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2025.10.30ブログ

社長が今すぐ確認すべき”たった1つ”の数字「粗利率が通知表」:中小企業の儲かる仕組みを再設計「粗利編」

忙しいあなたへ「1分で読めるAI要約」

売上が伸びているのに利益が残らない原因は、「売上」だけを見て「粗利(あらり)」を管理していないからです。

粗利とは「売上高から商品の仕入れや製造にかかった原価を引いたもの」で、会社の儲けの源泉です。

家賃や人件費といった経費は、すべてこの粗利から支払われます。

そのため、粗利が不足すれば会社は絶対に儲かりません。

まず、自社の「粗利率(粗利 ÷ 売上)」を把握し、業界平均と比べてみましょう。

これが自社の「儲ける力」を知る第一歩です。

その上で、利益を増やすには以下の3つの視点が重要です。

  1. 安易な値引きはしない:たった数パーセントの値引きが、利益を大幅に削ってしまいます。
  2. 「率」と「回転」で考える:粗利率が低くても、たくさん売れる商品の方が会社に貢献していることがあります。
  3. 粗利率自体を改善する:「単価アップ」「原価ダウン」「儲かる商品の販売比率アップ」は、無理に売上を伸ばすより効果的です。

ドンブリ勘定から抜け出すには、経営者が「粗利」に注目し、儲かる仕組みを設計することが大切です。

 

本文

売上は伸びているのに、口座にお金が残らない。

原因は「売上」だけを見て「粗利(売上総利益)」を管理していないことにあります。

粗利は販管費と利益の「源泉」です。ここが不足すれば、会社は絶対に儲かりません。

今回は、あなたの会社の「儲かる力」の設計図の書き方の話です。

財務諸表(P/L)が読めなくても大丈夫。

この記事を読み終える頃には、「ドンブリ勘定」から抜け出すヒントが必ず見つかります。


 

1. ズバリ、「粗利」とは「儲けの設計図」

 

まず、粗利とは何か。

正式名称は「売上総利益」と言います。

「利益を残す」という観点から見れば、最も重要な利益です。

計算式はシンプル

粗利(売上総利益) = 売上高 − 売上原価

「売上原価」とは、「その商品を売るために、「直接かかったコスト」のこと。

業種ごとに少し中身が違います。

  • 小売業・卸売業(モノを仕入れて売る)
    • 「売上原価」= 商品の仕入れ代

 

  • 製造業(モノを作って売る)
    • 「売上原価」= 材料費工場でかかったお金(製造ラインの人の給料、工場の電気代、機械の減価償却費など)

 

  • サービス業(技術・労働力を売る)
    • 「売上原価」= 外注費プロジェクトに直接関わった人(エンジニアやデザイナー)の人件費 など
    • ※サービス業は会社によって定義が異なります。

 

なぜ、この「粗利」が重要なのでしょうか?

それは、粗利こそが「すべての利益の源泉」であり、

会社が「販管費」を支払うための唯一の原資だからです。

「販管費」とは、家賃、給料、役員報酬、広告宣伝費、交通費など、

「商品を売るために「間接的」にかかった費用」のことです。

(会社の儲けの構造イメージ)

売上 1,000万円

売上原価 600万円(仕入や製造コスト)

粗利 400万円 ← ココが会社の「支払いの原資」

販管費 300万円(家賃・給料・広告費など)

営業利益 100万円(本業での最終的な儲け)

上記の場合、粗利が300万円以下なら赤字。

それ以上なら、黒字。

つまり、粗利が足りなければ、会社は絶対に儲からないのです。


 

2. 要注意!「限界利益」と「粗利」の違い

 

ここで、多くの経営者が混乱するポイントを整理します。

前回学んだ「限界利益」と、今回学んでいる「粗利」。

どちらも大事ですが、使う目的がまったく違います。

 

(例)あなたは、パン屋さんです

 

 限界利益(=現場の「GO/STOP」判断)

 

  • 目的:この「特注パン100個」の注文、受ける?やめる?
  • 計算:(パンの売値)−(変動費
  • 変動費:小麦粉代、卵代、パンを入れる袋代など(=売れたら増えるお金)
  • 使い方:限界利益がプラスなら、固定費(家賃など)の回収に貢献するから「受ける」。マイナス(赤字)なら「断る」。

 

 粗利(=経営の「儲かる仕組み」診断)

 

  • 目的:ウチのパン屋、そもそもビジネスとして儲かる設計になってる?
  • 計算:(パン屋全体の売上)−(売上原価
  • 売上原価:変動費(小麦粉・卵・袋)+ 製造にかかる固定費(パン職人の給料、工場の減価償却費、工場の家賃など)
  • 使い方:粗利がカツカツなら、「パンの値段が安すぎる」か「原価が高すぎる」ということ。ビジネスモデル自体の見直しが必要

 

一番の違いは、「粗利」を計算するときの「売上原価」には、

固定費の一部(製造にかかる人件費や家賃など)が含まれる点です。

「限界利益」は、現場の営業マンが「この案件、受ける?」を判断するための「戦闘用」の数字。

「粗利」は、経営者が「ウチの会社、儲かる体質?」を診断するための「戦略用」の数字。

まずはこの違いをしっかり押さえてください。


 

3. 自社の「粗利率」を知らないのは「危険信号」

 

粗利は「金額」も大事ですが、経営者はそれ以上に「率」に注目しなければなりません。

粗利率(売上総利益率) = 粗利 ÷ 売上高 × 100

粗利率は、あなたの会社の「商品力」「価格設定」「仕入れ交渉力」がすべて詰まった「通知表」です。

では、自社の粗利率は高いのか、低いのか。

ここで、業種別の「粗利率」の平均目安を見てみましょう。(※中小企業実態基本調査 令和4年度実績より)

業種 平均粗利率
卸売業 約 15.1%
製造業 約 20.7%
運輸業 約 23.4%
小売業 約 30.4%
不動産業 約 46.3%
情報通信業 約 47.5%
専門サービス業 約 56.8%
宿泊業・飲食業 約 63.3%

いかがでしょうか?

あなたの会社の決算書と比べてみてください。

もし自社が小売業なのに粗利率が20%しかなければ、同業他社より「安く売りすぎている」か「高く仕入れすぎている」可能性が高い、という危険信号です。


 

4. 経営者が知るべき「粗利」3つの実務テクニック

 

粗利率の重要性がわかったら、次はこの数字を使って経営を「見える化」します。

 

テクニック1:「値引き」は「悪魔のささやき」

 

「売上がほしい。5%くらいなら」と安易な値引きをしていませんか?

その5%が、利益にどれだけインパクトを与えるか計算してみます。

「値引きの本当の恐ろしさ」がわかる魔法の計算式があります。

 

粗利の減少率 ≒ 値引き率 ÷ 粗利率

 

(例)あなたの会社の商品が、粗利率40%だったとします

この商品を5%値引きしたら、粗利(儲け)は何%減るでしょうか?

5%(値引き率) ÷ 40%(粗利率) = 12.5%

驚くことに、たった5%の値引きが、会社の「粗利」を12.5%も吹き飛ばしてしまうのです。

「5%値引き」は「ちょっと」ではなく、粗利を1/8消す行為だと知ってください。

値引くなら、その分の数量を「おまけ」するや、

前金入金、入金サイトの前倒しなどで取り返すのが鉄則です。

 

テクニック2:「率」と「回転」の掛け算で見る

 

粗利率が高い商品=良い商品、と決めつけてはいけません。

大事なのは「粗利率」と「販売数(回転)」をセットで見ることです。

商品A(高利益) 商品B(薄利多売)
単価 10,000円 5,000円
原価 6,000円 4,000円
粗利率 40% 20%
月の販売数(回転) 10個 100個
月間粗利額 40,000円 100,000円

 

一見、商品Aの方が粗利率が高くて優秀そうですが、

数が売れる商品Bの方が、会社に2.5倍の粗利(儲け)をもたらしています。

「粗利率は低くても、数が回る」そんな商品を見つけるのが、経営のツボです。

 

テクニック3:「商品×顧客」で“儲けの地図”を描く

 

「どの商品が儲かっているか」だけでなく、「どのお客様が儲けさせてくれているか」を把握していますか?

これを「見える化」するのが「粗利マトリクス」です。

顧客\商品 商品A(高単価) 商品B(中単価) 商品C(低単価)
顧客X ▲(赤字) ◯(そこそこ) ◎(主力)
顧客Y ◎(高粗利) △(低回転) ▲(値引き多)
顧客Z ◯(そこそこ) ◎(主力) ◯(そこそこ)

こういう表をつくることで、「売上は大きいけど、実は赤字の顧客Yには商品Cを売るのをやめよう」とか、

「優良顧客の顧客Zには、新商品の提案を強化しよう」といった、感覚ではない「戦略」が立てられるようになります。


 

5. 粗利を増やす3つの処方箋

 

「売上を上げろ!」と号令をかける前に、社長がやるべきは「粗利率の改善」です。

売上はそのままでも、設計次第で利益は増えます。

 

(現状)売上5,000万円、粗利率30% → 粗利1,500万円

ここから、3つの処方箋を実行します。

 

  1. 価格を3%だけ是正する(単価アップ)「値上げは怖い」と思わず、チラシや見積もりの“端数”を整えるだけでも効果があります。→ これで粗利率が +3pt(33%に)
  2. 原価を2%だけ下げる(原価ダウン)仕入先の見直し、送料のまとめ交渉、決済手数料の区分け見直しなどで達成します。→ これで粗利率がさらに +2pt(35%に)
  3. 「儲かる商品の比率を増やす」(構成見直し)テクニック3の地図を見て、粗利率の高い商品を優先的に提案するよう営業トークを変えます。→ これで粗利率がさらに +2pt(37%に)

 

(結果)

粗利率 30% → 37%(+7pt改善)

→ 同じ売上5,000万円でも、粗利は1,850万円(+350万円)

粗利を350万円増やすために必要な売上は

350万円 ÷ 0.3 = 1,166万7千円(約1,167万円)

「粗利率の設計見直し」と「売上アップ」

どちらが現実的か、ここが「社長の決断」となります。


 

まとめ:社長の仕事は「粗利」を見ること

 

「売上」だけを追いかける経営は、アクセルだけを踏んで、燃料計を見ていない車と同じです。

いつガス欠(=資金ショート)になってもおかしくありません。

財務が苦手な経営者こそ、「売上」よりも「粗利(売上総利益)」の数字に注目してください。

 

  1. まず、自社の決算書で「粗利額」と「粗利率」を確認する
  2. 同業他社の平均と比べて、自社の「儲ける力」がどの位置にあるか知る
  3. 「値引きの恐ろしさ」「率×回転」「商品×顧客」で、儲けの地図を確認
  4. 「単価」「原価」「商品構成」の3つにメスを入れ、粗利率を改善する

 

これが、「ドンブリ勘定」から抜け出し、「儲かる仕組み」を作るための、経営者としての一番確実な第一歩です。

 

 

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