いつも、ブログを読んでいただき、有難うございます。
地域はもちろん、「日本中の中小企業を元気にする」
そのために、一生懸命書き続けます。
今朝のテレビで一瞬だったのですが
こんなことを相談している小学生がいました。
「失敗すると、それが気になり集中できない」
「え!小学生が!」私はショックを受けました。
同時に、違うかもしれませんが
あの子は失敗するたびに、周りの大人に
「なぜ、失敗したのか」みたいな言葉を
幼いころから投げかけられていたのかなと思い
とても、残念に思いました。
(個人の勝手な思いです)
もし、失敗という事実は受け止め
チャレンジした過程を褒めていたら
「うまくいかなかったね、残念。
でも、このチャレンジをしたあなたは
すごいと思うよ」
こう語りかけていたら
きっと、あの子はそんな質問しないだろうな~と
勝手に考えてしまいました。
今日のブログは、その想いから生まれ出たものです。
振り返ってみると、私自身も含め
「それ、アカンやろー」という言葉を発しているなと思い
自戒の念も含めて書いてみました。
前段からは想像もつかない程
ビジネス寄りの内容です。
「もし失敗したらどうしよう」
新しい挑戦を前に足が止まるとき、
あなたの頭に浮かぶのは成功のイメージよりも、
失敗して失うかもしれない時間やお金ではないでしょうか。
これは性格の弱さではなく、人類に共通する心理的傾向です。
行動経済学者ダニエル・カーネマンと
エイモス・トヴェルスキーが提唱した
プロスペクト理論によれば、
人は利益よりも損失を約2~2.5倍強く感じ取ると言われています。
この現象を「損失回避の法則(Loss Aversion)」と呼びます。
ビジネスの世界でも、この法則に則ってしまい
チャンスを逸することが少なくありません。
申し訳ないのですが、行政のやることは
私が見ている限り「ほぼ100%」、この法則にハマります。
「仕方ない」と言えばそれまでですが
あらゆる世界の概念が急速に変わっている今
行政だけが、「以前のまま」でいいわけはありません。
特に、衰退が激しい地方都市の自治体においては
「損失回避の法則」を勇気をもって打ち破らなければ
また、そのような文化を育成しなければ
衰退の速度が増し、手遅れとなると思われます。
(そうです。私の住んでる街「函館」のことを
言っているのです)
では、「何をどうすればいいのか」ですが
ブログを読み進めていってもらえれば
そのヒントが書いてあります。
1. 数字で味わう損失の痛み
あなたに二つの選択肢があるとします。
A:確実に1万円もらえる
B:50%の確率で2万円もらえるが、50%の確率で0円
多くの人はAを選びます。
Bの期待値は1万円で同じにもかかわらず、
「もらえない」リスクを避けたいからです。
ところが場面を「損失」に変えると判断は逆転します。
C:確実に1万円失う
D:50%の確率で2万円失うが、50%の確率で0円
今度はDを選ぶ人が増えます。
確実な損失を避けるために、
ギャンブル的な選択に手を伸ばすのです。
利益と損失で意思決定の軸が入れ替わる典型例と言えます。
2.ビジネス現場に潜む損失回避
損失回避は会議室でもコンビニのレジ前でも姿を現します。
導入決定が遅れる
新しい商品の市場への導入は
導入効果より「売れなかったら大損」という
不安で棚上げされがちです。
もちろん、限界利益など
採算をとるために最低限必要な売上高や売上個数を
事前に把握するためにも「管理会計」の導入は
必要不可欠ですが、
そのような「数字の裏付け」があっても
「予定通りにいかなかった場合」つまりは
「損失」のことが頭の中を支配し
なかなか前に進めないことが少なくありません。
値決め戦略が保守的になる
価格を上げれば利益率向上が見込めても、
「顧客離れ」という損失が怖くて踏み切れない。
これも、多くの中小企業で起きている現象です。
大手と言われるところは、消費者からすると
「問答無用」状態で値上げし
確実に利益を確保しています。
そうしなければ、顧客へのサービスや
商品提供ができなくなるからです。
そうするかどうかは、個別の判断ですが
今は値上げし、原価等が下がったら
値下げをし顧客に喜んでいただく。
こうやって、世の中に合わせ、フレキシブルに
値決めをしていくことが、必要なのかもしれません。
マーケティング的にいうのなら「今だけ」が効く
「本日終了」「残り3席」といった表現は、
得を逃す=損失と感じさせ、購買率を高めます。
昔で言えば、万年「閉店セール」ですね。
(これ知ってる人は、それなりの年齢の方だけですね)
また、日付や席数や個数など
目に見えるものだけではなく
最近では「特別な経験」など
形のないものでも、購買意欲を高める手法が
使われています。
やはり「限定」や「あなただけに」は
心揺さぶられますよね。
「このチャンスを逸しては損だ」という心理を
ついているわけです。
3.損失回避を乗り越える4つのステップ
1.リスクを数字で「見える化」する
感情ではなくデータで判断する癖をつけましょう。
その為にも、やはり「管理会計」の導入は
企業経営には必須です。
例を書きます。
決算書の「損益計算書」を思い浮かべてください。
新商品のお菓子を発売したとしましょう。
今回は、わかりやすいように
今回発売する「お菓子のみ」しか扱っていない会社とします。
売上600万-製造原価300万=利益300万
つい、このように考えてしまいませんか?
製造し、すぐに市場に投入し、一瞬で完売なら
ほぼ、この計算で間違いありません。
では、完売まで3か月かかったらどうなるでしょうか?
実は利益がグッと下がります。
なぜなら、製造していなくても原価が増えるからです。
何が増えるのか?
そうです。人件費です。
たとえ工場が止まっていても、工場で働く人の
給料は、発生し続けます。
これが、損益計算書(P/L)経営の落とし穴なのです。
このような計算ミスを防ぐためにも
会社経営には「管理会計」が必須なのです。
2.スモールスタート
大きな変化ではなく、少しずつ試し
失敗コストを最小化し
心理的ハードルを下げることが大切です。
いきなりの設備投資や人員増強は避け
「失敗しても痛くない」もしくは
「失敗しても会社の経営に支障はない」程度から
スタートしましょう。
では、「痛くない」や「経営に支障がない」投資金額て
どれくらいなのでしょう?
ここでも、「感情」による判断をしてはいけません。
やはり「数字」による判断が必要です。
具体的には、というより論理的には
今度は「貸借対照表」(B/S)の数字で判断します。
どの数字か?
そうです。一番右下の「繰越利益剰余金」です。
この金額の範囲内なら、たとえ新事業が失敗しても
会社が「債務超過」などに陥ることはありません。
(ただし、あくまで会計上のお金ですから
いわゆる「現金」とは違います)
3.損失の上限を設計
「最悪でもここでやめる」という出口戦略を決めましょう。
つまりは「引き際」をはじめから設定しておくのです。
ここでもつい「損したくない」「損を取り返した」
「せめて投資額だけでも、回収したい」という
損失回避の法則が働きます。
しかし、その判断もやはり「感情」による判断と言えます。
やはりここでも「1000万損失を出したら撤退」など
数字による明確な意思決定が大切です。
撤退の金額の目安は、先ほど書いた通りです。
4.学習コストという投資思考
失敗=損ではなく、
次の成功確率を上げるデータ取得と捉えましょう。
この考え方を腹落ちさせると
理論上は世の中から失敗はなくなります。
トライ&エラーを恐れず繰り返し
知識資産を蓄積しましょう。
4.現状維持バイアスとの関係
損失回避は「現状維持が一番安全」
という誤解を強化します。
しかし環境が変わり続ける現代において、
現状維持は実質的な後退です。
短期的な安心と引き換えに、
中長期的な機会損失を抱え込むリスクに
気づく必要があります。
これが冒頭に書いた「行政機関」の陥っている穴の正体です。
民間企業である私たちは、
是非とも「現状維持バイアス」の居心地の良さに打ち勝ち
前進し続けていきましょう。
5.最後に──恐怖の正体を数字で照らす
「失敗したらどうしよう」という声が聞こえたら、
それは損失回避の法則が働いている証拠です。
その声を無視するのではなく、
認識し、分析し、そして活用しましょう。
リスクを数値化し、段階的に進み、
学習機会として捉える。
そして時には、損失回避の力を借りて、
より良い習慣や仕組みを作る。
私たちの脳に組み込まれた
この古代からの警報システムを理解することで、
より賢明な選択ができるようになるのです。
「恐怖に支配されるのではなく、恐怖と共に前進する。」
それが、現代を生きる私たちに求められる知恵なのかもしれません。
「真っ黒だけど、いつもの私です」
みなさん、熱中症には、気を付けて下さいね~