2025.10.29ブログ
財務が苦手な社長のための『会社の稼ぎ』が見える化できる一番やさしい話 「限界利益編」
忙しいあなたへ「1分で読める」AI要約
経営判断を「勘」や「売上優先」で行うと、知らないうちに赤字の仕事を受けているかもしれません。
そこで役立つのが、会社の「かせぎ」を示す限界利益(=売上-変動費)です。
これを使えば、「どこまで値引きできるか」という最低ラインが明確になり、
現場での価格交渉がスムーズになります。
さらに、月の固定費を稼ぐために必要な売上高である「損益分岐点」を計算すれば、
月々の最低目標がクリアになります。
案件を受ける際は、以下のの3ステップで判断しましょう。
「①限界利益はプラスか」「②損益分岐点の達成に貢献するか」「③資金繰りは問題ないか」
このフレームワークを使えば、日々の「受けるか、やめるか」の判断を、
自信を持って迅速に行えるようになります。
本文
「財務」で勝ち残りたい社長のための「限界利益」超入門
「この案件、受けるべきか…?」
「値引きの相談が来たけど、どこまで下げて大丈夫かね〜?」
経営者や次期経営者にとって、こういう「その場の判断」は毎日のようにやってくる。
でも、その判断を「勘」と「売上優先」で動いていませんか?
実はそれ、売れば売るほど赤字の仕事を受けているかもしれませんよ。
1.30秒でわかる 「かせぎ」の正体(=限界利益)
まず、今回覚えてほしいのはたった一つの言葉
限界利益=売上 − 変動費
「変動費」ってなにかというと、「売れたら増える費用」のこと
変動費(売れたら増える)
- 材料費、仕入代
- 外注費(作れば払う)
- 決済手数料(カードなど)
- 送料、梱包費
固定費(売れても変わらない)
- 給料、オフィス家賃
- 広告(定額)、リース代
- 管理系の人件費
限界利益は、「会社にどれだけ“かせぎ”が残ったか」を表します
【3行で計算】
もし1個1,000円の商品を、変動費600円で作って500個売ったら?
限界利益=(1,000−600)×500=200,000円
この20万円が、家賃・人件費などの「固定費」を支える「かせぎ」
2. 値引きOKの「ゼロ点」って、どこ?
「どこまでなら値引きして大丈夫か?」
これを教えてくれるのも、限界利益
【基本ルール】
ゼロ点=変動費
変動費600円の商品なら、600円で売ったら限界利益0円
それ以下の価格は、売れば売るほど赤字
安全マージンを足して「最低ライン」を決めよう(実務編)
送料の上振れ、手数料の見落としなどのいわゆる「諸経費」
600円 × 1.03(安全マージン3%)= 618円
この「618円」が、営業が死守するラインとなる
※マージンをどれくらいに設定するかは、個社判断
ここまでは、言ってみれば営業などの現場の仕事です。
この「618円」が現場で承知されれば
現場レベルで「値引き交渉」に対応ができます。
3. その仕事、受けていい?「損益分岐点」で見える化
売って残る「かせぎ」が限界利益なら
それで「月の固定費をまかなえるか?」を見るのが「損益分岐点」
通常、社員は自社の「固定費」がどれくらいなのか知らない
つまり、ここから先は「経営層」が判断を下すこととなります。
【計算】
損益分岐点=固定費 ÷ 限界利益率
限界利益率=(単価−変動費)÷ 単価
→ 例:(1,000−600)÷ 1,000=40%
固定費が月200万円ならば、200万円 ÷ 0.4=500万円
月500万円売れば、トントンということ。
まず500万円を超えるのが最低目標となります。
ここを超えると利益が増えていくことになります。
4. 【受注判定フロー】この3ステップで判断!
ステップ1:限界利益はプラスか?
「ゼロ点以下なら原則NG」それでも売るべきかどうかは
戦略的に考えましょう
ステップ2:損益分岐点を超える助けになるか?
今月あと少しで届くなら、受ける価値アリ
分岐点500万円、現在480万円、今回の取引の限界利益20万円
このような場合は、前向きに受注を検討しましょう
ステップ3:キャッシュは詰まらないか?
入金が遅くない?前金はもらえないか?
ここが一番重要です
- 限界利益がプラスでも、「入金が半年後」「前金ゼロ」といった条件だとどうでしょう?
- 先に変動費(仕入代)や固定費(給料)の支払いが来てしまい、資金繰りが詰まります(黒字倒産)
- 限界利益が薄い(例:5%)のに、大量の受注をすると、売れば売るほど手元の現金が減っていく事態にもなります
この3つがすべてOKなら、「GOサイン」を出せる仕事と言えます。
1つでも怪しい、もしくは「今回だけは」などの戦略的判断や
「支払い条件の交渉」などは、まさに「社長の腕の見せどころ」となります。
5.今日からやってみること
1.変動費の定義を社内で統一する
→ 材料費?外注費?まずは見える化
2.代表商品の「限界利益」「ゼロ点」を出してみる
→ 価格交渉が楽になり、判断基準が明確になる
3.損益分岐点(=最低売上目標)を1回だけでいいから計算する
→ 今月の「目安」が見えてくる。通常、固定費は大きく変わらないはず
6. よくある“落とし穴”と回避策
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落とし穴:売上至上主義(限界利益が薄い大量受注で資金ショート)
回避:限界利益率の下限を設定(例:20%未満の新規は要決裁など)
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落とし穴:最低売価の未共有(現場が気づかず値引き)
回避:商品別・顧客別の最低売価一覧を営業に配布
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落とし穴:利益OKでもキャッシュNG(入金遅延)
回避:着手金・中間金・サイト短縮を標準の提案項目に盛り込む
7. 30秒テンプレ(そのまま使える!)
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限界利益:
(単価_____ − 変動費_____) × 数量_____ = _____円 -
最低売価:
変動費_____ × 1.03〜1.05 = _____円 -
分岐点:
固定費_____ ÷ 限界利益率_____ = 売上_____円
まとめ
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限界利益で「案件のかせぎ」を即確認
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最低売価で「値引きのデッドライン」を全社共有
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損益分岐点で「今月のクリアライン(最低目標売上高)」を把握
この3点セットで、「受ける・値引く・やめる」を1分で判断できます。
まずは主力商品の変動費→最低売価→限界利益率を今日中に書き出して、
営業全員に配布しましょう。明日から、判断の質が変わります。
ちょっとひと言
「数字は苦手でね」という経営者ほど、限界利益を知ると行動が変わってきます。
損益分岐点を知ると、会社にお金が貯まってきます。
「なんだこれ、赤字だったのか!」って気づいたらもう前進
頑張りすぎず、ひとつずつ、「数字と仲よく」していきましょう。

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