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社長が今すぐ確認すべき”たった1つ”の数字「粗利率が通知表」:中小企業の儲かる仕組みを再設計「粗利編」
2025.10.30
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
売上が伸びているのに利益が残らない原因は、「売上」だけを見て「粗利(あらり)」を管理していないからです。
粗利とは「売上高から商品の仕入れや製造にかかった原価を引いたもの」で、会社の儲けの源泉です。
家賃や人件費といった経費は、すべてこの粗利から支払われます。
そのため、粗利が不足すれば会社は絶対に儲かりません。
まず、自社の「粗利率(粗利 ÷ 売上)」を把握し、業界平均と比べてみましょう。
これが自社の「儲ける力」を知る第一歩です。
その上で、利益を増やすには以下の3つの視点が重要です。
安易な値引きはしない:たった数パーセントの値引きが、利益を大幅に削ってしまいます。
「率」と「回転」で考える:粗利率が低くても、たくさん売れる商品の方が会社に貢献していることがあります。
粗利率自体を改善する:「単価アップ」「原価ダウン」「儲かる商品の販売比率アップ」は、無理に売上を伸ばすより効果的です。
ドンブリ勘定から抜け出すには、経営者が「粗利」に注目し、儲かる仕組みを設計することが大切です。
本文
売上は伸びているのに、口座にお金が残らない。
原因は「売上」だけを見て「粗利(売上総利益)」を管理していないことにあります。
粗利は販管費と利益の「源泉」です。ここが不足すれば、会社は絶対に儲かりません。
今回は、あなたの会社の「儲かる力」の設計図の書き方の話です。
財務諸表(P/L)が読めなくても大丈夫。
この記事を読み終える頃には、「ドンブリ勘定」から抜け出すヒントが必ず見つかります。
1. ズバリ、「粗利」とは「儲けの設計図」
まず、粗利とは何か。
正式名称は「売上総利益」と言います。
「利益を残す」という観点から見れば、最も重要な利益です。
計算式はシンプル
粗利(売上総利益) = 売上高 − 売上原価
「売上原価」とは、「その商品を売るために、「直接かかったコスト」のこと。
業種ごとに少し中身が違います。
小売業・卸売業(モノを仕入れて売る)
「売上原価」= 商品の仕入れ代
製造業(モノを作って売る)
「売上原価」= 材料費 + 工場でかかったお金(製造ラインの人の給料、工場の電気代、機械の減価償却費など)
サービス業(技術・労働力を売る)
「売上原価」= 外注費 や プロジェクトに直接関わった人(エンジニアやデザイナー)の人件費 など
※サービス業は会社によって定義が異なります。
なぜ、この「粗利」が重要なのでしょうか?
それは、粗利こそが「すべての利益の源泉」であり、
会社が「販管費」を支払うための唯一の原資だからです。
「販管費」とは、家賃、給料、役員報酬、広告宣伝費、交通費など、
「商品を売るために「間接的」にかかった費用」のことです。
(会社の儲けの構造イメージ)
売上 1,000万円
↓
売上原価 600万円(仕入や製造コスト)
↓
粗利 400万円 ← ココが会社の「支払いの原資」
↓
販管費 300万円(家賃・給料・広告費など)
↓
営業利益 100万円(本業での最終的な儲け)
上記の場合、粗利が300万円以下なら赤字。
それ以上なら、黒字。
つまり、粗利が足りなければ、会社は絶対に儲からないのです。
2. 要注意!「限界利益」と「粗利」の違い
ここで、多くの経営者が混乱するポイントを整理します。
前回学んだ「限界利益」と、今回学んでいる「粗利」。
どちらも大事ですが、使う目的がまったく違います。
(例)あなたは、パン屋さんです
限界利益(=現場の「GO/STOP」判断)
目的:この「特注パン100個」の注文、受ける?やめる?
計算:(パンの売値)−(変動費)
変動費:小麦粉代、卵代、パンを入れる袋代など(=売れたら増えるお金)
使い方:限界利益がプラスなら、固定費(家賃など)の回収に貢献するから「受ける」。マイナス(赤字)なら「断る」。
粗利(=経営の「儲かる仕組み」診断)
目的:ウチのパン屋、そもそもビジネスとして儲かる設計になってる?
計算:(パン屋全体の売上)−(売上原価)
売上原価:変動費(小麦粉・卵・袋)+ 製造にかかる固定費(パン職人の給料、工場の減価償却費、工場の家賃など)
使い方:粗利がカツカツなら、「パンの値段が安すぎる」か「原価が高すぎる」ということ。ビジネスモデル自体の見直しが必要
一番の違いは、「粗利」を計算するときの「売上原価」には、
固定費の一部(製造にかかる人件費や家賃など)が含まれる点です。
「限界利益」は、現場の営業マンが「この案件、受ける?」を判断するための「戦闘用」の数字。
「粗利」は、経営者が「ウチの会社、儲かる体質?」を診断するための「戦略用」の数字。
まずはこの違いをしっかり押さえてください。
3. 自社の「粗利率」を知らないのは「危険信号」
粗利は「金額」も大事ですが、経営者はそれ以上に「率」に注目しなければなりません。
粗利率(売上総利益率) = 粗利 ÷ 売上高 × 100
粗利率は、あなたの会社の「商品力」「価格設定」「仕入れ交渉力」がすべて詰まった「通知表」です。
では、自社の粗利率は高いのか、低いのか。
ここで、業種別の「粗利率」の平均目安を見てみましょう。(※中小企業実態基本調査 令和4年度実績より)
業種
平均粗利率
卸売業
約 15.1%
製造業
約 20.7%
運輸業
約 23.4%
小売業
約 30.4%
不動産業
約 46.3%
情報通信業
約 47.5%
専門サービス業
約 56.8%
宿泊業・飲食業
約 63.3%
いかがでしょうか?
あなたの会社の決算書と比べてみてください。
もし自社が小売業なのに粗利率が20%しかなければ、同業他社より「安く売りすぎている」か「高く仕入れすぎている」可能性が高い、という危険信号です。
4. 経営者が知るべき「粗利」3つの実務テクニック
粗利率の重要性がわかったら、次はこの数字を使って経営を「見える化」します。
テクニック1:「値引き」は「悪魔のささやき」
「売上がほしい。5%くらいなら」と安易な値引きをしていませんか?
その5%が、利益にどれだけインパクトを与えるか計算してみます。
「値引きの本当の恐ろしさ」がわかる魔法の計算式があります。
粗利の減少率 ≒ 値引き率 ÷ 粗利率
(例)あなたの会社の商品が、粗利率40%だったとします
この商品を5%値引きしたら、粗利(儲け)は何%減るでしょうか?
5%(値引き率) ÷ 40%(粗利率) = 12.5%
驚くことに、たった5%の値引きが、会社の「粗利」を12.5%も吹き飛ばしてしまうのです。
「5%値引き」は「ちょっと」ではなく、粗利を1/8消す行為だと知ってください。
値引くなら、その分の数量を「おまけ」するや、
前金入金、入金サイトの前倒しなどで取り返すのが鉄則です。
テクニック2:「率」と「回転」の掛け算で見る
粗利率が高い商品=良い商品、と決めつけてはいけません。
大事なのは「粗利率」と「販売数(回転)」をセットで見ることです。
商品A(高利益)
商品B(薄利多売)
単価
10,000円
5,000円
原価
6,000円
4,000円
粗利率
40%
20%
月の販売数(回転)
10個
100個
月間粗利額
40,000円
100,000円
一見、商品Aの方が粗利率が高くて優秀そうですが、
数が売れる商品Bの方が、会社に2.5倍の粗利(儲け)をもたらしています。
「粗利率は低くても、数が回る」そんな商品を見つけるのが、経営のツボです。
テクニック3:「商品×顧客」で“儲けの地図”を描く
「どの商品が儲かっているか」だけでなく、「どのお客様が儲けさせてくれているか」を把握していますか?
これを「見える化」するのが「粗利マトリクス」です。
顧客\商品
商品A(高単価)
商品B(中単価)
商品C(低単価)
顧客X
▲(赤字)
◯(そこそこ)
◎(主力)
顧客Y
◎(高粗利)
△(低回転)
▲(値引き多)
顧客Z
◯(そこそこ)
◎(主力)
◯(そこそこ)
こういう表をつくることで、「売上は大きいけど、実は赤字の顧客Yには商品Cを売るのをやめよう」とか、
「優良顧客の顧客Zには、新商品の提案を強化しよう」といった、感覚ではない「戦略」が立てられるようになります。
5. 粗利を増やす3つの処方箋
「売上を上げろ!」と号令をかける前に、社長がやるべきは「粗利率の改善」です。
売上はそのままでも、設計次第で利益は増えます。
(現状)売上5,000万円、粗利率30% → 粗利1,500万円
ここから、3つの処方箋を実行します。
価格を3%だけ是正する(単価アップ)「値上げは怖い」と思わず、チラシや見積もりの“端数”を整えるだけでも効果があります。→ これで粗利率が +3pt(33%に)
原価を2%だけ下げる(原価ダウン)仕入先の見直し、送料のまとめ交渉、決済手数料の区分け見直しなどで達成します。→ これで粗利率がさらに +2pt(35%に)
「儲かる商品の比率を増やす」(構成見直し)テクニック3の地図を見て、粗利率の高い商品を優先的に提案するよう営業トークを変えます。→ これで粗利率がさらに +2pt(37%に)
(結果)
粗利率 30% → 37%(+7pt改善)
→ 同じ売上5,000万円でも、粗利は1,850万円(+350万円)
粗利を350万円増やすために必要な売上は
350万円 ÷ 0.3 = 1,166万7千円(約1,167万円)
「粗利率の設計見直し」と「売上アップ」
どちらが現実的か、ここが「社長の決断」となります。
まとめ:社長の仕事は「粗利」を見ること
「売上」だけを追いかける経営は、アクセルだけを踏んで、燃料計を見ていない車と同じです。
いつガス欠(=資金ショート)になってもおかしくありません。
財務が苦手な経営者こそ、「売上」よりも「粗利(売上総利益)」の数字に注目してください。
まず、自社の決算書で「粗利額」と「粗利率」を確認する
同業他社の平均と比べて、自社の「儲ける力」がどの位置にあるか知る
「値引きの恐ろしさ」「率×回転」「商品×顧客」で、儲けの地図を確認
「単価」「原価」「商品構成」の3つにメスを入れ、粗利率を改善する
これが、「ドンブリ勘定」から抜け出し、「儲かる仕組み」を作るための、経営者としての一番確実な第一歩です。
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財務が苦手な社長のための『会社の稼ぎ』が見える化できる一番やさしい話 「限界利益編」
2025.10.29
忙しいあなたへ「1分で読める」AI要約
経営判断を「勘」や「売上優先」で行うと、知らないうちに赤字の仕事を受けているかもしれません。
そこで役立つのが、会社の「かせぎ」を示す限界利益(=売上-変動費)です。
これを使えば、「どこまで値引きできるか」という最低ラインが明確になり、
現場での価格交渉がスムーズになります。
さらに、月の固定費を稼ぐために必要な売上高である「損益分岐点」を計算すれば、
月々の最低目標がクリアになります。
案件を受ける際は、以下のの3ステップで判断しましょう。
「①限界利益はプラスか」「②損益分岐点の達成に貢献するか」「③資金繰りは問題ないか」
このフレームワークを使えば、日々の「受けるか、やめるか」の判断を、
自信を持って迅速に行えるようになります。
本文
「財務」で勝ち残りたい社長のための「限界利益」超入門
「この案件、受けるべきか…?」
「値引きの相談が来たけど、どこまで下げて大丈夫かね〜?」
経営者や次期経営者にとって、こういう「その場の判断」は毎日のようにやってくる。
でも、その判断を「勘」と「売上優先」で動いていませんか?
実はそれ、売れば売るほど赤字の仕事を受けているかもしれませんよ。
1.30秒でわかる 「かせぎ」の正体(=限界利益)
まず、今回覚えてほしいのはたった一つの言葉
限界利益=売上 − 変動費
「変動費」ってなにかというと、「売れたら増える費用」のこと
変動費(売れたら増える)
材料費、仕入代
外注費(作れば払う)
決済手数料(カードなど)
送料、梱包費
固定費(売れても変わらない)
給料、オフィス家賃
広告(定額)、リース代
管理系の人件費
限界利益は、「会社にどれだけ“かせぎ”が残ったか」を表します
【3行で計算】
もし1個1,000円の商品を、変動費600円で作って500個売ったら?
限界利益=(1,000−600)×500=200,000円
この20万円が、家賃・人件費などの「固定費」を支える「かせぎ」
2. 値引きOKの「ゼロ点」って、どこ?
「どこまでなら値引きして大丈夫か?」
これを教えてくれるのも、限界利益
【基本ルール】
ゼロ点=変動費
変動費600円の商品なら、600円で売ったら限界利益0円
それ以下の価格は、売れば売るほど赤字
安全マージンを足して「最低ライン」を決めよう(実務編)
送料の上振れ、手数料の見落としなどのいわゆる「諸経費」
600円 × 1.03(安全マージン3%)= 618円
この「618円」が、営業が死守するラインとなる
※マージンをどれくらいに設定するかは、個社判断
ここまでは、言ってみれば営業などの現場の仕事です。
この「618円」が現場で承知されれば
現場レベルで「値引き交渉」に対応ができます。
3. その仕事、受けていい?「損益分岐点」で見える化
売って残る「かせぎ」が限界利益なら
それで「月の固定費をまかなえるか?」を見るのが「損益分岐点」
通常、社員は自社の「固定費」がどれくらいなのか知らない
つまり、ここから先は「経営層」が判断を下すこととなります。
【計算】
損益分岐点=固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率=(単価−変動費)÷ 単価
→ 例:(1,000−600)÷ 1,000=40%
固定費が月200万円ならば、200万円 ÷ 0.4=500万円
月500万円売れば、トントンということ。
まず500万円を超えるのが最低目標となります。
ここを超えると利益が増えていくことになります。
4. 【受注判定フロー】この3ステップで判断!
ステップ1:限界利益はプラスか?
「ゼロ点以下なら原則NG」それでも売るべきかどうかは
戦略的に考えましょう
ステップ2:損益分岐点を超える助けになるか?
今月あと少しで届くなら、受ける価値アリ
分岐点500万円、現在480万円、今回の取引の限界利益20万円
このような場合は、前向きに受注を検討しましょう
ステップ3:キャッシュは詰まらないか?
入金が遅くない?前金はもらえないか?
ここが一番重要です
限界利益がプラスでも、「入金が半年後」「前金ゼロ」といった条件だとどうでしょう?
先に変動費(仕入代)や固定費(給料)の支払いが来てしまい、資金繰りが詰まります(黒字倒産)
限界利益が薄い(例:5%)のに、大量の受注をすると、売れば売るほど手元の現金が減っていく事態にもなります
この3つがすべてOKなら、「GOサイン」を出せる仕事と言えます。
1つでも怪しい、もしくは「今回だけは」などの戦略的判断や
「支払い条件の交渉」などは、まさに「社長の腕の見せどころ」となります。
5.今日からやってみること
1.変動費の定義を社内で統一する
→ 材料費?外注費?まずは見える化
2.代表商品の「限界利益」「ゼロ点」を出してみる
→ 価格交渉が楽になり、判断基準が明確になる
3.損益分岐点(=最低売上目標)を1回だけでいいから計算する
→ 今月の「目安」が見えてくる。通常、固定費は大きく変わらないはず
6. よくある“落とし穴”と回避策
落とし穴:売上至上主義(限界利益が薄い大量受注で資金ショート)回避:限界利益率の下限を設定(例:20%未満の新規は要決裁など)
落とし穴:最低売価の未共有(現場が気づかず値引き)回避:商品別・顧客別の最低売価一覧を営業に配布
落とし穴:利益OKでもキャッシュNG(入金遅延)回避:着手金・中間金・サイト短縮を標準の提案項目に盛り込む
7. 30秒テンプレ(そのまま使える!)
限界利益:(単価_____ − 変動費_____) × 数量_____ = _____円
最低売価:変動費_____ × 1.03〜1.05 = _____円
分岐点:固定費_____ ÷ 限界利益率_____ = 売上_____円
まとめ
限界利益で「案件のかせぎ」を即確認
最低売価で「値引きのデッドライン」を全社共有
損益分岐点で「今月のクリアライン(最低目標売上高)」を把握
この3点セットで、「受ける・値引く・やめる」を1分で判断できます。
まずは主力商品の変動費→最低売価→限界利益率を今日中に書き出して、
営業全員に配布しましょう。明日から、判断の質が変わります。
ちょっとひと言
「数字は苦手でね」という経営者ほど、限界利益を知ると行動が変わってきます。
損益分岐点を知ると、会社にお金が貯まってきます。
「なんだこれ、赤字だったのか!」って気づいたらもう前進
頑張りすぎず、ひとつずつ、「数字と仲よく」していきましょう。
2025.10.30
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
売上が伸びているのに利益が残らない原因は、「売上」だけを見て「粗利(あらり)」を管理していないからです。
粗利とは「売上高から商品の仕入れや製造にかかった原価を引いたもの」で、会社の儲けの源泉です。
家賃や人件費といった経費は、すべてこの粗利から支払われます。
そのため、粗利が不足すれば会社は絶対に儲かりません。
まず、自社の「粗利率(粗利 ÷ 売上)」を把握し、業界平均と比べてみましょう。
これが自社の「儲ける力」を知る第一歩です。
その上で、利益を増やすには以下の3つの視点が重要です。
安易な値引きはしない:たった数パーセントの値引きが、利益を大幅に削ってしまいます。
「率」と「回転」で考える:粗利率が低くても、たくさん売れる商品の方が会社に貢献していることがあります。
粗利率自体を改善する:「単価アップ」「原価ダウン」「儲かる商品の販売比率アップ」は、無理に売上を伸ばすより効果的です。
ドンブリ勘定から抜け出すには、経営者が「粗利」に注目し、儲かる仕組みを設計することが大切です。
本文
売上は伸びているのに、口座にお金が残らない。
原因は「売上」だけを見て「粗利(売上総利益)」を管理していないことにあります。
粗利は販管費と利益の「源泉」です。ここが不足すれば、会社は絶対に儲かりません。
今回は、あなたの会社の「儲かる力」の設計図の書き方の話です。
財務諸表(P/L)が読めなくても大丈夫。
この記事を読み終える頃には、「ドンブリ勘定」から抜け出すヒントが必ず見つかります。
1. ズバリ、「粗利」とは「儲けの設計図」
まず、粗利とは何か。
正式名称は「売上総利益」と言います。
「利益を残す」という観点から見れば、最も重要な利益です。
計算式はシンプル
粗利(売上総利益) = 売上高 − 売上原価
「売上原価」とは、「その商品を売るために、「直接かかったコスト」のこと。
業種ごとに少し中身が違います。
小売業・卸売業(モノを仕入れて売る)
「売上原価」= 商品の仕入れ代
製造業(モノを作って売る)
「売上原価」= 材料費 + 工場でかかったお金(製造ラインの人の給料、工場の電気代、機械の減価償却費など)
サービス業(技術・労働力を売る)
「売上原価」= 外注費 や プロジェクトに直接関わった人(エンジニアやデザイナー)の人件費 など
※サービス業は会社によって定義が異なります。
なぜ、この「粗利」が重要なのでしょうか?
それは、粗利こそが「すべての利益の源泉」であり、
会社が「販管費」を支払うための唯一の原資だからです。
「販管費」とは、家賃、給料、役員報酬、広告宣伝費、交通費など、
「商品を売るために「間接的」にかかった費用」のことです。
(会社の儲けの構造イメージ)
売上 1,000万円
↓
売上原価 600万円(仕入や製造コスト)
↓
粗利 400万円 ← ココが会社の「支払いの原資」
↓
販管費 300万円(家賃・給料・広告費など)
↓
営業利益 100万円(本業での最終的な儲け)
上記の場合、粗利が300万円以下なら赤字。
それ以上なら、黒字。
つまり、粗利が足りなければ、会社は絶対に儲からないのです。
2. 要注意!「限界利益」と「粗利」の違い
ここで、多くの経営者が混乱するポイントを整理します。
前回学んだ「限界利益」と、今回学んでいる「粗利」。
どちらも大事ですが、使う目的がまったく違います。
(例)あなたは、パン屋さんです
限界利益(=現場の「GO/STOP」判断)
目的:この「特注パン100個」の注文、受ける?やめる?
計算:(パンの売値)−(変動費)
変動費:小麦粉代、卵代、パンを入れる袋代など(=売れたら増えるお金)
使い方:限界利益がプラスなら、固定費(家賃など)の回収に貢献するから「受ける」。マイナス(赤字)なら「断る」。
粗利(=経営の「儲かる仕組み」診断)
目的:ウチのパン屋、そもそもビジネスとして儲かる設計になってる?
計算:(パン屋全体の売上)−(売上原価)
売上原価:変動費(小麦粉・卵・袋)+ 製造にかかる固定費(パン職人の給料、工場の減価償却費、工場の家賃など)
使い方:粗利がカツカツなら、「パンの値段が安すぎる」か「原価が高すぎる」ということ。ビジネスモデル自体の見直しが必要
一番の違いは、「粗利」を計算するときの「売上原価」には、
固定費の一部(製造にかかる人件費や家賃など)が含まれる点です。
「限界利益」は、現場の営業マンが「この案件、受ける?」を判断するための「戦闘用」の数字。
「粗利」は、経営者が「ウチの会社、儲かる体質?」を診断するための「戦略用」の数字。
まずはこの違いをしっかり押さえてください。
3. 自社の「粗利率」を知らないのは「危険信号」
粗利は「金額」も大事ですが、経営者はそれ以上に「率」に注目しなければなりません。
粗利率(売上総利益率) = 粗利 ÷ 売上高 × 100
粗利率は、あなたの会社の「商品力」「価格設定」「仕入れ交渉力」がすべて詰まった「通知表」です。
では、自社の粗利率は高いのか、低いのか。
ここで、業種別の「粗利率」の平均目安を見てみましょう。(※中小企業実態基本調査 令和4年度実績より)
業種
平均粗利率
卸売業
約 15.1%
製造業
約 20.7%
運輸業
約 23.4%
小売業
約 30.4%
不動産業
約 46.3%
情報通信業
約 47.5%
専門サービス業
約 56.8%
宿泊業・飲食業
約 63.3%
いかがでしょうか?
あなたの会社の決算書と比べてみてください。
もし自社が小売業なのに粗利率が20%しかなければ、同業他社より「安く売りすぎている」か「高く仕入れすぎている」可能性が高い、という危険信号です。
4. 経営者が知るべき「粗利」3つの実務テクニック
粗利率の重要性がわかったら、次はこの数字を使って経営を「見える化」します。
テクニック1:「値引き」は「悪魔のささやき」
「売上がほしい。5%くらいなら」と安易な値引きをしていませんか?
その5%が、利益にどれだけインパクトを与えるか計算してみます。
「値引きの本当の恐ろしさ」がわかる魔法の計算式があります。
粗利の減少率 ≒ 値引き率 ÷ 粗利率
(例)あなたの会社の商品が、粗利率40%だったとします
この商品を5%値引きしたら、粗利(儲け)は何%減るでしょうか?
5%(値引き率) ÷ 40%(粗利率) = 12.5%
驚くことに、たった5%の値引きが、会社の「粗利」を12.5%も吹き飛ばしてしまうのです。
「5%値引き」は「ちょっと」ではなく、粗利を1/8消す行為だと知ってください。
値引くなら、その分の数量を「おまけ」するや、
前金入金、入金サイトの前倒しなどで取り返すのが鉄則です。
テクニック2:「率」と「回転」の掛け算で見る
粗利率が高い商品=良い商品、と決めつけてはいけません。
大事なのは「粗利率」と「販売数(回転)」をセットで見ることです。
商品A(高利益)
商品B(薄利多売)
単価
10,000円
5,000円
原価
6,000円
4,000円
粗利率
40%
20%
月の販売数(回転)
10個
100個
月間粗利額
40,000円
100,000円
一見、商品Aの方が粗利率が高くて優秀そうですが、
数が売れる商品Bの方が、会社に2.5倍の粗利(儲け)をもたらしています。
「粗利率は低くても、数が回る」そんな商品を見つけるのが、経営のツボです。
テクニック3:「商品×顧客」で“儲けの地図”を描く
「どの商品が儲かっているか」だけでなく、「どのお客様が儲けさせてくれているか」を把握していますか?
これを「見える化」するのが「粗利マトリクス」です。
顧客\商品
商品A(高単価)
商品B(中単価)
商品C(低単価)
顧客X
▲(赤字)
◯(そこそこ)
◎(主力)
顧客Y
◎(高粗利)
△(低回転)
▲(値引き多)
顧客Z
◯(そこそこ)
◎(主力)
◯(そこそこ)
こういう表をつくることで、「売上は大きいけど、実は赤字の顧客Yには商品Cを売るのをやめよう」とか、
「優良顧客の顧客Zには、新商品の提案を強化しよう」といった、感覚ではない「戦略」が立てられるようになります。
5. 粗利を増やす3つの処方箋
「売上を上げろ!」と号令をかける前に、社長がやるべきは「粗利率の改善」です。
売上はそのままでも、設計次第で利益は増えます。
(現状)売上5,000万円、粗利率30% → 粗利1,500万円
ここから、3つの処方箋を実行します。
価格を3%だけ是正する(単価アップ)「値上げは怖い」と思わず、チラシや見積もりの“端数”を整えるだけでも効果があります。→ これで粗利率が +3pt(33%に)
原価を2%だけ下げる(原価ダウン)仕入先の見直し、送料のまとめ交渉、決済手数料の区分け見直しなどで達成します。→ これで粗利率がさらに +2pt(35%に)
「儲かる商品の比率を増やす」(構成見直し)テクニック3の地図を見て、粗利率の高い商品を優先的に提案するよう営業トークを変えます。→ これで粗利率がさらに +2pt(37%に)
(結果)
粗利率 30% → 37%(+7pt改善)
→ 同じ売上5,000万円でも、粗利は1,850万円(+350万円)
粗利を350万円増やすために必要な売上は
350万円 ÷ 0.3 = 1,166万7千円(約1,167万円)
「粗利率の設計見直し」と「売上アップ」
どちらが現実的か、ここが「社長の決断」となります。
まとめ:社長の仕事は「粗利」を見ること
「売上」だけを追いかける経営は、アクセルだけを踏んで、燃料計を見ていない車と同じです。
いつガス欠(=資金ショート)になってもおかしくありません。
財務が苦手な経営者こそ、「売上」よりも「粗利(売上総利益)」の数字に注目してください。
まず、自社の決算書で「粗利額」と「粗利率」を確認する
同業他社の平均と比べて、自社の「儲ける力」がどの位置にあるか知る
「値引きの恐ろしさ」「率×回転」「商品×顧客」で、儲けの地図を確認
「単価」「原価」「商品構成」の3つにメスを入れ、粗利率を改善する
これが、「ドンブリ勘定」から抜け出し、「儲かる仕組み」を作るための、経営者としての一番確実な第一歩です。
2025.10.29
忙しいあなたへ「1分で読める」AI要約
経営判断を「勘」や「売上優先」で行うと、知らないうちに赤字の仕事を受けているかもしれません。
そこで役立つのが、会社の「かせぎ」を示す限界利益(=売上-変動費)です。
これを使えば、「どこまで値引きできるか」という最低ラインが明確になり、
現場での価格交渉がスムーズになります。
さらに、月の固定費を稼ぐために必要な売上高である「損益分岐点」を計算すれば、
月々の最低目標がクリアになります。
案件を受ける際は、以下のの3ステップで判断しましょう。
「①限界利益はプラスか」「②損益分岐点の達成に貢献するか」「③資金繰りは問題ないか」
このフレームワークを使えば、日々の「受けるか、やめるか」の判断を、
自信を持って迅速に行えるようになります。
本文
「財務」で勝ち残りたい社長のための「限界利益」超入門
「この案件、受けるべきか…?」
「値引きの相談が来たけど、どこまで下げて大丈夫かね〜?」
経営者や次期経営者にとって、こういう「その場の判断」は毎日のようにやってくる。
でも、その判断を「勘」と「売上優先」で動いていませんか?
実はそれ、売れば売るほど赤字の仕事を受けているかもしれませんよ。
1.30秒でわかる 「かせぎ」の正体(=限界利益)
まず、今回覚えてほしいのはたった一つの言葉
限界利益=売上 − 変動費
「変動費」ってなにかというと、「売れたら増える費用」のこと
変動費(売れたら増える)
材料費、仕入代
外注費(作れば払う)
決済手数料(カードなど)
送料、梱包費
固定費(売れても変わらない)
給料、オフィス家賃
広告(定額)、リース代
管理系の人件費
限界利益は、「会社にどれだけ“かせぎ”が残ったか」を表します
【3行で計算】
もし1個1,000円の商品を、変動費600円で作って500個売ったら?
限界利益=(1,000−600)×500=200,000円
この20万円が、家賃・人件費などの「固定費」を支える「かせぎ」
2. 値引きOKの「ゼロ点」って、どこ?
「どこまでなら値引きして大丈夫か?」
これを教えてくれるのも、限界利益
【基本ルール】
ゼロ点=変動費
変動費600円の商品なら、600円で売ったら限界利益0円
それ以下の価格は、売れば売るほど赤字
安全マージンを足して「最低ライン」を決めよう(実務編)
送料の上振れ、手数料の見落としなどのいわゆる「諸経費」
600円 × 1.03(安全マージン3%)= 618円
この「618円」が、営業が死守するラインとなる
※マージンをどれくらいに設定するかは、個社判断
ここまでは、言ってみれば営業などの現場の仕事です。
この「618円」が現場で承知されれば
現場レベルで「値引き交渉」に対応ができます。
3. その仕事、受けていい?「損益分岐点」で見える化
売って残る「かせぎ」が限界利益なら
それで「月の固定費をまかなえるか?」を見るのが「損益分岐点」
通常、社員は自社の「固定費」がどれくらいなのか知らない
つまり、ここから先は「経営層」が判断を下すこととなります。
【計算】
損益分岐点=固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率=(単価−変動費)÷ 単価
→ 例:(1,000−600)÷ 1,000=40%
固定費が月200万円ならば、200万円 ÷ 0.4=500万円
月500万円売れば、トントンということ。
まず500万円を超えるのが最低目標となります。
ここを超えると利益が増えていくことになります。
4. 【受注判定フロー】この3ステップで判断!
ステップ1:限界利益はプラスか?
「ゼロ点以下なら原則NG」それでも売るべきかどうかは
戦略的に考えましょう
ステップ2:損益分岐点を超える助けになるか?
今月あと少しで届くなら、受ける価値アリ
分岐点500万円、現在480万円、今回の取引の限界利益20万円
このような場合は、前向きに受注を検討しましょう
ステップ3:キャッシュは詰まらないか?
入金が遅くない?前金はもらえないか?
ここが一番重要です
限界利益がプラスでも、「入金が半年後」「前金ゼロ」といった条件だとどうでしょう?
先に変動費(仕入代)や固定費(給料)の支払いが来てしまい、資金繰りが詰まります(黒字倒産)
限界利益が薄い(例:5%)のに、大量の受注をすると、売れば売るほど手元の現金が減っていく事態にもなります
この3つがすべてOKなら、「GOサイン」を出せる仕事と言えます。
1つでも怪しい、もしくは「今回だけは」などの戦略的判断や
「支払い条件の交渉」などは、まさに「社長の腕の見せどころ」となります。
5.今日からやってみること
1.変動費の定義を社内で統一する
→ 材料費?外注費?まずは見える化
2.代表商品の「限界利益」「ゼロ点」を出してみる
→ 価格交渉が楽になり、判断基準が明確になる
3.損益分岐点(=最低売上目標)を1回だけでいいから計算する
→ 今月の「目安」が見えてくる。通常、固定費は大きく変わらないはず
6. よくある“落とし穴”と回避策
落とし穴:売上至上主義(限界利益が薄い大量受注で資金ショート)回避:限界利益率の下限を設定(例:20%未満の新規は要決裁など)
落とし穴:最低売価の未共有(現場が気づかず値引き)回避:商品別・顧客別の最低売価一覧を営業に配布
落とし穴:利益OKでもキャッシュNG(入金遅延)回避:着手金・中間金・サイト短縮を標準の提案項目に盛り込む
7. 30秒テンプレ(そのまま使える!)
限界利益:(単価_____ − 変動費_____) × 数量_____ = _____円
最低売価:変動費_____ × 1.03〜1.05 = _____円
分岐点:固定費_____ ÷ 限界利益率_____ = 売上_____円
まとめ
限界利益で「案件のかせぎ」を即確認
最低売価で「値引きのデッドライン」を全社共有
損益分岐点で「今月のクリアライン(最低目標売上高)」を把握
この3点セットで、「受ける・値引く・やめる」を1分で判断できます。
まずは主力商品の変動費→最低売価→限界利益率を今日中に書き出して、
営業全員に配布しましょう。明日から、判断の質が変わります。
ちょっとひと言
「数字は苦手でね」という経営者ほど、限界利益を知ると行動が変わってきます。
損益分岐点を知ると、会社にお金が貯まってきます。
「なんだこれ、赤字だったのか!」って気づいたらもう前進
頑張りすぎず、ひとつずつ、「数字と仲よく」していきましょう。