずは今日、直近の決算書を開いて

  1. 営業利益+減価償却費=EBITDA を計算する
  2. 来週からの入出金を、簡単でもいいので書き出してみる

この小さな二歩が、「黒字なのにいつもヒヤヒヤ」から

「数字を見て、根拠をもって判断ができる社長」への第一歩になります。

 

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