2025.11.04ブログ
「営業利益は社長の通信簿」~社長が握る利益の源泉~
忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」
「売上はあるのに、なぜか手元にお金が残らない」 そんな悩みを抱える経営者の方へ。
その原因は、本業の最終的な儲けを示す「営業利益」にあるかもしれません。
営業利益は、商品力(粗利)だけでなく、経費の使い方といった社長の「経営力」を映す「通信簿」です。
この数値が低いと、いくら稼いでも利益が残らない「メタボ体質」の会社になってしまいます。
改善のポイントは3つ。 ① 粗利を増やす ② 販管費(固定費)を減らす ③ お金の使い方の「質」を上げる
まずは自社の営業利益率を計算し、会社の健康状態を把握することから始めましょう。
売上を変えずに、利益を倍増させることも可能です。
本文
「今月も売上は目標達成!」「粗利も出てる!」
なのに、なぜか手元にお金が残らない。
社員の給料を払い、オフィスの家賃を払うと、自分の役員報酬すらキツい。
そんなモヤモヤを感じている経営者・次期経営者の方へ。
それはもしかすると、営業利益に原因があるかもしれません。
このシリーズでは、財務が苦手な方でも本質を理解できるよう、会計の基礎を順を追って解説しています。
- 第1回:総論
 - 第2回:限界利益(受ける・やめるの判断軸)
 - 第3回:粗利(儲かる仕組みの設計図)
 - 第4回:営業利益(経営力の“通信簿” ←今回)
 
営業利益とは?「本業でいくら残ったか」を示す数字
営業利益とは、粗利から販管費を引いた残りのこと
営業利益 = 粗利(売上 − 原価) − 販管費(人件費・家賃・広告など)
「粗利」は商品やサービスの強さ
その粗利から、会社を回すための費用を全部払っても黒字が残るか?
これを示すのが営業利益です。
販管費の主な内訳は以下のようなもの:
- 給料や社会保険料(役員報酬・社員給与)
 - オフィス賃料、光熱費、通信費
 - 広告宣伝費、交通費、外注費
 
つまり営業利益は、本業で稼いだ利益の「最終着地」
ここが赤字なら、売上や粗利がいくらあっても、会社としては「本業で赤字」ということです。
営業利益は「社長の通信簿」
営業利益が注目されるのは、その中身が「社長の意思決定の結果」だからです
- 人を何人雇うか
 - どこにどんなオフィスを借りるか
 - どれだけ広告を打つか
 - 社長自身の給料をいくらにするか
 
これらの支出=販管費は、すべて社長がコントロールしているものです。
だから営業利益は、「商品力」ではなく、社長の「経営力」を表すスコアだと言われます。
粗利が出ていても、営業利益が出ていなければ、「稼ぐ力はあるが使いすぎている」=メタボ体質
数字に現れるのは、社長の「経営設計図の良し悪し」です。
あなたの会社の健康状態は?営業利益「率」でチェック
普段私は「率」より「額」を主に重視しますが
同業他社等と比較し自社のポジションを確認したいのならば「率」が便利です。
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上 × 100
これは、売上のうち何%が「本業のもうけ」として残っているかを示します。
【業種別の目安】
| 業種 | 営業利益率の平均 | 
|---|---|
| 卸売業 | 約1〜3% | 
| 小売業 | 約2〜5% | 
| 製造業 | 約3〜7% | 
| 建設業 | 約4〜8% | 
| サービス業など | 約5〜10%以上 | 
たとえば、売上1,000万円で営業利益が10万円なら、営業利益率は1%
これは、少しのトラブルで一気に赤字に転落する脆弱な体質です。
まずは営業利益率5%以上、目標としては10%以上を目指したいところです。
営業利益を高めるための「3つの社長の仕事」
営業利益を増やすには、たった3つの方法しかありません。
① 粗利を増やす(=稼ぐ力を強くする)
- 単価を上げる(値上げ・高付加価値化)
 - 原価を下げる(仕入れ見直し・ロス削減)
 - 儲かる商品を増やす(商品構成の見直し)
 
まずは「粗利率の改善」が基本。ここが営業利益の「源泉」になります。
② 販管費を軽くする(=固定費の見直し)
粗利があっても、使いすぎれば意味がありません。
ただし、闇雲なコストカットは逆効果なので、まずは販管費を「浪費」と「投資」に分けることが大事です。
浪費の例:
- 使っていないサブスクリプション
 - 効果測定していない広告
 - 過剰なオフィス・交際費
 - 生命保険料
 
投資の例:
- 採用費(優秀な人材)
 - 教育研修費(社員育成)
 - 効果の高い広告費
 
浪費は削る。投資は生かす。このバランスが営業利益のカギを握ります。
③ 費用の「質」を上げる(=お金の使い方を見直す)
たとえば広告なら、
年間、何人の人が広告を見て、来店や購入しているかを把握していますか?
複数の広告手段を使っている場合、「手段ごと」の来客数などを把握していますか?
人件費なら、「採用にかかる費用」や「戦力化までの費用」を計算していますか?
お金を「使う」のではなく、「活かす」視点を持ちましょう。
今の1万円が、将来1万円以上の粗利を生むか? それが判断基準です。
売上を変えずに営業利益を2倍にしてみよう
■売上:5,000万円
■粗利率:30% → 粗利=1,500万円
■販管費:1,200万円 → 営業利益=300万円(6%)
結構、優秀な会社です。この会社が
① 粗利率を+5pt(30%→35%)
② 販管費を▲100万円
にすると
■粗利:1,750万円(5,000万円×35%=1,750万円 粗利5%増)
■販管費:1,100万円(▲100万円)1,750万円―1,100万円
→ 営業利益:650万円(13%)
売上は1円も増えていないのに、営業利益は2倍以上になりました!
これが社長の「設計力」です。
「こんなの机上の空論」と失笑された方、「その通り」です。
ただの「計算式」ですから。
ただし、一つだけ真実があります。
「空論」に近づこうとした者だけが「目指す姿」になる権利を得ます。
よく聞く『そうは言っても、うちの会社では無理だ』と感じるかもしれません。
しかし、諦める前に、まずは『粗利率を1%だけ上げる』『販管費を月5万円だけ見直す』
といった小さな一歩から始めてみませんか?
「粗利1%増も無理」ならば、強い会社・潰れにくい会社へのチャレンジは、ここでやめましょう。
「チャレンジする」と考えたみなさん!
「粗利率を2%」「販管費を30万円」これだけでも、社長の「通信簿」は大きく変わります。
チャレンジするのに、お金もかかりませんし、失うこともありません。
まとめ|営業利益は「会社の体力」を示すスコア
- 粗利は「商品力」
 - 営業利益は「経営力」
 
売上や粗利だけではわからない、「会社の本当の健康状態」を映すのが営業利益です。
ぜひこの機会に、自社の営業利益と営業利益率をチェックしてみてください。
「利益は出てる?」ではなく、「ちゃんと体力はある?」という視点で、事業の設計を見直していきましょう。

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