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エンゲージメント最下位・学習5割放棄——日本の職場に足りないのは「意欲」ではなく「設計」だ
2026.03.18
18か国比較で見えた「日本の働く現在地」
エンゲージメントも学びも、なぜここまで低いのか
本日は、興味深いデータを見つけたので整理します。
次回のブログで、私なりの「解決策(現場でできること)」を書いていきます。
忙しい方へ:1分で読めるAI要約
結論: 日本は、仕事のエンゲージメント(働く幸せ・勤続意向・管理職意向)と、
学び・成長(成長志向/成長実感/社外学習)の両方で、18か国・地域の中でも低い水準にあります。
パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」では、
日本の就業者で「働く幸せを感じている」人は 49.1%で最下位、
管理職になりたい人も 19.8%で最下位、今の会社で働き続けたい人も 56.0%で最下位です。 (パーソル総合研究所)
また、働くことを通じた成長では、日本の 成長志向度79.5%/成長実感度52.6%と低く、
両者のギャップも大きい傾向があります。 (パーソル総合研究所)
社外の学習・自己啓発でも、日本は「特に何もしていない」が5割超と指摘されます。 (パーソル総合研究所)
重要なのは「日本人が怠けている」という話ではなく、
人が前向きに働き、学びたくなる環境設計が弱いということ。
実際、調査では日本の組織文化が「権威主義・責任回避」に寄りやすい特徴も示されています。 (パーソル総合研究所)
0. まず前提:この調査は「世界18か国・地域の主要都市の就業者」を比較している
本稿のデータは、パーソル総合研究所の国際比較調査(2022年)です。
対象は 20〜69歳の就業者(休職中除く)、各国・地域 約1,000サンプル、
主要都市でのインターネット調査です。 (パーソル総合研究所)
(国全体の断定ではなく「主要都市の就業者の傾向」だという前提で読みます)
1. エンゲージメントは「世界最低水準」に近い
①「働く幸せ」の低さ
「働くことを通じて幸せを感じている」就業者の割合は、日本 49.1%で最も低いと報告されています。 (パーソル総合研究所)
②「この会社で続けたい」の低さ
「現在の勤務先で働き続けたい(勤続意向)」は、全体平均 71.2%に対し、日本は 56.0%で最下位です。 (パーソル総合研究所)
③「管理職になりたい」の低さ
一般社員・従業員の管理職意向は、日本 19.8%で最下位。 (パーソル総合研究所)
まとめると日本は、
幸せ実感が低い/勤続意向が低い/管理職意向が低い
という「三重の弱さ」が見えます。
2. 「上に行きたい」気持ちが弱いのは、根性不足ではなく「構造」の可能性
管理職意向19.8%という数字は、単に「責任が嫌」だけで説明しきれません。
なぜなら、意欲は 「頑張った先に希望が見えるか」 に左右されるからです。
ここで大事なのは、個人批判にしないこと。
希望が見えにくい職場構造だと、上を目指す人は増えません。
3. 成長:日本は「成長したい」も「成長している実感」も弱い
調査の成長指標では、日本の
成長志向度:79.5%
成長実感度:52.6%
と示され、さらに「志向と実感のギャップ」も大きい傾向が読み取れます。 (パーソル総合研究所)
このギャップが厄介です。
人は、成長実感が薄いほど「次の挑戦」や「学ぶ意味」を感じにくくなります。
4. 学習:社外学習で「何もしていない」が5割超
勤務先以外での学習・自己啓発について、日本は
「とくに何も行っていない」が5割を超えると整理されています。 (パーソル総合研究所)
ここも誤解しやすいポイントで、
「忙しいから」だけでは片付かない可能性があります。
学ぶ意味が見えない/成長実感が湧かないと、行動は続きません。
5. なぜ日本はここまで低いのか? データから読み取れる背景
ここは断定ではなく、調査が示す傾向からの整理です。
背景① 組織文化が「権威主義・責任回避」に寄りやすい
調査では、日本と韓国の組織文化が
「上層部の決定にとりあえず従う」「社内では波風を立てない」など、
権威主義・責任回避に近い特徴が示されています。 (パーソル総合研究所)
これは、挑戦や提案よりも「失敗回避」が優先されやすい環境につながります。
背景② 成長実感の設計が弱い
成長実感が低いと、学ぶ動機は細ります。
制度(研修)よりも、日常の中で
「できた」「前に進んだ」「役に立てた」
が可視化される設計が必要です。
背景③ 「安心して意見を言える空気」が不足しやすい
挑戦や学びは、心理的安全性とセットです。
「言っても無駄」「言うと損」になれば、人は黙ります。
黙る→改善が止まる→成長実感が消える、の循環が起きます。
6. このデータが企業に突きつけていること
ここで一番大切なのは、こういう結論です。
「日本人はやる気がない」で終わらせない。
問題は「人」ではなく、「環境設計」である。
働く幸せが低い
勤続意向が低い
管理職意向が低い
成長実感が低い
学びの行動が弱い
これらはバラバラの問題ではなく、全てがつながって起きている可能性があります。
まとめ:日本に必要なのは「もっと頑張れ」ではなく、前向きに働き学べる「設計」
今回の国際比較で見えた日本の課題は、
単なる「意欲の問題」ではありません。
必要なのは、
成長を実感できる設計
挑戦してもよい空気
承認される文化
前進が見える仕組み(小さな成功の可視化)
次回は、ここを 「現場で実装できる形(言葉・問い・仕組み)」 に落として、私なりの解決策を書きます。
出所(引用)
パーソル総合研究所
「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」 (パーソル総合研究所)
執筆者
有限会社 佐藤保険事務所 代表取締役 佐藤和也
日本唯一のペップトーカー財務コンサルタント/キャッシュフローコーチ
日本ペップトーク普及協会 認定講師/問活(質問力)実践者
専門領域:資金繰り・財務改善/組織コミュニケーション/チームビルディング/言葉の設計
更新日:2026年3月18日
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褒めているのに逆効果?なぜ、あなたの言葉は届かないのか?
2026.01.27
信頼を築く「承認のピラミッド」──アクセルとセーフティネットをつなぐ設計図
忙しい方へ:1分で読めるAI要約
結論:言葉が届かない最大の理由は、相手の中に「信頼の土台」ができていないまま、いきなり“結果”を求めてしまうからです。
解決策:「承認のピラミッド(存在→行動→結果)」の順に承認を積み上げると、応援も指摘もまっすぐ届きます。
ポイント:広い土台(存在承認)があるほど、アクセルの言葉(背中を押す)も、セーフティネットの言葉(支える)も機能します。
こんな経験はありませんか?
「良かれと思って声をかけたのに、相手が心を閉ざしてしまった」
「『頑張れ』と言えば言うほど、相手の顔が曇っていく」
これまでお話ししてきたように、言葉には2種類あります。
人を前に押し出す アクセルの言葉(箱根駅伝・原監督)
背中から支える セーフティネットの言葉(ソチ五輪・佐藤信夫コーチ)
そして今、その2つを結びつける「設計図」として紹介したいのが、
承認のピラミッドです。
1. 承認には「3つの階層」がある
結論:承認は「存在→行動→結果」の順に積み上げるほど、信頼が強くなる
承認には下から順に3つのステップがあります
① 存在承認(いちばん下の土台)
「あなたがここにいること」そのものを認める
例:挨拶、感謝の一言、話をきちんと聴く、目を見てうなずく
② 行動承認(真ん中)
「やっていること・向き合い方」を認める
例:努力、工夫、チャレンジ、プロセスへのコメント
③ 結果承認(頂点)
「出した成果」を認める
例:目標達成、テストの点数、売上、優勝・合格
ここで大事なのは、ピラミッドの面積です。
一番広い土台である「存在」が安定しているからこそ、
その上に「行動」や「結果」がぐらつかずに積み上がります。
2. 「結果」から入るという、よくある間違い
結論:結果承認だけだと、相手は常に「不安」の中で動く
職場や家庭でよく起きるのは、ピラミッドが逆三角形になってしまう現象です
結果を出したときだけ褒める
結果が出ないと、存在価値がないかのような言葉になる
これでは土台が細すぎて、相手は常に
「失敗したら居場所がなくなる」という不安を抱えます。
そして、前回の記事
箱根駅伝・原監督に学ぶ~「頑張って」より効く応援言葉の正体~
で触れた
「全力で頑張っている人に『頑張って』が重く響く」のも、
存在や行動が十分に承認されていない状態で、
いきなり「結果」や「行動」を求めてしまっているからです。
3. 名コーチたちは、ピラミッドをどう使っていたか
ここからが本題です。
2つのエピソードを、この図に当てはめてみます。
① 佐藤信夫コーチの「助けに行くから」=究極の【存在承認】
ソチ五輪の浅田真央選手は、ショートで結果も行動も厳しい状況でした。
そこで佐藤コーチがかけた言葉は、
「大丈夫。何かあったら先生が助けに行くから」
これは技術でも結果でもなく、
「何があっても、私はあなたの味方だ」という、存在そのものへの承認です。
崩れかけたピラミッドの一番下を、もう一度太く塗り直した。
だからこそ、あの伝説のフリー演技につながったのではないでしょうか。
② 原監督の「楽しめ!ヒーローになれ!」=【行動・結果承認】への着火
一方、箱根駅伝の原監督の言葉は、
「ここから楽しめ、笑顔だぞ」
「お前、ヒーローになってくよ。ヒーローに」
という、行動と結果に火をつける言葉でした。
でもこれがプレッシャーではなく「ワクワク」になるのは、
日頃から存在と努力(行動)を徹底的に認めているからだと思われます。
土台が盤石だからこそ、頂点に向かうアクセルの言葉がまっすぐ届く。
ここに、承認のピラミッドの力がよく表れています。
4. 信頼の土台は「存在」と「行動」の承認でできる
私たちの日常で目に入りやすいのは、テストの点数や売上などの「結果」です。
だからこそ、意識して増やしたいのが下の二つ
存在承認のひと言(例)
「今日も来てくれてありがとう」
「いつもチームを支えてくれて、ありがとう」
「元気な顔を見られてうれしいよ」
成果に関係なく、「ここにいていいんだ」と感じられる土台をつくります。
行動承認のひと言(例)
「結果は惜しかったけど、あの工夫は素晴らしかったよ」
「最後まで諦めずに取り組んでいたの、ちゃんと見ていたよ」
「最初に手を挙げてくれたから、会議(教室)が動き出したよ」
結果が出ていなくても、
「やっていること」を見てくれている人がいる。
それが分かった瞬間、人は安心してチャレンジできます。
この2つが積み重なっている相手には、
厳しい「結果」の話をしても、それは「攻撃」ではなく
「成長の材料」として届くようになります。
5. あなたの承認は、どこに偏っているか?
ここで少し、振り返ってみましょう。
最近かけた言葉は、「結果」「行動」「存在」のどれが多かったですか?
「なんでできないの?」「またミスしてるね」と、結果ばかり見ていませんか?
行動や存在を承認された経験が少ない人に、結果だけを求めていませんか?
もし「結果へのコメントがほとんどだな」と感じたら、
今日から意識して、存在と行動へのひと言を増やしてみてください。
その一言一言が、信頼のピラミッドの下の層を、
ゆっくりと、しかし確実に厚くしていきます。
おわりに:言葉は、土台の上にしか響かない
言葉は「種」のようなものです。
そして承認のピラミッドは、その種をまく「土壌」です。
どんなに素晴らしい応援の言葉も、
土壌が枯れていれば(=存在承認が不足していれば)、芽は出ません。
まずは、あなたの周りにいる大切な人の顔を一人思い浮かべてください。
「存在」へのひと言
「行動」へのひと言
そして最後に「結果」へのひと言
この三つを、心の中でそっと用意してみましょう。
その小さな一歩が、誰かにとっての
「原監督の一言」「佐藤コーチの一言」になるかもしれません。
そして気づけば、あなたの周りには、
言葉でつながった揺るがない信頼のピラミッドが立ち上がっているはずです。
FAQ(追記)
Q:承認のピラミッドで一番大事なのはどこ?
A:存在承認です。土台が太いほど、行動・結果の話も「攻撃」ではなく「応援」として届きます。
Q:甘やかすと結果を出さなくなるのでは?
A: 逆です。存在を認められている安心感があるからこそ、人は「失敗を恐れずに高い目標(結果)へ挑戦」できるようになります。
心理的安全性が高いチームほど、長期的には高い成果を出します。
Q:苦手な相手にどう「存在承認」をすればいいですか?
A: 感情を込める必要はありません。「おはよう」の挨拶や、相手が話している時に「手を止めて聴く」といった行動そのものが、強力な存在承認になります。
Q:財務改善の現場で、このピラミッドはどう機能しますか?
A: 資金繰りに苦しむ経営者は、自らを「結果が出ていないダメな人間だ」と否定しがちです。
まず「ここまで会社を守ってきた社長の歩み(存在・行動)」を全肯定することで、
初めて建設的な財務戦略(結果)の話を考えられるようになります。
Q:今日からできる最短の一歩は?
A:まずは 挨拶+感謝の一言(存在承認) を増やすことです。
「今日もありがとう」これだけで土台が変わり始めます。
執筆者:佐藤保険事務所 代表(日本唯一のペップトーカー財務コンサルタント)
資格:日本キャッシュフローコーチ協会認定 キャッシュフローコーチ
日本ペップトーク普及協会 認定講師/問活(質問力)実践
専門領域:資金繰り・財務改善/組織コミュニケーション/チームビルディング/言葉の選び方/
更新日:2026年1月27日
2026.03.18
18か国比較で見えた「日本の働く現在地」
エンゲージメントも学びも、なぜここまで低いのか
本日は、興味深いデータを見つけたので整理します。
次回のブログで、私なりの「解決策(現場でできること)」を書いていきます。
忙しい方へ:1分で読めるAI要約
結論: 日本は、仕事のエンゲージメント(働く幸せ・勤続意向・管理職意向)と、
学び・成長(成長志向/成長実感/社外学習)の両方で、18か国・地域の中でも低い水準にあります。
パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」では、
日本の就業者で「働く幸せを感じている」人は 49.1%で最下位、
管理職になりたい人も 19.8%で最下位、今の会社で働き続けたい人も 56.0%で最下位です。 (パーソル総合研究所)
また、働くことを通じた成長では、日本の 成長志向度79.5%/成長実感度52.6%と低く、
両者のギャップも大きい傾向があります。 (パーソル総合研究所)
社外の学習・自己啓発でも、日本は「特に何もしていない」が5割超と指摘されます。 (パーソル総合研究所)
重要なのは「日本人が怠けている」という話ではなく、
人が前向きに働き、学びたくなる環境設計が弱いということ。
実際、調査では日本の組織文化が「権威主義・責任回避」に寄りやすい特徴も示されています。 (パーソル総合研究所)
0. まず前提:この調査は「世界18か国・地域の主要都市の就業者」を比較している
本稿のデータは、パーソル総合研究所の国際比較調査(2022年)です。
対象は 20〜69歳の就業者(休職中除く)、各国・地域 約1,000サンプル、
主要都市でのインターネット調査です。 (パーソル総合研究所)
(国全体の断定ではなく「主要都市の就業者の傾向」だという前提で読みます)
1. エンゲージメントは「世界最低水準」に近い
①「働く幸せ」の低さ
「働くことを通じて幸せを感じている」就業者の割合は、日本 49.1%で最も低いと報告されています。 (パーソル総合研究所)
②「この会社で続けたい」の低さ
「現在の勤務先で働き続けたい(勤続意向)」は、全体平均 71.2%に対し、日本は 56.0%で最下位です。 (パーソル総合研究所)
③「管理職になりたい」の低さ
一般社員・従業員の管理職意向は、日本 19.8%で最下位。 (パーソル総合研究所)
まとめると日本は、
幸せ実感が低い/勤続意向が低い/管理職意向が低い
という「三重の弱さ」が見えます。
2. 「上に行きたい」気持ちが弱いのは、根性不足ではなく「構造」の可能性
管理職意向19.8%という数字は、単に「責任が嫌」だけで説明しきれません。
なぜなら、意欲は 「頑張った先に希望が見えるか」 に左右されるからです。
ここで大事なのは、個人批判にしないこと。
希望が見えにくい職場構造だと、上を目指す人は増えません。
3. 成長:日本は「成長したい」も「成長している実感」も弱い
調査の成長指標では、日本の
成長志向度:79.5%
成長実感度:52.6%
と示され、さらに「志向と実感のギャップ」も大きい傾向が読み取れます。 (パーソル総合研究所)
このギャップが厄介です。
人は、成長実感が薄いほど「次の挑戦」や「学ぶ意味」を感じにくくなります。
4. 学習:社外学習で「何もしていない」が5割超
勤務先以外での学習・自己啓発について、日本は
「とくに何も行っていない」が5割を超えると整理されています。 (パーソル総合研究所)
ここも誤解しやすいポイントで、
「忙しいから」だけでは片付かない可能性があります。
学ぶ意味が見えない/成長実感が湧かないと、行動は続きません。
5. なぜ日本はここまで低いのか? データから読み取れる背景
ここは断定ではなく、調査が示す傾向からの整理です。
背景① 組織文化が「権威主義・責任回避」に寄りやすい
調査では、日本と韓国の組織文化が
「上層部の決定にとりあえず従う」「社内では波風を立てない」など、
権威主義・責任回避に近い特徴が示されています。 (パーソル総合研究所)
これは、挑戦や提案よりも「失敗回避」が優先されやすい環境につながります。
背景② 成長実感の設計が弱い
成長実感が低いと、学ぶ動機は細ります。
制度(研修)よりも、日常の中で
「できた」「前に進んだ」「役に立てた」
が可視化される設計が必要です。
背景③ 「安心して意見を言える空気」が不足しやすい
挑戦や学びは、心理的安全性とセットです。
「言っても無駄」「言うと損」になれば、人は黙ります。
黙る→改善が止まる→成長実感が消える、の循環が起きます。
6. このデータが企業に突きつけていること
ここで一番大切なのは、こういう結論です。
「日本人はやる気がない」で終わらせない。
問題は「人」ではなく、「環境設計」である。
働く幸せが低い
勤続意向が低い
管理職意向が低い
成長実感が低い
学びの行動が弱い
これらはバラバラの問題ではなく、全てがつながって起きている可能性があります。
まとめ:日本に必要なのは「もっと頑張れ」ではなく、前向きに働き学べる「設計」
今回の国際比較で見えた日本の課題は、
単なる「意欲の問題」ではありません。
必要なのは、
成長を実感できる設計
挑戦してもよい空気
承認される文化
前進が見える仕組み(小さな成功の可視化)
次回は、ここを 「現場で実装できる形(言葉・問い・仕組み)」 に落として、私なりの解決策を書きます。
出所(引用)
パーソル総合研究所
「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」 (パーソル総合研究所)
執筆者
有限会社 佐藤保険事務所 代表取締役 佐藤和也
日本唯一のペップトーカー財務コンサルタント/キャッシュフローコーチ
日本ペップトーク普及協会 認定講師/問活(質問力)実践者
専門領域:資金繰り・財務改善/組織コミュニケーション/チームビルディング/言葉の設計
更新日:2026年3月18日
2026.01.27
信頼を築く「承認のピラミッド」──アクセルとセーフティネットをつなぐ設計図
忙しい方へ:1分で読めるAI要約
結論:言葉が届かない最大の理由は、相手の中に「信頼の土台」ができていないまま、いきなり“結果”を求めてしまうからです。
解決策:「承認のピラミッド(存在→行動→結果)」の順に承認を積み上げると、応援も指摘もまっすぐ届きます。
ポイント:広い土台(存在承認)があるほど、アクセルの言葉(背中を押す)も、セーフティネットの言葉(支える)も機能します。
こんな経験はありませんか?
「良かれと思って声をかけたのに、相手が心を閉ざしてしまった」
「『頑張れ』と言えば言うほど、相手の顔が曇っていく」
これまでお話ししてきたように、言葉には2種類あります。
人を前に押し出す アクセルの言葉(箱根駅伝・原監督)
背中から支える セーフティネットの言葉(ソチ五輪・佐藤信夫コーチ)
そして今、その2つを結びつける「設計図」として紹介したいのが、
承認のピラミッドです。
1. 承認には「3つの階層」がある
結論:承認は「存在→行動→結果」の順に積み上げるほど、信頼が強くなる
承認には下から順に3つのステップがあります
① 存在承認(いちばん下の土台)
「あなたがここにいること」そのものを認める
例:挨拶、感謝の一言、話をきちんと聴く、目を見てうなずく
② 行動承認(真ん中)
「やっていること・向き合い方」を認める
例:努力、工夫、チャレンジ、プロセスへのコメント
③ 結果承認(頂点)
「出した成果」を認める
例:目標達成、テストの点数、売上、優勝・合格
ここで大事なのは、ピラミッドの面積です。
一番広い土台である「存在」が安定しているからこそ、
その上に「行動」や「結果」がぐらつかずに積み上がります。
2. 「結果」から入るという、よくある間違い
結論:結果承認だけだと、相手は常に「不安」の中で動く
職場や家庭でよく起きるのは、ピラミッドが逆三角形になってしまう現象です
結果を出したときだけ褒める
結果が出ないと、存在価値がないかのような言葉になる
これでは土台が細すぎて、相手は常に
「失敗したら居場所がなくなる」という不安を抱えます。
そして、前回の記事
箱根駅伝・原監督に学ぶ~「頑張って」より効く応援言葉の正体~
で触れた
「全力で頑張っている人に『頑張って』が重く響く」のも、
存在や行動が十分に承認されていない状態で、
いきなり「結果」や「行動」を求めてしまっているからです。
3. 名コーチたちは、ピラミッドをどう使っていたか
ここからが本題です。
2つのエピソードを、この図に当てはめてみます。
① 佐藤信夫コーチの「助けに行くから」=究極の【存在承認】
ソチ五輪の浅田真央選手は、ショートで結果も行動も厳しい状況でした。
そこで佐藤コーチがかけた言葉は、
「大丈夫。何かあったら先生が助けに行くから」
これは技術でも結果でもなく、
「何があっても、私はあなたの味方だ」という、存在そのものへの承認です。
崩れかけたピラミッドの一番下を、もう一度太く塗り直した。
だからこそ、あの伝説のフリー演技につながったのではないでしょうか。
② 原監督の「楽しめ!ヒーローになれ!」=【行動・結果承認】への着火
一方、箱根駅伝の原監督の言葉は、
「ここから楽しめ、笑顔だぞ」
「お前、ヒーローになってくよ。ヒーローに」
という、行動と結果に火をつける言葉でした。
でもこれがプレッシャーではなく「ワクワク」になるのは、
日頃から存在と努力(行動)を徹底的に認めているからだと思われます。
土台が盤石だからこそ、頂点に向かうアクセルの言葉がまっすぐ届く。
ここに、承認のピラミッドの力がよく表れています。
4. 信頼の土台は「存在」と「行動」の承認でできる
私たちの日常で目に入りやすいのは、テストの点数や売上などの「結果」です。
だからこそ、意識して増やしたいのが下の二つ
存在承認のひと言(例)
「今日も来てくれてありがとう」
「いつもチームを支えてくれて、ありがとう」
「元気な顔を見られてうれしいよ」
成果に関係なく、「ここにいていいんだ」と感じられる土台をつくります。
行動承認のひと言(例)
「結果は惜しかったけど、あの工夫は素晴らしかったよ」
「最後まで諦めずに取り組んでいたの、ちゃんと見ていたよ」
「最初に手を挙げてくれたから、会議(教室)が動き出したよ」
結果が出ていなくても、
「やっていること」を見てくれている人がいる。
それが分かった瞬間、人は安心してチャレンジできます。
この2つが積み重なっている相手には、
厳しい「結果」の話をしても、それは「攻撃」ではなく
「成長の材料」として届くようになります。
5. あなたの承認は、どこに偏っているか?
ここで少し、振り返ってみましょう。
最近かけた言葉は、「結果」「行動」「存在」のどれが多かったですか?
「なんでできないの?」「またミスしてるね」と、結果ばかり見ていませんか?
行動や存在を承認された経験が少ない人に、結果だけを求めていませんか?
もし「結果へのコメントがほとんどだな」と感じたら、
今日から意識して、存在と行動へのひと言を増やしてみてください。
その一言一言が、信頼のピラミッドの下の層を、
ゆっくりと、しかし確実に厚くしていきます。
おわりに:言葉は、土台の上にしか響かない
言葉は「種」のようなものです。
そして承認のピラミッドは、その種をまく「土壌」です。
どんなに素晴らしい応援の言葉も、
土壌が枯れていれば(=存在承認が不足していれば)、芽は出ません。
まずは、あなたの周りにいる大切な人の顔を一人思い浮かべてください。
「存在」へのひと言
「行動」へのひと言
そして最後に「結果」へのひと言
この三つを、心の中でそっと用意してみましょう。
その小さな一歩が、誰かにとっての
「原監督の一言」「佐藤コーチの一言」になるかもしれません。
そして気づけば、あなたの周りには、
言葉でつながった揺るがない信頼のピラミッドが立ち上がっているはずです。
FAQ(追記)
Q:承認のピラミッドで一番大事なのはどこ?
A:存在承認です。土台が太いほど、行動・結果の話も「攻撃」ではなく「応援」として届きます。
Q:甘やかすと結果を出さなくなるのでは?
A: 逆です。存在を認められている安心感があるからこそ、人は「失敗を恐れずに高い目標(結果)へ挑戦」できるようになります。
心理的安全性が高いチームほど、長期的には高い成果を出します。
Q:苦手な相手にどう「存在承認」をすればいいですか?
A: 感情を込める必要はありません。「おはよう」の挨拶や、相手が話している時に「手を止めて聴く」といった行動そのものが、強力な存在承認になります。
Q:財務改善の現場で、このピラミッドはどう機能しますか?
A: 資金繰りに苦しむ経営者は、自らを「結果が出ていないダメな人間だ」と否定しがちです。
まず「ここまで会社を守ってきた社長の歩み(存在・行動)」を全肯定することで、
初めて建設的な財務戦略(結果)の話を考えられるようになります。
Q:今日からできる最短の一歩は?
A:まずは 挨拶+感謝の一言(存在承認) を増やすことです。
「今日もありがとう」これだけで土台が変わり始めます。
執筆者:佐藤保険事務所 代表(日本唯一のペップトーカー財務コンサルタント)
資格:日本キャッシュフローコーチ協会認定 キャッシュフローコーチ
日本ペップトーク普及協会 認定講師/問活(質問力)実践
専門領域:資金繰り・財務改善/組織コミュニケーション/チームビルディング/言葉の選び方/
更新日:2026年1月27日