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その想いで、一生懸命書き続けます。
先日、とある地方紙にこんな見出しが躍っていた。
「宅配 値下げ競争激化」
記事によると、まだ全国に広まっているサービスではないようですが
東京でも開始さましたから、近い将来
多くの人が、その恩恵にあずかれるかもしれませんね。
さて、このニュース、要約すると
宅配メニューを店頭と同じ価格にしてくれる値引きサービスです
この施策に参加した、とある「ラーメン店」
1か月で「売上4倍」になったそうです。
(出典元 北海道新聞 9/3)
しかし、・・・?
大切なのは「売上4倍」ではありません。
あくまで「利益」です。
その中でも、あらゆる利益の根源である「粗利」
ここに注目することが、この「割引による利益増」の成否を分けます。
では、具体的な数字を使って解説します。
数字自体はあくまで架空の数字であることを、ご理解下さい
【前提条件】
あるラーメン店が、デリバリーで1杯1300円
(ラーメン店の売上1000円+配達料300円)のラーメンを月500杯売っています。
原価率は40% 粗利率は60%
今回、提供価格を「配達料込み1000円」に値下げするキャンペーンに参加することにしました。
値下げ分の300円は、お店とデリバリー業者で150円ずつ負担します。
さて、この「1杯あたり150円の負担」は、お店の利益にどう影響するのでしょうか?
今回は「値引き前の粗利額」と同額を「値引き後」も稼ぐには
販売数をどれくらい増やす必要があるか計算してみます。
ケースA(粗利率60%の商品の場合)
「キャンペーン前」ラーメン店の粗利額を計算
1000円-原価400円=600円の粗利/1杯
600円×500杯=月間粗利額 300000円
「キャンペーン後」の粗利額
1000円-原価400円―値引き150円=450円の粗利/1杯
答え
300000円÷450円=666.666杯
すなわち「667杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。
1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば
1.334倍の労力が必要となります。
売上個数にすると、33.4%アップ必要となります。
ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店は
大幅な「利益増」となったであろうことが推測されます。
ケースB(粗利率20%の商品の場合)
今回は比較しやすいように同じ価格設定で商品もラーメンとします
「キャンペーン前」の粗利額を計算しましょう
1000円-原価800円=200円の粗利/1杯
200円×500杯=月間粗利額 100000円
「キャンペーン後」の粗利額
1000円-原価800円―値引き150円=50円の粗利/1杯
答え
100000円÷50円=2000杯
すなわち「2000杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。
1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば
4倍の労力が必要となります。
売上個数にすると、400%アップ必要となります。
ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店でも
労力に見合った、もしくは経費に見合った「利益増」となったかどうかは
疑問符が付きます。
クイック早見表
(売価1000円・店舗負担150円・旧販売500杯)
粗利率
旧粗利/杯
新粗利/杯
倍率=旧粗利÷新粗利
必要杯数(切上)
70%
700
550
1.273
637杯
60%
600
450
1.334
667杯
50%
500
350
1.429
715杯
45%
450
300
1.500
750杯
40%
400
250
1.600
800杯
35%
350
200
1.750
875杯
30%
300
150
2.000
1000杯
25%
250
100
2.500
1250杯
20%
200
50
4.000
2000杯
15%
150
0
―
不可
10%
100
-50
―
不可
なぜ、ここまで差がつくのか?
答えはシンプルです。 お店の負担額(150円)は、売上からではなく「粗利」から直接引かれるからです。
ケース1では、もともと600円あった利益から150円引かれるので、まだ450円の利益が残ります。
ケース2では、もともと200円しかなかった利益から150円引かれるため、50円の利益しか残りません。
もともとの利益が少ない商品ほど、割引によるダメージは致命的になるのです。
まとめ:割引販売する前に、必ずやるべきこと
割引販売やキャンペーン販売は、新規顧客の獲得やお店の認知度アップに繋がる強力なツールです。
しかし、その甘い誘惑に乗る前に、ぜひ一度立ち止まってください。
1.自社の商品の「粗利率」を正確に把握する
まずは、自分の武器(商品)がどれくらいの利益を生む力を持っているのかを知ることがスタートです
「〇〇原価報告書」が存在する業種は、この数字を、把握する時は注意が必要です
2.キャンペーン後の「1商品あたりの利益」を計算する
「売上がいくらになるか」ではなく、「利益がいくら残るか」を必ずシミュレーションしましょう
大切なのは「売上」ではなく「利益」です
P/L(損益計算書)の「売上」と「利益」しか見ていない経営は非常に危険です
値下げは「賭け」ではなく「戦略」と考えましょう
3.利益が減ってでも達成したい「目的」を考える
「今回は赤字でも、新規顧客を増やしてリピートに繋げるのが目的だ」というように、
利益以外の目的が明確なら、戦略的な値下げもアリです
根拠のない、感覚基準での値下げに踏み切るのは、本当に危険です
この記事が、あなたの大切な会社やお店を守る一助となれば幸いです。
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