「会社にとって大切なのは売上と利益、どっち?」
そう聞かれたら、多くの社長は「利益」と答えるでしょう。
しかし、社員は「売上」を重視しがちなのが現実です。
なぜなら会社や上司の口から出てくるのは「売上目標」ばかり
そのため、結果的に「利益」の重要性が社員まで
浸透していないケースが多くなります。
この記事では、会社にとって「利益」がなぜ重要なのか
そして、その重要性を社員にも理解してもらうための
分かりやすい説明方法をご紹介します。
売上よりも利益を重視すべき理由
「売上」は会社の規模を示す指標になりますが、
利益が出なければ会社は存続できません。
利益こそが、事業を継続し、成長させるための源泉となるのです。
よくメディアでは「売上〇〇億の会社経営者」などと紹介されていますが
正直、私は「そうなんだ~頑張ってますね」としか思いません。
確かに売上が大きいのは、凄いと思いますが
そこに利益が伴わなければ、売上の大きさは意味をなしません。
では、なぜ多くの会社で「売上」が重視されるのでしょうか?
それは、
「売上は目標設定しやすく、進捗を把握しやすい」
「売上は目に見える成果として評価しやすい」
といった理由が考えられます。
その為、売上を上げることが重要視され、
本来企業存続に最も必要なはずである「利益」に対する意識が
希薄になってしまうのではないでしょうか。
売上重視の落とし穴
売上を重視しすぎると「落とし穴」にハマってしまいます。
その典型例が「安売り競争」です。
安売り競争に陥ると、売上は上がっても
利益は減ってしまう可能性があります。
平常時に
仕入れ値が50円のボールペンを売価100円で売ったとしましょう。
100本売ったとしたら
(100-50) ×100=5000円の利益
ライバル店が80円で販売開始
負けてたまるかと70円で販売したところ
200本も売れました
(70-50) ×200=4000円の利益
倍の数量を売りさばいても利益は減っています。
「それでも利益が出てるんだからいいじゃん」なんて
経営者なら考えませんよね?
社員さんたちは、そう考えてしまうことが多いのではないでしょうか?
そうです。ここで出た利益は「粗利」です。
現実の会社では、この粗利から人件費や光熱費等の「固定費」が
出ていくわけです。
もし、この会社の普段の労働分配率(粗利に対する人件費の割合)が
60%ならば人件費は3000円(5000×60%)
その他固定費が1000円とすると
経常利益は「5000円-3000円-1000円=1000円」
安売り競争に参入してしまうと
経常利益は「4000円-3000円-1000円=0円」
「よかった~赤字にならなくて」なんて
経営者なら「まさか」思いませんよね?
そうです。この経常利益から
法人税が引かれ、更にそこから銀行から借り入れたお金の
「元本返済分」や生命保険の「資産計上分」が
引かれていくわけですよね。
この会社が安売り競争に参入し
頑張って普段の2倍の数量を販売したとしても
この会社の現金は確実に減ってしまうのです。
そうです。この部分が「キャッシュフロー」と呼ばれるもの考え方です。
キャッシュフローがマイナスの会社の運命は「破産」に向かっている
わけですから、その状態を放置しておくわけにはいかないはずです。
これが「安売りの落とし穴」なのです。
「安売り合戦」の勝者は1人
安売りをするということは、「薄利多売」により
利益を稼ぎ出す戦略です。
突き詰めていくと安売りや薄利多売型のビジネスモデルには
勝者は1人しかいないことがわかります。
では、それは誰なのでしょう。
答えは
「業界のトップ企業」です。
資金力と販売力により消耗戦に持ち込めばいいだけの話です。
相手は、耐えることができなくなり、消えていきます。
市場の寡占化防止のため、実際にはそんなことは起きませんが
理論的には、最も体力がある会社しか生き残れません。
つまり「安売り競争」や「薄利多売」は、
資金力のある大手企業だからできる戦略なのです。
中小企業が安易に価格競争に飛び込むと、
あっと言う間に、体力を消耗し、
最悪の場合、破産に追い込まれてしまこととなります。
社員に利益の重要性を理解させる方法
社員に利益の重要性を理解してもらうためには、
以下の2点を分かりやすく説明することが重要です。
1. 会社の利益の仕組み
2. 利益と給与の関係
1. 利益の仕組みを分かりやすくする!
普段私は、社員さんたちに対して図形を使い
会社の会計と個人の家計を連動させて説明しています。
すると、社員さんたちにも理解しやすくなります。
この図形を連動させるのです。
項目を家庭用に下記のように変えてあげるだけです。
売値 = 給与支給額
変動費 = 所得税などの税金や社会保険料
粗利 = 手取り
固定費 = 食費や家賃など
利益 = 遊興費や貯金
このように会社の図形と個人の図形を並べてあげたうえで
「一番、増やしたいところは、どのブロックですか?」
と尋ねます。
多くの方は、自分の懐に入るお金である「手取り」と答えます。
確かに「手取り」の源泉は「支給額」ですが
税金や社会保険料のしくみが階段状になっていることを
知っていれば、支給額アップにより税率や社保の保険料が
上がってしまい、手取りが減ることがわかるはずです。
今流行りの言葉で言えば「103万の壁」や「130万の壁」です。
このように、会社の収益構造と家計を対比してみると
「粗利=手取り」が一番大切なことが理解してもらえます。
2. 利益と給与の関係性を明確に!
「粗利が大きくなれば、給与もアップする、賞与も増える」
という関係性を明確に示すことが重要です。
これも、上記の図形を見ると一目瞭然となります。
給与等の人件費は中小企業の場合
「固定費」の中の大部分を占めます。
つまり、「粗利」を大きくすることが
人件費を大きくすることにつながります。
(労働分配率を下げないという前提です。
下げるのは経営判断となりますが
「頑張っても、報われない」こととなり
社員さんの雇用や、やる気に悪影響が出かねません)
売上ばかりを追求し、安易な安売りや値引きをしてしまうと、
会社の利益は減少し、結果的に給与や賞与にも
悪影響があることを理解してもらいましょう。
利益を追求し、会社も社員も共に成長を!
今回は、会社にとって「利益」がなぜ重要なのか、
そして、その重要性を社員にも理解してもらうための
分かりやすい説明方法をご紹介しました。
利益を追求することは、会社を成長させ、
社員の待遇を向上させることに繋がります。
ぜひ、本記事を参考にして、
社員一人ひとりが「利益」を意識して行動できるような
社内体制を構築していきましょう。
み~んな「笑顔」✨