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有限会社佐藤保険事務所

2025.09.04ブログ

「売り上げ増」でも「利益は増えない」 値引き販売の罠にハマるな!

1分で読める要約

  • 地方紙で「宅配 値下げ競争激化」。店頭と同価格で宅配できる値引きサービスが登場し、参加ラーメン店では売上4倍の事例も(9/3 北海道新聞)
  • しかし重要なのは売上ではなく利益、さらに利益の源泉である粗利。割引の可否は「粗利が守れるか」で決まる

検証の前提

  • 通常:1杯1000円(原価40%=400円、粗利600円)。宅配は+配達料300円
  • キャンペーン:配達料込み1000円に値下げし、150円/灰をお見せが負担(業者も150円負担)
  • 目標:値引き後も月間粗利は据え置き(九:500杯×600円=30万円)

結果(代表ケース)

  • 粗利率60%の商品:新粗利は450円/はい。30万円を維持するには667杯(+33.4%)が必要
  • 粗利率20%の商品:新粗利は50円/はい。同額維持には2000杯(+300%/合計4倍)が必要。→売上4倍でも労力・経費に見合うか疑問。
  • 目安:粗利率40%なら800杯、30%なら1000杯必要。15%以下は値引きで粗利ゼロ以下になり実施不可。

なぜ差が出る?

  • 負担150円は売上からではなく“粗利”から直接差し引かれるため、元の粗利が小さい商品ほど致命傷になる。

値下げ前に必ずやること(3点)

  1. 自社商品の粗利率を正確に把握(原価報告書がある業種は算定に注意)。
  2. キャンペーン後の1杯あたり粗利を試算し、必要販売数=旧粗利/杯 ÷ 新粗利/杯 × 旧販売数で損益分岐の販売数を把握。
  3. 利益以外の明確な目的(新規獲得→リピート等)があるか確認。値下げは賭けではなく戦略として実施。

結論

  • 値下げは集客の強力な手段だが、低粗利商品には極めて厳しい。
  • 「売上」ではなく「粗利が増えるか」で判断し、必要販売数を見積もってから実行すること。

本文

 

先日、とある地方紙にこんな見出しが躍っていた。

「宅配 値下げ競争激化」

記事によると、まだ全国に広まっているサービスではないようですが

東京でも開始さましたから、近い将来

多くの人が、その恩恵にあずかれるかもしれませんね。

 

さて、このニュース、要約すると

宅配メニューを店頭と同じ価格にしてくれる値引きサービスです

この施策に参加した、とある「ラーメン店」

1か月で「売上4倍」になったそうです。

(出典元 北海道新聞 9/3)

 

しかし、・・・?

大切なのは「売上4倍」ではありません。

あくまで「利益」です。

その中でも、あらゆる利益の根源である「粗利」

ここに注目することが、この「割引による利益増」の成否を分けます。

 

では、具体的な数字を使って解説します。

数字自体はあくまで架空の数字であることを、ご理解下さい

 

 

【前提条件】

あるラーメン店が、デリバリーで1杯1300円

(ラーメン店の売上1000円+配達料300円)のラーメンを月500杯売っています。

原価率は40% 粗利率は60%

今回、提供価格を「配達料込み1000円」に値下げするキャンペーンに参加することにしました。

値下げ分の300円は、お店とデリバリー業者で150円ずつ負担します。

さて、この「1杯あたり150円の負担」は、お店の利益にどう影響するのでしょうか?

今回は「値引き前の粗利額」と同額を「値引き後」も稼ぐには

販売数をどれくらい増やす必要があるか計算してみます。

 

 

ケースA(粗利率60%の商品の場合)

 

「キャンペーン前」ラーメン店の粗利額を計算

1000円-原価400円=600円の粗利/1杯

600円×500杯=月間粗利額 300000円

 

「キャンペーン後」の粗利額

1000円-原価400円―値引き150円=450円の粗利/1杯

 

答え

300000円÷450円=666.666杯

すなわち「667杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。

1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば

1.334倍の労力が必要となります。

売上個数にすると、33.4%アップ必要となります。

ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店は

大幅な「利益増」となったであろうことが推測されます。

 

 

ケースB(粗利率20%の商品の場合)

 

今回は比較しやすいように同じ価格設定で商品もラーメンとします

 

「キャンペーン前」の粗利額を計算しましょう

1000円-原価800円=200円の粗利/1杯

200円×500杯=月間粗利額 100000円

 

「キャンペーン後」の粗利額

1000円-原価800円―値引き150円=50円の粗利/1杯

 

答え

100000円÷50円=2000杯

すなわち「2000杯」販売して現在と同じ粗利を稼げることとなります。

1杯のラーメンを作る労力を「1」とすれば

4倍の労力が必要となります。

売上個数にすると、400%アップ必要となります。

ですから、記事に出ていた売上4倍となったラーメン店でも

労力に見合った、もしくは経費に見合った「利益増」となったかどうかは

疑問符が付きます。

 

クイック早見表

(売価1000円・店舗負担150円・旧販売500杯)

粗利率 旧粗利/杯 新粗利/杯 倍率=旧粗利÷新粗利 必要杯数(切上)
70%   700  550   1.273  637杯
60%   600  450   1.334  667杯
50%   500  350   1.429  715杯
45%   450  300   1.500  750杯
40%   400  250   1.600  800杯
35%   350  200   1.750  875杯
30%   300  150   2.000  1000杯
25%   250  100   2.500  1250杯
20%   200  50   4.000  2000杯
15%   150  0   ―  不可
10%   100  -50   ―  不可

 

 

なぜ、ここまで差がつくのか?

 

答えはシンプルです。 お店の負担額(150円)は、売上からではなく「粗利」から直接引かれるからです。

  • ケース1では、もともと600円あった利益から150円引かれるので、まだ450円の利益が残ります。
  • ケース2では、もともと200円しかなかった利益から150円引かれるため、50円の利益しか残りません。

もともとの利益が少ない商品ほど、割引によるダメージは致命的になるのです。

 

 

まとめ:割引販売する前に、必ずやるべきこと

 

割引販売やキャンペーン販売は、新規顧客の獲得やお店の認知度アップに繋がる強力なツールです。

しかし、その甘い誘惑に乗る前に、ぜひ一度立ち止まってください。

 

1.自社の商品の「粗利率」を正確に把握する

まずは、自分の武器(商品)がどれくらいの利益を生む力を持っているのかを知ることがスタートです

「〇〇原価報告書」が存在する業種は、この数字を、把握する時は注意が必要です

 

2.キャンペーン後の「1商品あたりの利益」を計算する

「売上がいくらになるか」ではなく、「利益がいくら残るか」を必ずシミュレーションしましょう

大切なのは「売上」ではなく「利益」です

P/L(損益計算書)の「売上」と「利益」しか見ていない経営は非常に危険です

値下げは「賭け」ではなく「戦略」と考えましょう

 

3.利益が減ってでも達成したい「目的」を考える

「今回は赤字でも、新規顧客を増やしてリピートに繋げるのが目的だ」というように、

利益以外の目的が明確なら、戦略的な値下げもアリです

根拠のない、感覚基準での値下げに踏み切るのは、本当に危険です

 

この記事が、あなたの大切な会社やお店を守る一助となれば幸いです。

 

 

 

「かわいいだけじゃダメですか?」も戦略なのか?

 

 

 

 

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