いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にする」
そのために、一生懸命書き続けます。
「資金繰りは会社の血液」とよく言われますが、
では、企業が銀行から運転資金を借りる
ベストなタイミングはいつなのでしょうか?
結論から先にお伝えすると、
それは「経営が順調なうち」です。
多くの経営者は「資金が足りなくなってから借りるものだ」
と考えがちですが、それは大きな間違い。
経営が順調で、資金に余裕がある時期にこそ、
将来の成長機会を逃さず、
金利や条件交渉でも主導権を握ることができます。
この記事では、企業が銀行から
運転資金を借り入れるべきタイミングについて、
具体的な判断軸と成功のポイントを詳しく解説します。
1. 売上好調時こそ注意!
「黒字倒産」リスクとキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)
一見矛盾しているようですが、一般的には
売上が好調な時こそ運転資金が必要になります。
新規の大口受注が増えれば、
仕入れや生産を前倒しする必要があり、
その支払い(買掛金)が先行します。
しかし、売上代金(売掛金)が入金されるのは数ヶ月後。
この「売上から入金までの期間(売掛金の回収期間)に
資金が一時的に不足する現象が、
いわゆる「資金ショート」の原因です。
その結果が黒字倒産となります。
このような状況を把握するために役立つのが、
キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)です。
CCCは「在庫日数 + 売掛金回収日数 - 買掛金支払日数」
で計算され、仕入れから販売、
現金回収までにかかる期間を示します。
と書いても、わかりづらいですよね。
なので、具体例は書きません。
何か、「プロっぽい」感じが出ますが
中小企業の経営者が使えなければ
何の意味もありません。
ですから、私は現場で、こんな式は使いません。
となると、どうするればよいのか?
私のブログでは何度も登場していますが
やはり「資金繰り表」です。
一目瞭然で資金の増減がわかりますし
運転資金の増加局面で銀行に融資の提案を求める時は
資金繰り表を銀行員に提出してあげると
とても喜ばれます。
とはいえ、資金繰り表とて、なかなか難しいという場合は
せめて「口座残高」だけでもチェックしましょう。
ただし、「毎日」です。
口座残高を毎日チェックしていれば
売り上げは伸びているのに、現金が増えない
もしくは、減っているという「違和感」を
感じ取れるはずです。
その違和感を感じたら、銀行や私のような人に相談してみましょう。
銀行員は優秀な方が多いですから
社長の「違和感」の原因を教えてくれると思います。
そして、必要があれば融資の提案をしてくれるはずです。
また、季節変動がある業種では、
繁忙期に合わせて仕入れや人員を
前倒しする資金が必須となります。
閑散期に返済原資が確保できるかも同時に確認し、
予測可能な資金需要に対しては、
余裕を持ったタイミングで融資枠を確保しておくことが重要です。
2. 成長投資と運転資金は分けて考える
事業拡大のために新規設備への投資を行う際や、
大型受注への先行発注が必要な局面では、
運転資金を設備投資で食い潰す前に、
「資金を色分け」することが重要です。
設備投資は長期融資で、
短期的な運転資金は短期融資で手当てする。
これが基本です。
残念なことにこの融資の形が「バブル崩壊後」に
日本から姿を消しました。
数年前から、銀行員の間でも「運転資金は短期融資で」
ということが当たり前となってはていますが
融資先の方が理解できていないために
短期融資を断ることもあるそうです。
しかし、短期融資の利用は、返済バランスを保ち、
会社によっては資金繰りを劇的に改善でき
資金ショートを防ぐことができます。
3. 金利サイクルと市場環境を見極める
資金調達のコストに直結するのが金利です。
2025年6月時点で日銀は金利を据え置きつつも、
年内に追加利上げの可能性を残しています。
このような金利上昇局面の場合、
当然のことですが、金利が上がる前に借りるのが鉄則です。
「余計な資金は借りたくない」
その気持ちは、よくわかります。
余計な金利の支払いも発生しますし。
ですが、金利が上がるということは
一般的に考えて「景気が拡大傾向」ということになります。
つまりは「売上アップ」のチャンスということです。
早めに、低い金利で資金調達しておくことは
金利上昇のリスクを回避する行動であり
ビジネスチャンスを確実にとらえるために必要な
「投資判断」の一つだと思います。
4. 財務指標で「健康診断」を行う
日頃から自社の財務状況を客観的に把握し、
「健康診断」を行うことも大切です。
以下のような兆候が見られたら、
借り入れ準備フェーズに移行することを検討しましょう。
営業キャッシュフローが2期連続でマイナス
・本業で現金を稼げていない状態を示します。
決算書の損益計算書では「黒字」は
営業外収益などが含まれていますので
会社は「事業」を行っているのですから
その事業時単体で「黒字」であることが必要です。
クイック比率(当座比率)が100%を下回る
・短期的な支払能力に不安がある状態です。
ざっくりですが
「現預金」(借入のある銀行に預けている定期預金等は差し引いて下さい)
「売掛債権(売掛金や受取手形)を足したものを
「流動負債」で割った数字に100を掛けた数字が
100を超えているかどうか
(現預金+売掛金)÷流動負債×100
貸借対照表から、必要な数字を拾ってきましょう。
といっても、ほんの数個です。
でも、こんな数字をいちいち計算しなくても
3ヶ月先までの資金繰り表を作成すればいいことなのです。
5. 関係性づくりは「晴れの日」に
銀行との関係構築は、
資金繰りが苦しくなってからではなく、
業績が好調な「晴れの日」こそ行うべきです。
銀行は「借りに来る時だけ顔を出す会社」よりも、
決算報告や試算表をタイムリーに提出し、
日頃から情報を共有する会社を高く評価します。
業績が好調なうちに、追加の融資枠の相談や、
将来の会社の姿を話すことにより、
信用枠を厚くしておくことが好機です。
いざという時に迅速かつ有利な条件で
資金を調達できる体制を整えておくことで、
不測の事態にも対応できるレジリエンス(回復力)
の高い企業体質を築けます。
借入交渉を成功させる3ステップ
実際に銀行に融資を申し込む際には、
以下の3つのステップを踏むことで、
交渉を有利に進められる可能性が高まります。
1.必要額を“根拠ある数字”で示す
「いつ(何か月後に)」「いくら」必要なのかを
月次資金繰り表、事業計画書、受注残一覧などを用いて、
なぜその資金が必要なのかを具体的に裏付けましょう。
2.返済シナリオを複数提示する
基本となるベースケース(現状のまま推移)に加え、
売上が10%%減少した場合などを想定したストレスケースを用意し、
どのような状況でも返済が可能であることを示しましょう。
3.未来志向のストーリーを語る
単に資金が必要な理由だけでなく、
借り入れによって「いかに利益とキャッシュフローを創出し、
地域経済に貢献していくか」という
企業のビジョンと将来性を熱意を持って伝えましょう。
やはり最後は「人間力」がものを言います。
まとめ
運転資金の借り入れは、「足りなくなってから」では遅すぎます。
・資金が潤沢、事業が順調なうちに融資枠を確保
・金利上昇前に固定化
・成長局面でフル活用できるよう財務体質を整える
この3点を押さえれば、
金融機関は力強いパートナーとなり、
あなたの会社のビジョン実現を
力強く後押ししてくれるはずです。
積極的に資金戦略を立て、
会社の未来に追い風を呼び込みましょう。
眩しいほどに輝こう!